#3・巡り逢う
「 どうしてここに居るんだ?確か・・・故郷に帰るって言ってたよな。 」
レントが考えていると、
「 はい。ここがわたくしの故郷です。先祖代々この宿を切り盛りしていました。 」
そう言うとリンは戸棚から1冊の本を持ってきた。
「 これは大戦前から残ってある、この宿のオーナーや従業員の名簿でございます。 」
「 大戦前から・・・見てもいいか? 」
リンが頷くとレントは手に取って、真ん中辺りから開いた。
「 確かに大戦前からの物だな・・・ん?何故全ての時代に凛なる者が居るんだ? 」
「 わたくしと同じ、リンは初代オーナーより受け継がれた名前でございます。 」
リンがページをどんどんめくり名前を指さしていくと、必ず凛と書かれていた。
「 ここからは、大戦後です。 」
名簿には大戦前まで当たり前であった、家名→名前ではなく、名前→家名に変わっていた。
「 やはり全てにリンが書かれているな。 」
食い入る様に見ていると、レントがある事に気がついた。
「 漢字とゆうのが無くなったのは当たり前だが・・・何故、我が家名であるブラックの者が居るんだ・・・ 」
大戦で地続きになってから、漢字は廃止されアルファベットとカタカナを常用する事となって行った。
「 名簿にあるブラックは、大戦前の黒川とゆうオーナーの一族です。大戦後は宿の提供と、様々な功績によってオーナーを退いております。 」
リンはレントの目をじっと見ながら言った。
「 なるほど・・・道理で父さんが驚いてた訳だ。黒川一族は我がブラック家の先祖だな。 」
「 その通りでございます。王もフラワーガーデンで働いた事があります。わたくしの母・・・先代のリンと共に。 」
1代前の名簿に、リョウタ=ブラックの名が記されていた。
レントは遠くを見つめるように上を向いた。
( 父さんと同じ場所・・・さらには偉大なる先祖と同じ場所か。運命を信じざるを得ないな。 )
「 坊ちゃん・・・いえ、レント様。運命は存在しております。 」
「 ほぉ・・・リンは俺の心が読めるようだな。 」
レントとリンが微笑み合っていると、
「 失礼致します。オーナー例の方がいらっしゃいました。 」
「 通しなさい。 」
リンは短く答えると、
「 レント様。遥か昔から我々を支えてくれた一族の方が参りました。お目通りをお許しください。 」
「 俺は気にしないぞ?先祖からの縁だろう。通して構わない。」
扉を開けて入ってきたのは、真っ赤な髪を短く切り揃えた小柄な女性だった。
「 初めましてレント様。トモミ=レッドです。 」
一瞬、目が合っただけだかレントの頭に電流が駆け巡った。
運命の出会いがあれば逃さないようにしたいですね(笑)
お楽しみください┏●