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第7話 助けた少女がエルフだった件

 ギルドに行き、受け付けの列に並んだ。鮮やかな手つきで冒険者たちを捌ききったマーベルに声をかける。相変わらず彼は、ここで働いていた。


「なぁ、マーベル。クエスト余ってないか? あと、さっきのクエスト終わらせたから換金させてほしい」

「クエストねぇ……階層どれくらい?」


 クエスト達成の証である、死んだ魔獣から出る石――階層によって種類が違ってくる――を渡して、報酬を受け取る。今回は銀貨6枚みたいだ。

 ノアにお金を渡すと、受け付けの机の引き出しから、マーベルはいくつかクエスト用紙を取り出した。

 ギルドの受け付けたちは冒険者のレベルを把握し、そのレベルに合わせたクエストを提案してくれる。提案されたクエストの中から、冒険者たちは選ぶのだ。


「30階層くらいで」

「あら。もうちょっと深くまで行くと思ってたわ。今日は堅実にいくの?」

「いや、何となく疲れたからさ」


 ふぅ、と少し息をついて言うと、マーベルは意外そうな顔をした。クエスト用紙を直してるあたり、40階層レベルのクエストを用意していたのだろう。


「確かに今日あんた顔色悪いもんね。元々過労気味なんだもん。休めばいいのに」

「でも、金は貯めなきゃいけないし」

「まだ若いのにねぇ。あ、そうだ」


 頬に手を当てていたマーベルが、ぽんと手を打つ。


「じゃあ、今日クエスト終わらせたら、良い店紹介してあげる」

「良い店? あんまり散財したくないんだけど」

「あんたってドケチよね。そういう真面目なとこも素敵だとは思うけど、女の子には嫌われちゃうわよ」


 顔をしかめたノアにマーベルは言う。


「まぁ、初回無料だからさ。とりまクエスト消化しておいで?」


 ね? とマーベルにウィンクされ、ノアは渋々ダンジョンへと向かった。



――後に、大冒険に巻き込まれることも知らないで。




 ダンジョンの中は、昔に比べるとだいぶ整備されている。歩きやすくなったなぁ、なんて考えながら27階層まで。そういえば、コレヒサさんと最後にクエストを受けたのも、この層だった。


「なっつかしいなぁ」


 ノアは呟きつつ、目の前のオークを斬り殺した。口からポロリと石が出る。その石を腰に着けた袋の中に入れ、あと2、3匹は捕まえようと歩き出した。

 その時だった。


 キャアアアアア、と甲高い悲鳴が聞こえ、急いで向かう。できるだけ人助けをしよう、なんて大した信念はノアにはないが、それでも見捨てるのは寝覚めが悪い。


 声を手繰りよせるようにして走る。

 果たして向かった先には……


 昼間助けた少女、もといセーラがいた。


「ノア、様……?」

 

 掠れた声に我に返り、急いでオークを斬る。それよりも気になるのは……


「さっきの光はなんだ?」


 オークに向かって、少女から発せられていた光。稲妻のようなそれは、普通人体から出るものではない。


「見てしまった、のですか?」


 フードの下で、モゴモゴとセーラが言う。ノアが頷くと、おもむろに手袋を脱ぎ、ノアの手にそっと重ね合わせた。


「あ、あの、い、今、何も感じないですか……?」

「は?」


 訳の分からない状況にノアが顔をしかめると、セーラはビクッと体を震わせた。怖がらせてしまったみたいだ。


「あああの、はは、吐き気がする、とか、あた、頭が痛いな、とか。感じませんか?」

「いや、何も」

「そうですか……」


 セーラは押し黙った。

 一体何が言いたいんだろうとノアがキョトンとしていると、フードを脱ぐ。まず目に付いたのは頭の上に乗せられたスライムで……


「なんでそんなののせてんの……」


 ノアが引き気味に言うと、セーラは頭からスライムを下ろした。


「スライムのみーちゃんです。身長をぼかすためにのせてます」

「確かに思ったよりちっちゃかったけど……」


 昼間はいちいち見ていなかったけど、確かにセーラはかなり小さい。せいぜい肩くらいまでかなと思っていたけど、どうやらノアのへそより少し上くらいみたいだ。


「昼間は隠れてもらってました。さっきダンジョンの第1層に迎えにいきました」

「へ、へぇ……」


 セーラは真剣な眼差しをしているが、いくら雑魚でもスライムはモンスターである。しかもなんかぬめっとしてるし。セーラの頭は濡れてないみたいだけど。


「あええ、えっと、何も感じないんですよね?」

「あぁ、うん。何も」

「じゃじゃじゃあ、もしかして私たちの仲間ですか?」

「仲間?」


 ノアが聞くと、セーラは頷いた。青いふわっとした髪が揺れる。


「えっと、こ、これです」


 セーラは耳に手を当てた。

 普通の、人間にしては少し小さいけど普通の耳。

 それがだんだんと大きく、そして尖っていく。

 しばらくして成長が止まった耳は、どう見ても……

 

「えっと、エルフ?」


 困惑気味にノアが尋ねると、セーラは頷いた。


「えぇ。魔族のうちの1つ、精霊族です。エルフです……とは言っても、魔族は絶滅したので私以外にもういないと思ってたんですけど……貴方もそうなんでしょう?」


 急にハキハキと喋りだした少女に驚きつつ、首を振る。ノアは人の子だ。魔族ではない。

 セーラは、困ったような顔をした。


「でも私と素で触れて、何もないのはおかしいです。普通、魔力に当てられるはずなんですけど……」

「魔力?」


 どこかで聞いたことあるような単語だなぁ、と考えて思い出した。コレヒサだ。コレヒサは本人曰く勇者で、魔力があるとか言っていた。つまり、2つ名を与えられたノアにも魔力があるわけで。それを使ったことはなかったけど。


「俺は魔族じゃないけど、魔力はある。だからかもしれない」

「魔族以外で……もしかして……」


 セーラははっとした顔をし、それからノアに詰め寄った。


「勇者、ですか?」

「俺自身は勇者じゃないけど……」

「それはそう、ですよね……それじゃ」


 セーラは自分に言い聞かせるように頷くと、そっとノアの手を取った。


「協力……してくださいませんか? 同じ志を持つ者同士。貴方と、詳しく話がしたいです。明日の朝6時、ダンジョンの入り口で待っていてください……それでは」


 ノアの返事も聞かずに、セーラは消えた。魔法だろう。言い逃げしたのかもしれない。相変わらず訳の分からない状況にため息をつくと、ノアは歩き出した。

 とりあえず、もうギルドに戻ろう。それから、マーベルに店を紹介してもらおう。それで、さっさと寝よう。ノアは明日のことを思い、ため息をついた。

評価、ブクマなど、できればよろしくお願いいたします!ポイント1つが、作者のやる気になります

ですので本当によろしくお願いいたします!

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