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アバンストラッシュ(逆手斬り)【2021/04/04】

 山口県の『武蔵小次郎像』では小次郎の握りが逆手かつ上空から襲い掛かる武蔵に対して明らかに不利である『刃を敵の反対側に向けて』いる妙な構えにしてある。


 これは異形の必殺技『燕返し』を表現した村重勝久氏の創作であり、原典となった吉川英治の『宮本武蔵』からして燕返しは吉川先生の創作らしい。



 なんせ我々の知る佐々木小次郎は実在するかも怪しい人物なのだ。

 漫画『終末のワルキューレ』では海神ポセイドンとガチっているが……。


 なお、奇しくもかの漫画でも小次郎は『岩流秘奥 虎斬』なるアバンストラッシュに似た技を繰り出している。



 一応、小次郎のもととなった佐々木巌流もしくは佐々木某の学んだ富田流が存在するのは筆者も知識としては存じているがこれは『小太刀』の流派であるらしい。


 まさかとは思われるが『小太刀のスピードと技でデカい剣を振るえたらちょうつよい』という発想のものではあるまい。いや、意外とアリかも……。

 るろうに剣心の四乃森蒼紫さんはこれを長剣ではなく後述の二刀流にしたが発想としては似たり寄ったりだろう。たぶん。



 筆者が以前プレイした『ビビッドアーミー』にはマコトという居合抜きの達人(※設定上)が存在するが、馬上で使う太刀たちならば腰から少し下に紐でぶら下げているのでわかるが、剣帯に相当するベルト(?)からかたなの刃を下にして履き、正面から握り込んで抜くという抜刀からしてあり得ない異形の構えをしている。



 しかし人間の空想というのは時空を超え、実用を超えた妙味を成すものだ。



 現在残る大日本帝国剣道型(※剣道)で逆手をうまく使う術を蒙昧なる筆者はパッと思いつくことができない。


 しかし、本稿はファンタジー武術をテーマにしている以上、無理やりでも逆手を用いた用法を考えねばなるまい。

 ぶっちゃけめんどうくさいが……。



 じつのところ、西洋剣術や沖縄のサイ術(特殊文字Ψプシーに似た形の武器)には逆手持ちが頻出する。長物と素手に準ずる補助具に同じ用法があるのは面白いところだが筆者はそちらの研究者ではないので学者先生方や武術の方が適当に辻褄合わせしてほしいところだ。


 この逆手持ちならぬ武器そのものを逆さに使う用法は、甚だしくは西洋剣術におけるリカッソ(剣の根元側。西洋剣は刃をつけないことが多い)を持ってキヨン(剣の翼、十字鍔)をハンマーのようにして使う用法がある。これはサイ術にも存在する。


 というか、西洋剣術は棒のように剣を使う傾向が強いらしい。

 反して、日本刀はあれこれ鍛えているうちに自然と反ってしまったのがいい感じに攻防兼ね揃えるようになったので棒術的な用法は薄いのかと思いきや、古流には結構棒術的な用途が多いようでこれまた資料がほしいところだ。



 サイのことなど沖縄の人間や空手関係者以外知らないだろうから補記するが、長さは違うもののサイ術にも逆手に持って翼でぶん殴る同じような術があるというか(※大抵敵の武器を絡めとる連携技につながる)、そもそも無手で武器に対抗する空手を制圧するための空手キラーな武器がサイなので空手の技はだいたいサイで使用できる。


 型も一般的な空手型と共通するものが多い。


 しかし本稿はサイやトンファーのような素手の補助具とは一切関係がないので後日この話をすべきだろう。余談のさらに余談だがトンファーは『盾』とみなして良いと思う。ヌンチャンクは民具もしくは隠し武器だ。



 アバンストラッシュのような逆手剣術や西洋剣術にある棒のように用いる用法ではない、上述の十字鍔を用いた剣術については漫画『風の谷のナウシカ』に登場するのでそちらを見てほしい。


 女子供でありながら柄頭ポンメルを軽く逆手で握ることで順手逆手双方のメリットを手に入れ、十字鍔キヨンを握り込んで手を守りつつ最も垂直に力が入る方法で攻撃し、甲冑の合間をブチ抜く見事な突きを本作の主人公ナウシカはしょっぱなから実践している。

 当時の宮崎御大は如何にしてこの資料を揃えたのか甚だ疑問だがまさか空想のみでセラミックより硬く鋼よりしなやかな王蟲殻剣の用法を考えたのだろうか。


 インターネットのない当時に如何にして西洋剣術の資料を揃えたのか不明だし、劇中描写からはリカッソを使う用法は王蟲の剣にはないみたいだが、空中を飛び交うガンシップが戦争における主役である風の谷の剣術にはないだけなのかもしれない。 創作の世界では銀河戦国群雄伝ライみたいに宇宙戦艦があるのに近接戦闘する文明も存在しうるし、フランク・ハーバードの『デューン』では高速射出するものやレーザーを防ぐ個人バリアを打ち破るために武術が発達している。 武術ではないが創作だろうと思ったら己が無知なだけでほとんどの人間が文字を読む必要のない世界である『本好きの下克上』に複数階建て(※増築)の集合住宅があるが、古代ローマに実在している。



 余談だが有名な宮本武蔵の絵では武蔵は可能な限り指を開いて全身で剣の重さを逃がす脱力姿勢を実践している。

 中華鍋を振るう料理人の握力を計ったら20キログラムしかなかったという話もあるらしいがこれは出典不明ながら『ようは全身の使い方』と彼は述べているらしい。本稿でも脱力し全身で剣を保持することで単純な腕力以上の力を出すという理屈はある程度支持している。基礎体力がないなら無意味なので筋トレも体格に合わせて実践してほしいが……。


 以上を熱く語ったら『そんな視点でナウシカ見ているのはあなただけだ』と言われたのは甚だ不本意だ。




 閑話休題。

 なので、宮本武蔵ではないが剣は正しく左右の手で扱えるものとし、剣を正しく棒として利用するなら、上述のみょうちきりんな持ち手や抜刀術、指を開いた持ち手も理解できるようになる。


 いわんやアバンストラッシュのような逆手で斬りかかるヘンテコリンな技も……。



 まぁ傘で殴り合ったバカはリメイク版絶賛放送中の今も過去の小学生(つまりその親ども)も共通だろうが、逆手でぶん殴る場合当然攻撃として『速く』ない。

 とりあえず友人と殴り合った経験者であろう親世代は猛省を促したいところだ。



 しかし棒術として捉えなおすと解釈は変わってくるのだ。

 棒術や槍やなぎなたでは結構、いやかなり逆手持ちは頻出する。



 なんせ先端が自由に左右入れ替わる。


 片方が刃であるなぎなた術でも当たり前に石突き(※槍やなぎなたの刃がついていないほう)を用いる術が有効として扱われる。刃に気を取られていると石突きが足の小指に『ズドン』と降ってくる。筆者友人Sは型だけの技を筆者に対しては使ってもなんとかしてくれるという謎の信頼を寄せていたが過大評価だ。とりあえずやめてくださいお願いします。



 現代剣道ではあまり使わないし経験の浅い愚昧なる筆者も対なぎなた以外で使ったことがないが、脇構えは刀身を敵に見せないことで刀身の長さを『見せない』構えであり、下段及び中段から、かつ横から繰り出される剣は最も面積が狭くて『見えにくい』剣だ。

 これも『風の谷のナウシカ』漫画版にて敵兵に化けてナウシカに加勢したペシテのアシベルが奇しくも日本刀に似た剣を用いて実践している。



 棒やなぎなたは長物であり、人間の身長を超えるものが少なくない。


 人間の身体は投石に特化しているというが、サルの中には人間に劣るものの投石するものはいるし、普通に木の枝を武器にする。


 身長より長い武器を使いこなす術を伝承しているのは筆者の知識の中では人間以外あまりいない。



 棒術は身長以上の武器を身長や腕の長さに加えて使用し、さらに武術の基本ではあるが正中線(人体の中央、急所が集中する)を敵から逸らしつつ、自分の正中線は敵に向けて一方的にボコる術に優れる。



 武蔵に勝ったと自称する夢想権之助が創設した神道夢想流杖術が扱う『じょう』は中国武術で云う『棍』(こん。両端が細く多くは金属補強してある)や日本武道で扱う『棒』(棍と同じく180センチ以上はあるっぽい)より短いものの、かえって取り回しがよく、また両端が同じ太さで特徴がないため見抜きにくい。


 人間の意識が及ぶ範囲は結構狭い。

 そして人間は偏見や今までの学習から逃れられない。



 二刀流の本質は人間の認知速度にディレイをかけることだと愚考している。

 そして逆手を取り入れ、無勝手の動きを円環の如く途切れず連続して行うことで、あなたの剣は本来ない軌道を描くことができるだろう。


 通常の打ち込みを行い、逆手を取り入れることで『ぶら下げて』下から斬る。振り子のようにして逆手のまま斬る。円環の如く動きを絶やさずに予想外の角度から斬る。こういった動きが可能になる。



 居合自体がみょうちきりんな技であるので別項で語りたいところだが、逆手術と居合は相性が良い。

 なので、アバンストラッシュを実践したい諸兄は居合術も習得しておくことをお勧めする。 そんな変わり者は普通はいないだろうが……。


 左抜刀(※普通日本刀は左側に差す)かつ逆手でしかも超高速という浪漫溢れる攻撃があるが、力学的に考えたら鞘から出して斬るより既に抜いている剣を真上から振り下ろした方が早い。鞘で高速化するのはファンタジーの世界だけだ。そして鞘で傷が回復するならエクスカリバーになる。



 Wikipedia日本版によると弧刀影裡流居合術ことえりりゅういあいじゅつは、九州出身の野瀬庄五郎が西南戦争に従軍した経験から編み出した居合術であり、黒澤明の映画『椿三十郎』のラストで主演の三船敏郎が繰り出した技は、この流派の形を参照に編み出された技らしい。


 その速度は0.1秒とも0.2秒ともされるが、出展が定かではないので各自調べてほしい。



 長々となったが、本稿ではアバンストラッシュを原作で云う『霊体だろうが物質だろうが不定形なものだろうがなんでも斬る』ファンタジー技ではなく、『体軸を敵に向けさせず、こちらの攻撃は一方的に繰り出せる配置から敵の認知からズレた位置より順手逆手入り混じった持ち方と円弧のような動きで絶えず攻撃する妙剣』と再解釈しておく。



 だって霊体なんてどう斬るのさ。



 それこそファンタジーだし剣からビームなんて出せるか。それってトンファービームやかめはめ波だよね。



 武家は『源氏物語』の時代より前から退魔の力を持つというが(※普通に六条御息所様のエピソードに登場)、その本質は如何な危機の中でも『切れないものなどない』と己を信じる根性というか見たものが全て現象の賜物である。しかし根性って何さ?! 本稿では見えないものを語る必要がある。


 だってファンタジーとかわけのわからない相手と戦う必要があるし。ドラゴンはもちろんのこと、イノシシどころか犬でも筆者は勝てる気がしないが。



 とりあえず人間は修羅場を潜り抜けた経験の数で『身動きできない』心と身体の剥離を潜り抜けることができる。

 ロシアの格闘技システマは呼吸を用いて『リラックスしているよ』と脳みそを誤魔化してこれを成す。


 書籍『ファスト&スロー』他多くの本でも述べられているが、鉛筆を縦に咥えると人間の脳みそはしかめっ面と解釈し疑り深い思考に、横に咥えると笑っていると解釈しリラックスした思考になる。案外脳みそは騙されやすいし行動でなんとかできる。



 システマを恋愛&ビジネス小説に翻案した『人生は楽しいかい?』では呼吸をあえてとめることで幾度も疑死し、己のトラウマに向き合う術が紹介されている。



 ようするに、ファンタジーならいざ知らず、霊の類とはあなたの脳みそが生み出した妄想の類だ。仏教でいえば煩悩ともいう。



 見えない霊を我々は打ち砕くことはできないかもしれないが、見えない霊とはつまるところ脳が生み出した妄想であり、あなたの過去の恐怖にすぎない。


 んなもの今を生きているあなたに勝てるはずがない。



 フランク・ハーバードの『デューン』シリーズには『恐怖に対する祈り』が登場する。奇しくもかの世界では高速射出武器が無効化されるので武術が必要とされている。


 以下、矢野徹訳で引用しよう。



「恐怖は心を殺すもの。恐怖は全面的な忘却をもたらす小さな死。


 ぼくは自分の恐怖を直視しよう。それがぼくの上にも中にも通過してゆくことを許してやろう。


 そして通りすぎてしまったあと、ぼくは内なる目をまわして、そいつの通った跡を見るんだ。


 恐怖が去ってしまえば、そこにはなにもない。ぼくだけが残っていることになるんだ」

(デューン「砂の惑星」から)


 これは奇しくも仏教の教えに似ている。



 恐れるな。

 こころを澄ませておのれの内にある敵を見つめろ。



 汝に斬れぬものなどありはしない。

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[一言] アバンストラッシュ ↑ 傘でやって手首を痛めたやつや(ノ´∀`*) 陸海空の技を極めてからにすべきでした※違う、そうじゃない  この逆手持ちならぬ武器そのものを逆さに使う用法は、甚だしくは…
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