気持ちだけは
ひとつの恋で、こんなにも見る世界は変わるんだな、とリアルに実感出来ると思います。
ただの恋愛小説ではありません。
プロローグ
ワタシは現在高校二年生。私が通う高校では、推しと言うものが流行っている。ワタシの学校の中の推しとは、自分がかっこいい(かわいい)と思った人ナンバーワンを、推しと名ずけて自分の物と他人に示すようにするものである。ただしこれにはルールがあり、推しは恋愛対象として見ないというものだ。まぁ、現状を言うと、そんなルールは無視されて、次々と推し同士であった人達のカップルが誕生しているのだが。
文化祭、スポーツ大会が終わり、夏休みに入った。
部活もやってなかったワタシは、学校の皆と全然会えなくなるので寂しかった。
が、そこに大輝という7組の男子から、テニスのお誘いがきたのだ。因みにワタシは3組。
"結衣とKもいるんだけど、テニスしない?"
結衣とK(男)はワタシと同じクラスだ。大輝はあまり関わりがなかったが、二年になってから、友達の繋がりで何度か話すことがあった。初めは、テニスなんてまともにしたことがないし、断ろうと思った。しかもワタシ以外の3人は現役テニス部である。
だけど、夏休みとは残念なことにとても長い。学校の友達に会えるのは嬉しいから、結局行くことにした。
テニスコートのある場所の最寄り駅で、結衣とワタシは男子2人を先に待っていた。結衣は天然でふわふわしていて、いつもなにかやらかしてしまう、面白くて大好きだ。そんな結衣と夏休み遊べるのはとても嬉しかった。結衣と大輝は元同じクラスで、仲が良い。
「結衣ちゃん、ワタシほんとテニスやったことないんだよね〜、相手にならなすぎてゴメンだ」
「それは関係ないってば!とにかく楽しみ〜」
そんなたわいもない会話をしていたら、
「あっ着いたって〜大輝たち!」
結衣の言葉と同時くらいに、大輝とKが改札口から出てきた。
久しぶりだね〜くらいの会話しかせず、ワタシ達はテニスコートの方へ向かう。駅からは徒歩20分くらいもある。
結衣が突然、
「ねぇ、推しっている?」
「えー、いないかなあ、いるの?」
聞き返すと、ニヤニヤして、何か、言葉にしなくても察してほしい、そんなふうに見えた。
「あ、わかった、今日いるんでしょー」
コクンと頷いて、またニヤニヤしている。
「大輝?去年同じクラスだし!」
「いやー、違うんだよね」
「え!じゃあKで決まりじゃーん」
「あ、でもでも、推しだからね??
なんか、かわいいじゃん!?」
たしかに、かわいいのはわかる。
Kの紹介をしておくと、背は高く、顔は結構整っている。しかし、一人称は"僕"で、話すのもゆっくりで、1人でいつもペラペラ話してて、授業中は爆睡、将来の夢はドラえもんの道具を開発すること。とまぁ、かなり個性的である。
「じゃー、今日のテニス楽しみだなぁ。」
とワタシが言うと、
「ねぇー、ダメー!!」
結衣は可愛かった。
テニスコートに着くと、時間制限があるから早く始めようと大輝が言う。
何となくの立ち位置で、ペアはワタシと大輝、結衣とKになった。ワタシとKは前衛で、大輝と結衣が後衛だった。
未経験のワタシにも楽しめるように、テニスをしてくれた。前衛のKとワタシは、
「エアケイやってよ、あ、エアK」
「しょーがないな、やってやるよ、僕ならできる」
なんて、ふざけた会話をしながらやっていた。正直めちゃくちゃ楽しかった。Kは本当にゆっくりだけど、テニスはめちゃくちゃ上手いらしく、普段の彼からは想像できない速さで動く。ギャップにかなり驚いてしまった。
帰りの電車、たまたまの位置で、大輝、結衣、ワタシ、Kの順で横一列に座った。結衣とさりげなく変わろうと思ったが、恥ずかしさからか、断られたため、そのまま座った。まぁ、推しだし、そこまでする必要ないか。
そりゃ、その順番で座るから、ワタシはKと話すだろう。
「推しは?誰?いるの?」
ちょっとした出来心で聞いてみた。
「ええー、いないけどー、」
「けど??」
「可愛いと思うのとかはー、まあいるー」
「え、だれだれ」
「んー、誰にしようかなぁ、」
オイオイ、って言いそうになった。きめてないんかい!!
そんなこんなで到着してしまった。夏期講習のため、ここでお開きだ。
ワタシは大輝と結衣のLINEはもっていたが、Kのはもっていなかった。今日のお礼を言うために、ワタシはKのLINEも追加し、皆にありがとうの連絡をした。
KへのLINEは、
『今更だけど追加した!今日ありがとう! 』
Kからの返事は
『 僕も追加してやったぞ★』
本当におかしな人だ。
察しのいい人はお気づきであろう。今後ワタシは、Kを好きになる。これから起こる様々な困難な出来事をここに書き記していこうと思う。