#12・唐突
「さてと・・・居るべき場所に戻りますよ〜」
昏睡して聞こえるはずもないのに、優しい口調で黒フード隊長はレントを抱え上げた。
「この子に探されたら面倒ね・・・」
部屋の隅にあったメモ用紙に(2人で寝てしまって俺は時間なので帰る。ありがとう)と書いて
机に置いた。
黒フード隊長はレントを抱えたまま、誰にも見られないように走ってフラワーガーデンへと向かった。
(なんだこの感覚・・・身体が動かない・・・)
レントが目を開けると街が風のように過ぎていった。
(ハハ・・・夢でも見ているのか・・・)
レントが目を開けているのを知ってか知らずか、黒フード隊長はレントをお姫様抱っこに変えて走る速度を上げた。
(誰だ?フードで見えない・・・当たってるのも気にしてないのか・・・)
レントの頭の中には疑問と幸せが広がっていた。
黒フード隊長は街外れの小屋に入って、レントをソファーに寝かせた。
「アイツらの仕事の遅さは腹が立つが、こうゆう時は有難いと思うな。副隊長も着いていながらここまで遅いとは・・・訓練のやり直しだな。」
独り言を言って、フードが付いた黒い外套を脱いだ。
切れ長な赤い目に、長くサラサラな銀髪。
黒フード隊長を見たレントはその美しさに息を飲んだ。
(貴族の令嬢なんか目じゃないな。っとそれより俺は誘拐されたのか?)
レントが目だけで小屋の中を見渡すと、見覚えのある絵や、子供服などが飾られていた。
「薬の効果は・・・あと10分だけじゃない!?」
黒フード隊長は慌てた様子でレントを寝かせたソファーを見た。
幸い、レントは薬とゆう単語を聞いて目を瞑っていた。
「やっとこの日が・・・レント君を抱き枕に出来る!」
そう言って、ヨロヨロとソファーに歩いてレントに跨った。
(抱き枕だと・・・何を考えているんだよ・・・)
「レント君・・・ぎゅー♡」
ぎゅー♡と表現するにはかなり力強い抱擁だった。
(いっっってぇぇぇ!人間相手に抱き枕するとここまで力強くなるのかよ!)
「レント君の匂いだ〜♡離したくないよ〜♡」
(くっそぉ・・・誰だか分からんが絶対文句言ってやる!どこか動きは・・・・・・動いた。)
レントは数ミリ単位で指、腕、足、頭。と動かして確認した。
(背中の感覚はないが・・・とりあえず、どかせるぞ!)
レントは大きく息を吸って、腕で押し上げながら、
「力強すぎて痛いんだよー!早くどいてくれー!」
「きゃっ!あっ・・・♡」
ラッキーハプニング込でレントは黒フード隊長を睨みつけた。
抱き枕、新しいの買わなくちゃ・・・
お楽しみください┏●