一生のお願いは人生で何回もある
とりあえず佐原さんが無事で良かった。最悪のケースも考えてたから今は一安心だ。佐原さんの部屋は203号室。ここか。ノックをしてドアが空くのを待つ。
「佐藤先輩すみません…」
目が充血している佐原さんが出てきた。相当怖かったんだろうな。
「大丈夫だよ。バイトも今日暇だったし何の心配もいらないよ」
これ以上佐原さんに負担はかけたくないから取り除ける不安要素は全て取り除いておく。
「ありがとうございます…」
「早速だけど何があったんだい?」
夜も遅いしあまり長居するのも悪いから早速本題に入る。
「さっき先輩が言った通りです。これ以上迷惑かけれないからストーカーにメッセージ送ったのですが…」
震える手で佐原さんがスマホの画面を見せてくる。
「なるほどね。これは早いこと手を打たないとね」
このストーカー僕が現れてから焦ってきているな。佐原さんに送ったメッセージも見る限り勝手に妄想して独占欲を強めていくタイプ。本来なら警察に被害届出すべきだろうけど、被害届を出してからまずは調査から入るため早期解決にはならない。佐原さんは一刻も早くこの状況を解決したいはずだしな。それに部長がわざわざストーカーを煽るために僕を使ったんだ。部長も早期解決を狙っているはず。
「明日の朝また迎えに来るよ。多分明日になれば部長も何か情報を手に入れているはずだ」
僕の読みが正しければ明日には解決する。
「本当に迷惑ばかりかけてごめんなさい」
「何度も言うけど謝ることじゃないよ。じゃまた明日ね」
「あ、あの…先輩」
「どうしたの?」
「お、おやすみ…なさい」
「うん。おやすみ」
さて帰って明日のために寝ますか。それにしても佐原さんの部屋いい匂いしたなぁ。可愛いぬいぐるみとか置いてあったし。女の子ぽくていいなあの部屋。どっかの部長も見習って欲しいわ。ん?なんか僕キモイ?
「あぁ寝みぃ…あと2時間寝たい…」
うるさい目覚まし時計に起こされて無理矢理ベッドから脱出する。
眠いとか言ってる場合じゃないな。恐らく今日佐原さんは襲われる。
部長の情報次第だけど。
いつも通り歯を磨いて、寝癖直して準備完了。男の朝は楽でいい。
さて佐原さんを迎えに行くか。
「ふぁ〜」
やっぱり朝8時に起きるのは早すぎる。将来僕ちゃんと会社員やれんのかな。
今は大学付近のアパートに住んでるからギリギリで間に合うけど、通勤で1時間とか絶対に無理だな。出勤時間はいつでもいい。ノルマさえクリアすれば帰っていいそれでいて高収入そんないい仕事ないかな。
くだらない妄想をしているうちに佐原さんの住むマンション前に着いた8時半いい時間だな。電話するかメッセージを送るか悩むな。電話だとキモイよな。うんキモイ。僕から電話来たら僕嫌だし。メッセージでいいか。
「先輩おはようございます…」
電話かメッセージどちらにするか考えてると佐原さんがマンションからでてきた。
「おはよう佐原さん。昨日は寝れた?」
「あんまり寝れなかったです…」
まぁそれも仕方ないか。特に話すこともないので2人で歩きながら大学に向かう。
「あの…私の問題は解決するのでしょうか…?」
不安そうな顔で尋ねてきた。やっぱり佐原さん可愛いよな。今まで気にしてなかったけど、顔とかすげぇ整ってるし。部長と張り合えるんじゃないかな。と今はそんな不純なことを考えてる場合じゃないな。
「解決するよ。いやしてみせるから。だから佐原さんは心配しないで」
一応ストーカーは今も後をつけている。こいつ本当に暇だな。昨日佐原さんが倒れているのを見ているから昨日より距離は取っているが。
「佐原さんは今日何限まで?」
「私は今日二限までです」
うーん。僕四限まであるんだよなぁ
「僕四限まであるんだけどどうしよう?」
「待っときます…1人で帰るのは怖いので…」
「了解。終わったら連絡するよ」
「では私は講義室に行くので…ありがとうございました」
「頑張ってね」
ふぅ、とりあえずボディーガード2日目の朝は何事も無かったな。それにしてもこの後どうしようか。今は8時45分僕の講義は三限からなので4時間くらい時間がある。これは暇だなぁ。時間潰すにはボックスが1番いいか。
「おう佐藤」
ボックスに向かおうとすると後ろから声をかけられた。
「なんだ早川か」
「なんだとはなんだ。大学で唯一の親友だろ?」
「はいはい」
「つれねぇなぁ。唐突なんだが今度合コン行かね?」
本当に唐突だな。
「どうせ人数合わせの引き立て役だろ?」
「ちげーよ。なんか知らねぇけどお前の事が気になるやつがいるんだよ。それで俺とよく一緒にいるの見るから呼んでくれてな」
なんの冗談だ?早川とはよく講義を受けているが僕なんて早川のせいで全く目立たないだろ。いや早川のせいで悪目立ちしているのか?いい迷惑だなほんと。
「やめとくよ。お酒は飲まないて決めたんだ」
話を聞く限り僕は酒癖が悪い。しかも記憶にもあんまり残らないから何をしでかしたか分からないから恐ろしい。
「それなら仕方ないなと言いたいところだがその女俺が気になってる子も連れてきてくれるそうなんだよ。頼むぜ親友。一生のお願いだ!」
こいつの一生は何回あるんだ。1回の時から10回は聞いてるぞ。ただ一生と言ってくる時の早川のしつこさは半端ない。まるで髪の毛に引っ付いたねりけしのようにしつこい。さっさと折れとくか。今は他にやることあるし。
「わかったよ。その代わりお酒は飲まないからな」
これだけは言っておく。
「おう!それでこそ親友だぜ!」
約束を取り付けたら足早に去っていった。まぁもう一限始まってるしな。余裕で遅刻じゃんあいつ。