紛らわしにも程がるだろ!
勢いで書きました。まず初めに、自分自身小説を書くことは初めてですので、至らない所があったらこちらのメンタルなんて気にせずご指導ご鞭撻よろしくお願いします。
…でもちょっとは優しくしてね?
「ようこそ!幽霊部へ!!」
ニコニコ笑顔でそう言った彼女の笑顔が眩しすぎる。光が吸い込まれるような漆黒のロングでメガネちゃんだ。…これは狙っているんだろうか? 俺を殺しに来たのではないだろうか? オマケに日がさしたような幻覚付きだ。それに、心なしか花の香りがする。
「えっと…。どういうことでしょうか? 」
しかし、こんな可愛い子に男子なら120%トクゥンするであろう笑顔で歓迎されたのだが、状況が全く頭に入ってこない。
ドアを開けたまま固まっていた彼女が、俺の質問に首を傾げる。その動作すら可愛いくて、流れる髪をおもわず目で追ってしまう。
「あの、私の方こそどういうことでしょうか…」
たしかに、それはご最もだ。
なぜなら、俺が入部届けを出しに来たのであって、先程の俺の質問はどう考えても筋違いというか、そもそもおかしい。
とりあえずこちらとしても状況を整理したい。
「あー、あの…ですね。入部届けを出しに来ました。その、幽霊部に」
「はい…。うちが幽霊部ですが?」
「ですか…」
「ですね…」
彼女の甘い栗色の瞳に不安の色が見えた。
もしかして今の俺、軽くキモイよな。怪しさMAXの言動だ。
とりあえず、ここに来た理由を説明しなければ。
「俺は、えと、掲示板を見まして。部活紹介の。それで幽霊部の張り紙が目に入ったので来てみたんですけど…」
「やっぱり! 入部してくれるんですか!? 」
「ちょっ!?」
彼女がグイッと身体を寄せて来たが、俺は受け止めた。向こうから来るものは拒まず、がおれの主義だ。
もうちょっとこの感触を味わおうと思った矢先、そんな考えは部室内からひょこっと出てきた第三者によって潰された。
「沙耶乃、近すぎ。そいつも困ってんじゃん」
沙耶乃を俺から引き剥がしたもう1人の手によって。
「わっ…千景ちゃん。もう少し優しく引っ張ってよぅ」
「だって近すぎだったんだもん」
「もう…。でも、ありがと」
「…」
なんだこの百合展開は。全くもって素晴らしい…じゃなくて。目の前の彼女は沙耶乃というのか、そんで俺から沙耶乃を引き剥がしたショートヘアのこいつは千景か…。覚えておこう。
ん?タイピンの色からして、どちらも1年生。つまり同級生なのか。
沙耶乃に感謝されて照れている千景は、俺と目が合うと急に顔が引き締まった。まだ若干顔赤いけど。
「沙耶乃。多分こいつはあんたの作ったポスター見てきたんでしょ?」
「うん。そう言ってたけど…なんで?」
「つまり、こいつはろくにうちの部のこと調べないで来たってこと。それも、帰宅部に入りたくてね」
「千景ちゃん! せっかく来てくれたのになんで勝手に決めつけちゃうの!?」
いや完全に図星だが。
「いくらなんでも酷いよ!」
図星なのだが。
「ご、ごめん。…でも、私はそうだと思う。だってもし私が何も知らないであのポスター見たら、同じこと考えると思うから」
「…どうしてそう思うの?」
「そりゃあね。あんなふうに書けばそうなると思うよ。沙耶乃、自分でなんて書いたか覚えてるよね? 」
「もちろん。えっと…『幽霊部員、募集中!!』だよね?」
「そんで、そのまま勘違いで来たのがこいつってわけ」
フッ、なるほどな…。つまりはこういう事か?
本気で俺の勘違いでだったとッ!!
…めっちゃはずかしいが、まぁいい。とりあえずここに入るのは辞めておくか。
「あはは…。俺の勘違いだったみたいですみません。それじゃあこれで失礼しますね」
入部届けを受け取ろうと手を差し出す。が、中々返してくれない。
「えっと…沙耶乃、さん?」
俯いたまま、おれの入部届けを手に持って動かない。どうしたのだろう。
「…ちょっとあんた。誰が名前で呼んでいいっていったのよ。沙耶乃は結波って苗字があるんだから、いきなり名前呼びとか気持ち悪いのでやめてください」
最後は真顔でそう言いきった。口調が丁寧になると、突き放された感が凄いのね。軽くハートが割れそう。
「すみませんでしたやめますからその顔はやめてください。…それで、結波さん? それ、返してもらえませんか?」
「あの、もし入りたい部活が決まってないなら幽霊部に入りませんか?」
「ちょっと!?沙耶乃!なんでこんな奴を」
「千景ちゃん。大人しくして」
「…分かった」
いや流石にチョロいな。拗ねたような口調がまたいいんだけどさ。
「もう一度聞きます。うちに入りませんか?」
「誘ってくれるのは嬉しいけど、実際何をする部活なのかも分からないし…。それに、迷惑じゃない?」
「迷惑なんかじゃないですっ!分からないことは私が教えますから、一緒に部活しませんか?」
「どうして、そこまで…?」
「…フフッ。なぜでしょうか? 私にも分かりません。 ただ、あなたがいてくれたらいい事が怒るような気がするんです。そんな理由じゃだめ、ですか…?」
「全然だめじゃないです。いままで1人でいることが多かったですし、部活とか興味が無かったんですけど、なんか…やってみようかなって思いました」
「じゃあ、これからよろしくお願いしますね?」
これだから男ってのは困るんだよな。そんなのは誘われた時点で答えが出ているわけで、女の子のお願いなんて断れるわけがなくて。
別に今日、何か予感なんかがあった訳でもないけれど、差し出された手を握り返した彼女との繋がりは、偶然だけでは無かったのかもしれない。
「そう言えば、お名前はなんて言うんですか?」
「俺ですか? 式守 隼刀です 」
「じゃあ隼刀くん。改めてよろしくね?」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
季節はまだ四月。始まりの月。
俺の勘違いでおかしな部活に入る事になったけど、これからの高校生活が楽しくなりそうな予感が、今はある。
続くかどうかは全く分かりません。
あれ、こいつめっちゃ無責任だなってブーメラン飛んできたぞ。