#10・知識と静寂
「へぇ〜こんな静かな所もあったのか。」
フラフラと歩いていたレントは、図書館に入って辺りを見渡した。
適当に本を1冊手に取って、机についた。
大戦前からの歴史を綴った本には、日本の事や
地続きになる前の周辺諸国の歴史も書かれていた。
読み進めて行くと大戦中、大活躍した人の名前とその人の生い立ち。兵器や戦術など事細かに書かれていて、レントは1つの単語に目が止まった。
「花畑壮。大戦中に兵士の憩いの場として提供され、ここが無ければ生き残れなかった兵士も居た。興味深い・・・」
レントは立ち上がって、花畑壮に関する本を探した。
「あった・・・大戦の憩い場。そのまんまの題名だな。」
レントが手に取ろうとすると、死角から同じ本に手が伸びてきた。
「あっ。すいません。どうぞ読んでください。」
驚いている女性の声に横を向くと、メガネをかけた勤勉そうな雰囲気の女性が居た。
「いや。構わないぞ?ほら。」
レントは本棚から手に取って、女性に渡した。
「えっ。あ、ありがとうございます。」
受け取って、レントと目が合った女性は驚いて口をあんぐり空けた。
「おっ、王子様・・・街で血眼になって探されてる王子様が、私の目の前に・・・」
女性はオロオロと辺りを見渡して、レントを見た。
「どうした?そんなに慌てて?」
「王子様がここに居るって知れたら、沢山の人が来ますよ。」
「へぇ〜。じゃあ、誰にも知られないような静かな場所は無いか?」
女性は少し考えて、赤くなりながら口を開けた。
「そ、その〜・・・私の家はどうでしょうか?」
「君の家?確かにバレないだろう。よし!案内してくれ。」
レントは女性の手を取って、図書館を出た。
「レントの様子はどうだ?」
王宮の玉座の間で、リョウタは黒いフードを被った従者に言った。
「貴族を捕らえた事で、街の女性が1目見ようと宿に殺到しておりました。」
「ブッ!ハッハッハ!あやつもようやくモテ始めたか!さぞヘラヘラしておっただろう?」
リョウタは腹を抱えて笑っていた。
「それが・・・レント様はその場から、いつの間にか居なくなっていました。」
「なに?誘拐か?」
従者の報告でリョウタは真剣な顔になった。
「いえ。宿を出て、図書館に行ったようです。その後の足取りは別の者が負っています。」
「そうか・・・監視を続けろ。この街はまだ腐っておるからの。」
従者はリョウタに一礼して、素早く王宮を出た。
図書館、最近行ってないな〜・・・
お楽しみください┏●