表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の国のアリス  作者: MIMA茜。
2/3

2 黒塗りの黒電話

 小道を抜けると、そこには一軒の古い駄菓子屋があった。

 その外見は実家近くにあった店によく似ており、懐かしく思えた。よく学校の帰り道、少ないお小遣いで駄菓子を買ったっけな。


 店先には季節を感じさせる風鈴、昭和を感じさせる10円ゲーム、何が入っているのかイマイチよく分からないガシャポン、そして郵便受けの上で香箱座りで余裕そうな笑みを浮かべる黒猫。

 黒猫は伸びをし、こちらをチラッと見たかと思えばアタリ棒を咥え、すたこらと隙間から店の中へ入っていってしまった。


 「ちょっ!」


 止める間もないほんの僅かな間の出来事だった。

 してやられた。



 駄菓子屋の奥座敷ではひとりの若い男店主が長電話をしていた。

 今時絶滅危惧種とも言える黒塗りの黒電話で。


 「だーかーらー、俺も送ったはいいけど、使い方なんて分かるわけないだろ?それを承知で依頼してきたのはそっちじゃねーか」


 「だがそちらでの暮らしにはもう慣れたはず。せめて付属している説明書を翻訳して一緒に遅れと、そう言っているのではないか。……お前、今何かつまみながら話しているな?」


 「……んなわけないっしょ。文字の種類が多すぎて翻訳しようにも出来んのよ。〝ヒラガーナ〟や〝カタカタ〟〝カンジィ〟〝エーゴ〟……。しかもその組み合わせの数といったら無数にあるんだぞ?」


 ギクっとして手からアイス棒を落としそうになった。あっぶね。時々見えてんのかってほど正確に突いてくるから末恐ろしい。

 決してサボったり手を抜いているわけではないのだ。

 これはいわば一種の〝研究〟そう〝研究〟だ。


 「これではお前をそちらに送った意味がないだろう…。どれだけの経費をつぎ込んだと思っている?お前の月給のゆうに何十倍の額だと……」


 こいつはこう言い出すと止まらなくなる。


 「ああ言えばこう言うところは全然変わってないし、姑かっての。出来ねぇもんは出来ねぇのさ。申し訳ないが出来ることには限度ってもんがある。……あ、ちょっと待っててくれ。珍しく来客だわ」


 その時、来訪を知らせるベルの音が鳴り響いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ