作戦
「話ていうのはストーカーの件ですよね?」
「ああ、最近佐藤に付きまとわれててな…直接言うしかないと思って」
はい?何言ってんのこの人。
「あの…付きまとったこと1度もありません。むしろ待ち伏せされてるのは僕の方かと…」
講義室の前で待ってたりどっちかといえば部長のがストーカー気質あるよね?
「私が佐藤を?これは新手の口説き文句か?」
「違ぇだろ!あんたは毎度毎度話をする時に変なこと言わないと話せないのか!」
「そう声を荒らげるな。ただの前戯だ。前戯でそんなに興奮してたら後々もたないぞ」
この人のデリカシーほんとにどこに落ちてんだろ。疲れるので本題に入るまでスルーで。
「まぁストーカーの件だ。とりあえず私が集めた情報をお前に伝えておく」
「了解です」
「中尾明25歳無職。現在は母親と父親との3人暮し。大学卒業後就職にした営業も半年で辞め現在はニート生活を送っている」
「さすが部長。もうそんなことまで。一体どうやって調べてるんですか?」
「今回は簡単だ。殆どSNSで公開していたからな」
「この情報社会であほですね。で、作戦はどうするんですか?」
「この手の輩は脅しが効く。しかし私では少し弱い。佐藤に頼みたいんだが」
「部長の頼みなら断れませんよ。それに早く佐原さんを安心させてあげたいですからね」
「くれぐれもやりすぎるなよ。」
「昔みたいなことにはなりませんよ。僕だって大人になったつもりですから」
そう僕も大人になった。あの時とは違う。
「ちゃんとあそこも大人になったか?」
「シリアスな展開なのに股間見ながら変なこと口走ってんじゃねぇ!」
「少々顔が怖かったのでな。リラックスさせてやろうと気を利かせたんだ」
まじか。ちょっと昔のこと思い出しただけで表情に出てたのか。まだまだだな。
「リラックスさせようとしてくれたのはありがたいけど、もうちょっとやり方ありませんかね?」
「私には下ネタしかないんだ」
「真顔で残念なこと口にしないで下さいよ…」
「うん。やっぱり佐藤は私に突っ込んでる時が1番輝いてるな」
「あんたが言うと卑猥に聞こえて仕方ないんだよ!」
ダメだもう脊髄反射レベルで突っ込んでしまう。僕の脊髄そんな頑張らなくていいんだよ。
「話を戻すぞ。作戦としては中尾明を佐原さんに接触しやすい状況を作る。今は佐藤が現れたことによって焦っているはずだ。チャンスと思ったら必ず手を出してくる」
「結構危ない橋渡りますね。もしもの事があったらどうするんです?」
「今日は私もついて行く。女2人だと襲って来る可能性は低くなるが私も佐原さんをそこまで危ない目に合わせたくない。それにこの中尾明という男、昔空手をやっていたらしい。女2人くらいならと考えて襲って来る可能性は十分にある」
「部長無理しないでくださいね。部長もそれなりに武道の嗜みがあるのは知ってますけど、相手は男です。腕力では勝ち目がありませんからね」
「そのためにお前がいるんだろ?しっかり守ってくれよ?」
ずるいなぁ。そんなこと言われたら何としてでも守るしかないじゃないか。
「分かりました。佐原さんと部長は僕が守ります」
「うむ。佐藤はまだ童貞だしな。童貞を守れない男に何が守れるという名言をこの前見つけた。期待しているぞ」
「誰が童貞だ!童貞だけど!あとその間違った名言今すぐ忘れろや!」
てかなんで僕が童貞て知ってるんだよ。こっちだって焦ってんだよ。もうすぐ二十歳なのに童貞てそろそろまずいだろ。高校生が俺童貞だべーとか言ってんのとは訳が違うんだよ。
「とりあえず今日お前はボディーガードをしなくていい。だが連絡があればすぐ動けるようにしといてくれ」
早期解決のためとは言え、中々無茶な作戦だな。こっちも気を抜かず準備をしておこう。
「分かりました」
「話は以上だ。なにか聞きたいことはあるか?」
「最悪のことを考えて、位置情報の共有をしときませんか?その方が直ぐに駆けつけれます」
「そんなに私の行動が気になるのか?なら仕方ない」
「最悪の場合て言ってんだろ!顔赤らめて言ってんじゃねぇ!」
「落ち着け。確かにお前の言う通りだ。最悪の状況は常に想定すべきだ」
あんたのせいで声上げてんだよ…
「とりあえず共有しときますよ」
「あぁ私はこの後何も無いから今日は佐原さんと先に帰るぞ」
「てことはサークル活動はなしっすね!」
「なんでそんなに嬉しそうなんだ?」
「いや、気の所為ですよ!」
サークルないて思うとついついテンションが上がってしまった。いつも僕と部長しかいないから下ネタに振り回されてしんどいんだよな…
「僕は三限があるのでそろそろ行きます。何かあったらすぐ連絡下さいよ」
「ああ、また芦田愛菜」
「…おもんないボケやめてください」
下ネタじゃなくて反応遅れたじゃないか。