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 なんとか無事に終わりました、挨拶会!

 もう本当に、解放感がすっごいです!


 ……と、そう思ったのも束の間。


 今は私、とある応接室で待たされております。誰をって、国王様ですよ!


  通常の挨拶会ならば、少し言葉を交わせばすぐに退場し次の子がやって来ることになるので終わった子はすぐに帰って良いはずなんだけれど、私が謁見の間を出ると、兵士さんに止められました。


『あちらでお待ちください。後程国王陛下が参られます』


 にっこりと言われたけれど、私はすぐに笑顔を返せませんでした。聞いてないですけど!?


 それでも断るなんてできるはずもないので、大人しくついてきて今に至ります。


 えええ~、まだ緊張の時間は続くのか……。

 それにしてもまだ何か用があるのかな? もしかして、本当は初代女王の生まれ変わりなのか疑われてて、証拠を見せろ、なんて言われたりするのかな。


 私自身、最初メノウにそう言われた時はあんまり信じていなかったけれど、さすがに旦那様だったという精霊王に言われたら、そうなんだ、とは思う。かといって、何も覚えていないから証拠なんて魔法を使えることくらいしかないけれど。もしそう言われたら、また精霊を見せたら信じてくれるかなぁ。


 そんなことを考えながらも姿勢良くソファーに座って出されたお茶を飲みながらひたすら待つ。


 ちらりと部屋の壁際に立っているメイベルを見やると、にっこりした顔を崩さずぴしりと立っている。メイベルは国王様にお目通りする予定はなかったし緊張しそうなものだけれど、さすが公爵家のメイドだよね。私も見習わなきゃ。


 コンコンコン、とノックの音がした。


「公爵閣下と公爵夫人がいらっしゃいました」

「!」


 外から声が聞こえてきて、メイベルがドアを開けると、お養父様とお養母様が入ってきた。私は思わず駆け寄る。


「お養父様、お養母様!」

「ナディア、立派でしたよ」


 お養母様が笑顔で褒めてくれた。お養父様もこくりと頷いてくれたので、とても嬉しくなった。受け答えの練習とか、頑張ってよかった!


「あの、わたくし、なぜここに呼ばれているのでしょうか? お二人は何のお話か知っているのですか?」

「ああ、そうね。さっきの場所では周囲に人が多過ぎて込み入ったことは話せないから、改めて話をしたいんですって。あと、さっきの場にはアレクサンダー、つまり第一王子がいなかったでしょう? 少し体調が悪くて来られなかったらしいの。ベッドからになるけれど、きちんと紹介したいらしいわ」


 改めて話したいって、なんだろう? それはいいけれど、第一王子はベッドから出られないほど体調が悪いのならわざわざ今挨拶しなくても、後日でいいんじゃないのかな。


 私が驚いていると、再びドアがノックされた。


「国王陛下がお越しになられました」


 その言葉で、部屋にいた全員がドアに向かって頭を下げた。


「ああ、楽にしてくれ。集まってもらってすまないな」


 陛下の声が聞こえて頭を上げる。

 部屋に国王陛下と王妃様、フィルが続いて入ってきた。

 手を振って駆け寄って、「久しぶり」って言いたいけれど、そんなことはできるわけがない。


 陛下は穏やかに微笑んでいるけれど、この方が部屋にいるというだけで、雰囲気がピリッと張り詰めたように感じる。

 ふと王妃様と目が合った。にこっと微笑まれて、少しドキッとした。ものすごく綺麗な方だ。でもなぜか探るように見られている感じがするのは気のせいだろうか。


 私はちらりとフィルを見る。そういえばさっきはなにか様子が変だったけれど、大丈夫なのかな?

 すると、フィルも私をじっと見てきた。


「……」

「……?」


 どこか呆けたように何も言わず見つめてくるフィルに私が首を傾げると、フィルはハッと我に返ったようにスッと目を逸らした。


 うーん、まだ様子がおかしいみたい。大丈夫かな。


「ナディア嬢」

「! はい」


 陛下に声をかけられて少し驚いてしまった。いけないいけない。こちらの方に集中しないとね。

 横にいる王妃様は何も言わず興味深そうに目を光らせて私を見ていた。なぜか少し楽しそうだ。


「今日はご苦労であった。生活が大きく変わり、日々大変だと思うが、どうだ」

「ご心配ありがとう存じます。第二王子殿下のご配慮で素晴らしいご縁を得ることができましたので、至らぬばかりのわたくしですがそれに報いることができるよう、日々努力していかねばと思っております」


 うぅ、あんまり話しかけないでー!

 そろそろボロが出そうだよ。


「ふむ。しかし、挨拶会は終わったのだ。そんなに固くならなくとも良い。聞くところによると、フィルハイドとはもっと気安い仲なのだろう?」


 少しからかうように陛下がそう言ったので、私は少し驚いた。陛下が気さくに話してくださったこともそうだけど、なんだか含みを持たせたような言い方だ。

 友達としてという意味とも取れるけれど、お前たちは恋人なのか? と聞かれているような気がする。もしかして釘をさされているのだろうか。


 お前は元平民なのだから弁えろ、と言いたいのかもしれない。貴族言葉は婉曲に言うことが美徳とされているから、難しいんだよね……。

ここはきっぱりと否定しておかないと、余計な心配をさせてしまうことになってしまう。


「はい。殿下には友人として、とても良くしていただいております」


 友人だって言っておけば大丈夫だよね?

 私が笑顔でそう言うと、フィルはぐっと目を閉じた。そして目を開けると、冷たい目で陛下を見た。


「父上」

「い、いやすまん、そんなつもりではなかった」


 なぜか陛下に謝らせることになってしまった。しかも少し気まずそうにしている。


 あ、あれ? 私、何か間違えた?

 もしかしてフィルは、『私に難しいことを要求するな』って怒ってくれてるの?


 くるりと部屋を見回すと、みんな困った子を見るように私を見ていた。

 ええっ!? やっぱり私、何かやらかしましたか!?


「父上、からかうのはお止めください。ナディアが困っています」

「う、うむ」


 か、からかわれていたの?

 フィルが仕方なさそうに話を切り上げたので、陛下が本題に入ろうと表情を引き締めた。

 何が何だかわからなかったけれど、もう触れないでおこう。貴族の会話難しい。


「あー……、ナディア嬢、申し訳ないが、第一王子であるアレクサンダーが体調が悪く、今日は来られなかったのだ。しかし、呪いの件でどうしても直接お礼を言いたいらしくベッドから飛び出そうとするので、後で君を連れてくるからと部屋に留まらせたのだ。アデライド嬢本人も看病のためアレクサンダーの部屋にいて、是非お礼を言いたいと言っている。礼を言うために部屋へ呼びつけるのは失礼だとは思うがどうか付き合ってくれないだろうか」


 え、お礼?


 あ、もしかして、呪いを受けたアデライド様は次期王太子妃だって聞いていたけれど、フィルじゃなくて第一王子殿下の婚約者候補だったのかな? アデライド様はフィルのお兄さんが好きだったってフィルから聞いていたけれど、体調が良くないのにわざわざそのことでお礼を言いたいと言っているのなら、二人は仲の良い恋人同士でもあったのかもしれない。


 私は報酬が目当てで首を突っ込んだだけだし、フィルとザックがお膳立てしてくれた舞台で犯人を指摘しただけで、大したことはしていない。

 第一王子が無理をしてまで私にお礼を言う必要なんて全くないけれど、本人がベッドを抜け出そうとするくらい望んでいるのならば私が行くべきだよね。こういうことは本人の気持ちだし!


「体調がお悪いのですからわたくしのことなど気になさらなくて良いのですけれど、よろしければ是非お見舞いに伺わせてくださいませ」


 そうして、これからフィルのお兄さんと聖女様に会いに行くことになりました。二人とも、どんな方なのかな?



読んでくださりありがとうございます。

ブックマークや評価が増える度、おおお……と震えながら喜んでおります。本当にありがとうございます。

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