#8・歓迎
自己紹介が終わってレントの口が開くのをミナはキラキラした目で待っていた。
「えっと……ミナちゃん?お兄さんに、いくつか教えてもらえるかな〜?」
「うん!ミナはね〜……8才だよ〜」
(小柄じゃなくて年相応だったか……)
「ミナは私達と見た目の差異を感じさせないために、底が高いシークレットブーツを履かされていて王子様が見間違うのも無理ないかと。」
ニナが補足を付け足すと、ミナはキョトンとした顔で、
「お兄ちゃんは、だぁあれ?」
「あっ。ごめんね?レント=ブラックだよ。」
「れんとぶらっく?長い名前だね!」
奴隷や1部の平民は家名を持っていない事がある。ミナの周りに家名を持っていない人が多かった。
「長いよね。レントでいいよ?」
「うん!レントお兄ちゃん!」
ミナはとびっきりの笑顔でレントの足にしがみついて、猫のように頬ずりした。
「こ、コラ!離れなさいミナ!」
「王子様になんてことしてるの!ご迷惑でしょ?」
ニナとヒナが引き剥がそうとしているが、ミナは意地でも離れようとしなかった。
「まぁまぁ、2人とも。俺は大丈夫だから。」
「「ですが……」」
レントはミナを抱き上げると、
「ミナちゃんは、甘えん坊だな〜。」
「ミナね〜お兄ちゃん大好き!」
レントはミナの頭を撫でながら、楽しそうに笑っていた。
すると、今まで空気だったリンが口を開いた。
「坊ちゃん。さすがにロリコンは無いかと……」
「誰がロリコンだ?リンも抱っこして欲しいのか?」
「なっ……何を仰っているのですか!は、ハレンチですよ!」
リンが顔を真っ赤にして言うと、レントは楽しそうに「クククッ」と笑った。
「坊ちゃんが幼女好きだったとは……お変わりになりましたね……」
「だから違うと言っているだろう。子供相手に口調を変えるのは貴族も平民も関係無いだろう?」
リンは少し意外な顔をしながら、口を閉じた。
「ニナさん。ここで働く気は無いか?貴族もよく来る宿だか、何かの縁だ。よかったら考えてくれないか?」
「よ、よろしいのですか!?私達は元奴隷ですよ?」
「それがなんだ?俺は時期国王だぞ?不釣り合いと言うならお互い様だろう。」
レントがリンにちらりと目を向けると、
「坊ちゃんがそうしたいなら、わたくしは何も言いませんが?」
「だ、そうだ。俺は大歓迎だぞ?」
そう言うと、ニナとヒナは目を合わせてしだいに涙を流し出した。
「あ、有り難き幸せです。私達を助けて下さったのに、職場まで提供して下さるなんて。」
「私達、姉妹をどうか雇って下さい。」
レントは大きく頷いて、ハンカチを2人に差し出した。
「レントお兄ちゃん。どうしてお姉ちゃん達は泣いてるの?」
「嬉しいから泣いてるんだよ。ミナちゃんもここで働くかい?」
「お兄ちゃんが居るならミナは離れたくないよ?」
「いい返事だ。」
レントが少し抱く力を強めると、嬉しそうにミナが抱き返してきた。
小さい子を相手にすると、口調が変わるのは何故ですかね(笑)
お楽しみください┏●