可愛い奥様 (ねこ鍋)
素敵なレビューをいただきました!記念に書いたものです。公開する前は不安しかなかったですが、ブックマークや評価、あたたかい感想まで頂きありがとうございます!お礼になるかわかりませんが、ニャンデレを強くしたお話になります。長めのお話なので、時間のあるときにお読みください。
ひゅっ……ひゅっ……
アンソニーは中庭で剣をふるっていた。今日は休日で時間は早朝だ。ベアトリスはまだ寝ている。昨晩も途中から記憶をぶっ飛ばしながら彼女とベッドを共にしたので、起きてくるのは遅いだろう。
先に目覚めたとき、妙な焦燥感をおぼえたので、庭に出てきた。
ベアトリスはアンソニーの腕の中にいるときは可愛い猫になるが、朝になると魔法が解けたみたいに元に戻ってしまう。それが無性に寂しい。また腕の中に閉じ込めたくなる。
まるで中毒だ。
ずっと手放したくなくて、このままでは仕事に行くのも放棄して、屋敷にこもってしまうだろう。
そうなると第三王子が確実にぶちキレる。
頭を冷やせ。お前は家に帰るなとか言われそうだ。ただでさえ第三王子は最近、外交に力を入れている。
(もし、隣国に行くぞと言われたら、ヴィー不足で俺は餓死する)
そんなことになったら第三王子も守れなくなるし、彼女も悲しませる。だから、煩悩を払うべく、朝から鍛練をしていたのだ。
最近は平和すぎて体がなまっていたしちょうどいい。ベアトリスとの約束の為にも衰えるわけにはいかない。
額に汗をにじませ、無心で剣をふるった。一息吐いて剣を鞘におさめる。
アンソニーの剣は体格にあった幅広の豪剣だ。基本的には突きに長けているものだが、叩き潰すこともできる。この剣で数々の修羅場をくぐって第三王子を守ってきた。
(あの頃に比べたら、平和になったな……)
もう癒えた傷を思い出して、アンソニーは再び鞘から剣を抜いた。
ひゅっ……
空気を剣で切っていると、誰かが背後にくる気配がした。
振り返るとベアトリスが金色の目を細くしてこちらを見ていた。目が合うと焦ったように彼女の頭から黒い耳がぽんっと出た。
アンソニーは剣を落としそうになり、鞘を強く握る。今落としたら革靴にぐさりと刺さってむごいことになる。彼女に心配をかける。動揺を隠して、笑顔を作った。
「ヴィー……おはよう。早いな」
ベアトリスは頬を紅潮させて、前でそろえていた手をもじもじさせる。ぽんっと、彼女の鼻が猫になり白いヒゲがでた。片方の耳がぴくっぴくっと動いていて構ってほしそうだ。剣がつるっと手から落ちそうになる。
「お邪魔ですわよね……ごめんなさい」
「いや、構わない」
剣を鞘におさめようとすると、ベアトリスが、あっ……と声を出した。
「ヴィー?」
「……お願い、もう少しだけ。トニーの剣を見ていたいです」
伏し目がちに言われて、彼女のスカートからぽんと尻尾がでる。何気なく確認すると逆Uの字の形にかっていた。遊んでのサインだ。
アンソニーは剣を手から離してしまい、革靴に刺さる寸前のところでキャッチする。
「いいが……見ていて楽しいか?」
ベアトリスはうっとりとした顔をしてこくんと頷く。反射的に彼女の腰を抱こうと手がのびた。
その手をひっこめ、アンソニーは甘く微笑む。
「じゃあ、少しだけな?」
首をかしげて言うと、ベアトリスの瞳が細くなり夢見心地な表情になった。その顔を見ながら微笑み、頭ではベッドへUターンする算段を考える。
(ヴィーのあの姿は誰にも見せたくないしな……朝食はドアの前に置かせるか……)
頭を煩悩で満たしながら、アンソニーは顔を引き締めた。
ひゅっ……
剣で空気を何度か切ったが、集中できない。アンソニーは熱い息を吐き出し、目を据わらせた。
「ヴィー……」
「あ……」
ベアトリスは体勢を低くして、目を開いていた。無意識なのか片手はグーの形に握られ、下にむけられている。これはどうみたって、猫がじゃれつこうとしているポーズだ。
ベアトリスははっとして居直り、頬に手をあてて白いヒゲをピンと張った。
「……ごめんなさい。最近、気持ちがゆるんでいて、無意識に猫みたいなしぐさをしてしまうの」
ベアトリスの瞳が恥ずかしそうに潤みだす。
「昨晩は、特に……すごかったから……余韻がぬけきれなくて……」
しょんぼりとする彼女にアンソニーは剣を手から滑らせた。幅広の剣は革靴をかすめて草の上に刺さる。
目を見開き固まったままでいると、ベアトリスが嬉しそうに両手を叩いた。
「そうだわ。少し待っていて」
スカートを翻して彼女が走り出してもアンソニーは体を硬直させたままだ。
彼女が見えなくなった所でやっと我に返り、口元を手でおさえ苦悶の表情をする。
(くそっ……可愛すぎる……っ)
昨晩の甘い猫の声を思い出して、アンソニーの理性は限界だ。護衛として鍛えたものを総動員させるが、どうしたって勝てない。
そんなアンソニーへ試練は続く。
ベアトリスは意気揚々と丸く大きな木箱を抱えてきた。それを草の上に置く。
(まさかっ──)
アンソニーは戦慄した。
待て!と、声をかける前に、彼女はスカートの端を持ち上げて木箱の中に入る。腰をおろし、体を丸めて、ヒゲをだらんと垂らす。瞳は気持ち良さそうにとろけていた。
アンソニーは生唾を飲み込み、早まる鼓動のまま箱に近づく。草の上に膝をついたとき、彼の胸苦しさは限界点を突破していた。
「ヴィー……なにを……」
ベアトリスは眠そうな眼で微笑む。
「こうしていると落ち着くの。トニーがいないときに気づいたのよ。これなら大人しく待っていられるわ」
猫には狭い箱に入るという習性がある。リラックスできるようだ。
そして、想像してみてほしい。
いい子で待っているからと、猫が自ら箱を用意してきたのだ。その猫は妻だ。
想像してみてほしい。
箱に入って猫がちょっとうとうとしている。このままだと木箱のふちにあごをのせて寝そうだ。それが自分の妻だ。
想像してみて──アンソニーは考えるのをやめた。
アンソニーは素早くベアトリスを横抱きにすると、目を細くする。
「そんなに恋しがってくれていたなんてな。……ごめん、気づかなくて」
ベアトリスはうとうとしたまま、アンソニーに身を預ける。
「……仕方ないわ。お仕事ですもの」
「言ってくれればいいのに……」
「でも……」
「いつでも言ってくれ。そうしないと……」
「あっ……ダメよ。首はダメ……」
「ここは敏感だよな。でも、ヴィーの匂いがする」
「っ……トニーっ……そこ弱いから……」
「そうか? 顎の下から首にかけてなぞるとヴィーは喉を鳴らすだろ?」
意地の悪い笑みを浮かべると、ベアトリスは首に腕を回した。
「ここではダメよ……」
「じゃあ、どこでならいい?」
ベアトリスは耳元で声をささやいた。満足する答えに口の端が持ち上がる。
「どこをなでてほしいんだ?」
「………………しっぽの……」
「あぁ、付け根のところな……あそこはヴィーのお気に入りだもんな」
くくっと笑うと彼女は恥ずかしそうに強くしがみついてきた。
その後──
影で行く末を見守っていた使用人たちが、アンソニーの剣を回収。きっちり手入れをした。
ベアトリスの持ってきた木箱も回収され、持ちやすいように両サイドに穴が開けられ、やすりをかけて、中にはクッションがしきつめられた。
当然、朝食は。
そっと、ドアの前に置いてノックはしなかった。
***
充実した休暇を終えて、第三王子の執務室にきたアンソニーは、護衛中に乱雑に積まれていた本を整理しようとしていた。
棚に本をしまっていると、机に向かっていた第三王子が冷えた視線をなげかける。
「アンソニー……何をしている……」
「部屋を片しています」
「必要ない。勝手に触らないで」
アンソニーは肩をすくめ、穏やかな笑みを浮かべる。
「殿下。今は殿下しかいません。本にナイフを仕込まれることも、毒花を送られることもありませんよ」
第三王子がびくっと震えて、神妙な顔になる。アンソニーは本を手に取り、棚にしまった。
第三王子が神経質になったのも、部屋が乱雑なままなのも、兄たちにされた仕打ちが原因だ。
護衛に付いて日が浅く、第一、第二王子がまだそこまで険悪だと思われていなかった頃。鮮やかなピンク色の花をつけた鉢植えが第三王子の元に届いた。
外国を回っていた土産だと第一王子から渡されたものだ。生花しか見たことがなかったアンソニーは不思議に思ったが、まだ幼く警戒心の薄かった第三王子は顔をゆるませていたので黙ってそのままにした。
第三王子が土いじりをしていると、原因不明の吐き気に悩まされた。
後で知ったことだが、その花は根から毒を出して土に触れると危険なものだったのだ。発火させると致死に至る毒をだす。
第一王子は第二王子宛に出したものらしいが、それを知って第二王子は、第三王子にそれとなく渡したのだ。
それ以来、アンソニーは今までしていなかった手袋をするようになり、第三王子の部屋に届けられるものは彼が全て改めるようになった。刃物が仕込まれていたり、人が侵入してきて背中を切られたり、色々あったが全ては遠い過去のもの。
第三王子もわかっているはずだが、体がまだ付いてこないのだろう。
第三王子はうつむくと、執務机のそばにある椅子に深く腰かけた。
アンソニーは微笑して、部屋の片付けを再開する。
(最近は嬉しい知らせもあったし、殿下も落ち着かれた)
よい機会だ。それに。
(殿下の護衛中に鍛練の場を設けないと、俺は衰える)
アンソニーは真剣だった。
ベアトリスのねこ箱という返り討ちにあってから、屋敷で鍛練は無理だと感じていた。かといって、第三王子を放置して鍛練場に行くことはできない。彼は日中の護衛はアンソニーしか任せていない。
第三王子が結婚する前は夜も側にいたので、その頃に比べたらマシにはなっている。
(このままだとヴィーが子供を産みたいと言った時に、俺はぶよぶよになっている)
アンソニーはえらく真剣にそう思っていた。だから、剣がふれるようにこの部屋を片付けているのだ。
「アンソニー」
「なんですか?」
「……お前、僕のことを棚にあげて自分のことを考えているだろ」
「将来にかかわる大事なことなんです。止めないでください」
「……アンソニー」
すっと第三王子の目が細くなる。アンソニーは肩をすくめた。
「すべて吐け。お前の望むものをくれてやる」
アンソニーは大きなため息をついた。
***
(久しぶりに体を動かしたな……)
夜遅く帰ったアンソニーはほどよい疲れを感じていた。
第三王子にすべてを吐かされたと思ったら、政務が終わるときに鍛練所に連れていかれた。
「とりあえず、三十人。倒してきて」
「御意」
第三王子に言われるがまま周りの騎士を見渡す。
(……貴族のボンボン集団ではないな)
アンソニーは第三王子の側から離れられないので、鍛練所に出入りすることはあまりない。八年前と比べて地位だけで構成されてていない騎士たちを見て、アンソニーは土を蹴った。
(いい汗、かいたな……)
ボロボロな三十人を見て、第三王子の顔がより冷ややかになる。
「……準備運動にしかならないじゃないか」
「でも、体はほぐれました」
「情けない……アンソニー。毎朝、ここに顔を出して、騎士たちを指導しろ」
「指導者になったことはありませんが」
「構わない。お前に師の素質があるわけはない。相手をしてやれ」
「わかりました。……ですが、そのせいで早くこいとは言いませんよね?」
「なんで?」
「朝はヴィーとスティラが作るユートピアを見る時間です」
アンソニーは真顔だった。第三王子も表情を変えなかった。ボロボロの騎士たちはざわめいた。
「夜はついヴィーに夢中になりますが、朝ならば意識は保てます。ふたりが仲睦まじくする姿を見てここにくるのが日課なんです」
「一時間前に来い」
「……殿下は俺のエデンを奪う気ですか」
「四十分前に来い」
「十分……」
「三十分だ。それ以上は政務が滞る」
前に第三王子を挑発して離宮に引きこもられたことを思い出して嘆息した。
(宰相を含めて全員に泣きつかれたな……突撃したときの殿下の顔は一生、忘れられない……)
アンソニーは憂鬱だったが、ここが潮時だろう。
「御意……」
短く返事して、鍛練場を後にした。
と、いうことがあったので、アンソニーの体はほどよく疲れていた。
肩を回して屋敷に入ったとき、足をとめる。
(静かすぎるな……)
人の気配がない。訝しく感じていると、ふらふらな足取りで家令がきた。
「あ、アンソニーさま……」
「どうした?」
「お、奥様が……奥様が……」
声を詰まらせる家令に眉根をひそませて、アンソニーは駆け出した。嫌な予感がよぎった。
この胸騒ぎはなんだ。
この先の光景を見たら自分は──
(嘘だろ……)
死ぬしかないとわかって、アンソニーは見てしまった。
すーすーと、寝息を立てながら、箱の中で丸くなって眠っているベアトリスの姿を。
想像してみてほしい。
猫が頭と体をくっつけながら箱にぴったりおさまるように丸くなっている。尻尾も体に添うようになっている。丸い。ひたすら丸い。あのモフモフが丸くなって、気持ち良さそうに寝ているのだ。
それが自分の妻。
(くっ……これは反則だっ……)
アンソニーは足元をふらつかせた。三十人相手にしたときより疲労感がすごい。
ドクドクと心臓は脈打ち、彼女の姿を直視できない。
(猫耳と尻尾が出ているのに、丸い箱に入って寝ているのはダメだろう……)
アンソニーは苦悶の表情を浮かべた。
よろよろと家令が疲れた顔をする。
「お帰りをお待ちしていました……」
「そうか……他の者は……」
家令は神妙な顔をした。
「卒倒する者、二名。過呼吸で倒れた者、四名。最後まで見守っていた侍女も先ほど……」
「そうか……どのくらいこのままなんだ?」
「三時間ほどです……」
「よく耐えたな……」
アンソニーは使用人たちを誇らしく思った。自分ならば三時間もこの光景を見続けられない。尊すぎて。息、絶える。
「はぁ……」
落ち着こうと声を出して息を吐くが、すでに意識が朦朧としている。視界にいれた瞬間に可愛すぎて目をつぶってしまう。
アンソニーは深くため息を吐いて表情を引き締めた。
「……寝室に運ぶ。ここに置いておくと危険すぎるな」
「そうでございますね。覗き見てしまい、仕事になりません。しかし、アンソニー様。動かせるのですか?」
「なに?」
振り返った時、家令は真剣な表情になった。彼も限界なのだろう。顔色が悪い。
「我々もこの事態に手をこまねいていたわけではありません。寝室に運ぼうと、何度も……えぇ、何度も! 試みました」
家令は熱くなり、目を赤くした。
「……ですが、動かして起こしてしまったら……」
家令はこれ以上は言えないと口をつぐんだ。
アンソニーは彼の気持ちが痛いほど理解できた。
「……なら、ヴィーが起きるまでこのままか……」
「それが最善かと……」
「そうか……」
アンソニーは嘆息した。視界の端では時折、片耳がぴくっと動いている。どうしようもないくらい可愛い。
(今夜はここで寝て、徹夜だな……)
眠れるわけなかった。
思わず天を仰ぐと、すっと足元を白いのが通りすぎる。
「にぁぁん」
スティラがベアトリスに乗っかってすり寄っている。
アンソニーは目を見開き、彼女を止めようとした。
「よせ、スティラ! そこで寝たら、俺は何をするか分からないぞ!」
ダブルはダメだ。想像するだけで悶絶する。ベアトリスのお腹でスティラが丸くなり、箱からちょっとはみ出すのもダメだ。理性を失う。
「にぁぁん」
スティラはアンソニーの哀願を無視して、ベアトリスの上にのった。アンソニーがはくはくと音も出せずに口を動かしている。
「ごろごろ……」
「んっ……」
スティラが頭をベアトリスにこすりつけると、彼女が目を開いた。
「スティラ……? わたくしは……」
とろんとした眼差しでスティラを抱き上げて、不思議そうに小首をかしげた。状況を理解していないのだろう。家令はついに倒れた。
アンソニーは笑う膝を叱咤して踏ん張る。
ベアトリスがアンソニーを見た。彼女は寝起きで頬を赤くさせ、とろけるような笑みを浮かべた。
「にぁあ……」
その一言に、アンソニーは我を失った。
ベアトリスははっとして、恥ずかしそうに口を押さえる。
「やだわ。わたくしったら……」
しょんぼりするベアトリスに、アンソニーは足早に近づき甘い笑みを作る。
「ヴィー。よく眠れたか?」
「え? えぇ……トニーを待っていたら寝てしまいましたわ」
「そうか。なら、もう寝なくても大丈夫だな」
アンソニーの目に自我はなく恍惚と輝いていた。準備運動をしたおかげで、体は軽く絶好調だった。これからいくらでも動ける。
アンソニーは素早くベアトリスを横抱きにすると、そのまま寝室へとむかった。
「にぁぁ」
スティラは空いた箱の中で丸くなった。
家令は意識を取り戻した使用人に引きずられて運ばれた。彼らは箱の中を見ようとはしなかった。
翌日──
訓練場にいく時間になってもこないアンソニーに第三王子はキレた。
「隣国に訪問する。付き添え」と、言われてアンソニーは絶望した。
「帰ってきたら、二日の休暇をやる」と言われて、ちょっと回復した。
二日間の休暇はそれはそれは楽しいものだった。
「ヴィー。ほら、これならどうだ?」
「……トニー、やめて。恥ずかしいわ」
「そんなことないだろう。ヴィーは、俺の剣を見て体勢を低くしていたし、好きなはずだ」
「……でも、そんなことをしたら、わたくしは心まで猫になってしまうわ」
アンソニーが手の中でふるものを忙しなく目で追う彼女に目を細める。
ベアトリスは、パシンとそれを手で払った。手にはふっくらとした肉球があった。
ツンとすました態度をされて、アンソニーはくつくつ喉を震わせる。
「どんなヴィーだって可愛い。愛しいことには変わらない」
彼女の尻尾がピンと伸びて、先がまがる。
「おいで、ヴィー」
喉を鳴らして、ベアトリスはアンソニーを押し倒した。肉球がついた手がアンソニーの洋服をたしたし踏む。これは猫の愛情表現だ。
想像してみてほしい。
あのぷにぷにのしたものが、自分のシャツをふみふみしている。ぷにぷにで、ふみふみ。爪を立てているので痛いが、それすら快感に思えてくる。
それをしているのが、自分の──妻だ。
アンソニーは手に持っていたものを落とした。
ベアトリスは目をうっとりとさせて、我を忘れて自分をかき抱くアンソニーに幸せそうにすりよった。
「ねこ鍋」を想像しながら書きました。ぎゅうぎゅうに入って寝るとか……可愛すぎますです。知らない方はぜひ、検索してみてください!