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空中道中

第二章です。

よろしくお願いします。


「わー、やっぱり気持ちいいね!」


 私は今、またルト……フィルハイド第二王子に横抱きにされ、ザックと共に空飛ぶ円盤に乗って私の養子先に向かっています。


 風が気持ちいいー!


 私はどうやらこの国フェリアエーデンを建国した初代女王の生まれ変わりらしく(定かではない)、その噂が貴族に広まって狙われることになり、自分と周囲の身を守るために貴族の養子になることになったのだ。


 早く向かった方がいいということで、ルトも髪色を変える魔術を解き、魔術師として空飛ぶ円盤に乗って移動している。

 私にはずっと銀髪に見えていたけれど、変装のために他の人には魔術で茶髪に見せていたらしいんだよね。


 ……髪色が茶色でも、この綺麗な顔と色気でバレると思うけどなぁ。


 そういえば、この円盤、飛空盤と呼ぶらしい。魔術具なので性能は様々ながら、魔術学園に通う魔術師はみんな持ってるんだって。


 そう、ザックも実は飛空盤を持っている魔術師だったと知って、私は驚きました!


 それを知ったのはつい十分前のこと。



◆◆◆◆◆


「ここからはこの飛空盤で空を移動するね」


 ルトがそう言って、またどこからともなく円盤を出現させた。


「えっ、ルト、これ、三人も乗れるの?」

「いや、俺は自分のがあるから。まあここで別れてもいいんだけど、途中までは送ってやるよ」


 そう言ってザックも飛空盤を手に出現させた。

 私は目を丸くした。


「ザックも魔術師だったの!?」

「何を今さら」


 ザックは呆れ顔だ。


「だって、ザックは平民だし、魔術を使ってるところなんて見たことなかったもん!」

「ルトとピアス使って連絡とってただろ。このピアスはわりと常識だぞ? 魔術師の必需品だ」


 えっ、そうなの!?


「確かにそれが魔術具なのは知ってたけど、まさかザックが魔術師だなんて」

「アホ。魔術具なんだから使えるのは魔術師だけに決まってるだろーが」

「………」



◆◆◆◆◆


 ……ということがあったのだ。

 ぐうの音も出なかったよね。


 二人は今高等部の一年生らしい。魔術学園の同級生だったんだね。


 二人は今呪い事件解決のために休学中だったけれど、解決したからザックはもうすぐ学園に戻るんだって。

 ルトはまだこっちでやることが残っているみたいだけれど。


 ……うーん、私も魔力があることがわかったら、魔術学園に通うことになるのかな?

 それとも、なくても魔法が使えるから、どっちみち通うことになるのかもしれない。


 ……まあ、それは今考えても仕方ないよね。


 そうして魔術師だと判明したザックも、飛空盤に乗って私たちの隣を慣れた様子で飛行している。


 ちらりとルトを見上げる。

 目が合うと、ふわりと微笑んでくれた。


 ……うう、なんだかこの前から、ルトのこの笑顔を見ると胸がむずむずする。しかもこの体勢なので、すごく落ち着かない。


「ね、ねえ、急に向かうことになっちゃったけど、養子先の人は迷惑じゃないかな? そういえば、どういう人なのかも聞いてなかったけど」


 何か話したくてそう聞いてみたら、驚くべき発言が返ってきた。


「さっきピアスで連絡は入れておいたし、今急いで準備しているんじゃないかな。養子先は、グレイスフェル公爵家というところだよ」


 ……え。


「る、ルト……今、公爵家って言った?」

「うん、フェリアエーデン三公の一つ、グレイスフェル公爵家」


 いやいやいや!!


「こ、公爵って、貴族の中では王族の次に高い身分の人だよね!? 私が養子に行っていいわけないよね!?」


 私が青ざめながら主張したけれど、二人からは「何を言っているのか」という目を向けられた。


「他の貴族を抑えるには高い身分が必要だろ?」

「大丈夫、向こうは初代女王の生まれ変わりを養子に迎えられるなんて光栄だって言っていたから」


 な、なるほど、そうですね……。

 確かに男爵や子爵では上位貴族を抑えられないよね。でも、本当にその公爵家の人たちは孤児の私を快く受け入れてくれるんだろうか?

 王子に言われたから仕方なく、だったら本当に申し訳ない。


「あんま心配すんなって、今やナディアは貴族連中がこぞって欲しがる魔法使いなんだからな!」


 はは、とザックが冗談ぽく笑った。


 ザックが私を笑わせようと言ってくれたのがわかって、ふふっと笑ってしまった。


 そういえば、ザックも平民だけど魔術学園に通っているし、思ったより身分に厳しくないんだろうか?


「ザックは一応、平民なんだよね? 魔術学園には平民も結構いるの?」

「いや、さすがにあんまりいないな。俺は家がアレなのと、母さんが貴族だったからまあなんとかやれてる」


 私はちょっと驚いてザックを見つめてしまった。


 お母さんが貴族だったのか。じゃあザックの魔力は遺伝なのかな?


「お母様は魔術師なの?」

「ああ、子爵家の四女だったけど、貧乏で貴族相手だととても自分の分の持参金が用意できないってんで、持参金はなしでいいと言われて喜んでうちに嫁入りしたらしい。父さんは魔術師を跡取りにしたかったみたいでな」


 そっか、貴族でもみんなが裕福なわけじゃないんだな。


「じゃあザックにちゃんと魔力があってよかったね!」


 片親だけが魔術師の場合、魔力が多い子が産まれる確率は低くなるって聞いたことがある。


 軽い気持ちでそう言うと、ザックは「あー……」と言って少し視線を彷徨わせ、助けを求めるみたいにちらりとルトを見た。

 ルトがそれを見留めてザックの代わりに教えてくれた。


「ザックは三男なんだ。お兄さんたちは二人とも魔力がほぼなかったみたいでね。だから、跡取りはザックに決まった。そのせいで、あんまりお兄さんたちと折り合いが良くないみたいだよ」

「兄貴たちが一方的に俺を疎ましがってんだよ! でももうそれぞれ別の仕事してて家にはいないから、まあお前も気にすんな」


 なんと。ザックにそんな事情があったなんて。

 魔力のあるなしはザックのせいじゃないのに……。


 ザックも魔力があったことで困ったことがあったんだね。いつかお兄さんたちと仲直りできたらいいんだけどな。


「ナディア、ほら、着いたよ」


 そうルトに言われて下を見ると、そこには見たこともないほど大きな豪邸が堂々と聳え立っている。


 そして、屋敷の前には大勢の人がズラリと並んでいて、皆がこちらを見上げていた。


 ……え、まさか、あれ、私たちを待ってる、の?


「おお、すげーお出迎えだな、ナディア」

「やっぱり!?」


 ザックの言葉に私は恐縮するしかない。


 ひょうえぇ~……!


「じゃあ俺はここまでな。ナディア、頑張れよ!」


「あ、ザック! ありがとう!」


 私は急いでザックに視線を向けてお礼を言った。

 ここまでわざわざ送ってくれたし、ザックには本当に色々と助けてもらっている。いつかお返しができたらいいな。



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