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19話


「主……主……」


 スリスリスリスリ


 野営地から少し離れた、森と平地の境界線。

 そこに生えている木の下で、私は休んでいた。


「主ぃ……」


 スリスリ、と。ヴィナが私の体に顔を埋めてくる。

 遂にデレたか。


「ああ、私はヴィナの主だぞぉ……」


 少し体が痛むが、そんなものは無視だ。

 今はこの可愛いヴィナを撫でることに集中しよう。


「主……良かった」


「ああ……ありがとう。ヴィナ」


 夜の森。いつ魔物が出てくるか分からない。


 ……でも、少し疲れてしまった。


(レーヴァテイン、魔物が来たら起こしてくれ)


《ええ、分かったわ。今はおやすみなさい、マスター》


「──ある、じ……?」


 少し不安そうなヴィナの声が聞こえる。


「ごめん、ヴィナ……。ちょっと、寝る……──」


 俺は心地良いヴィナの体温に身を任せ、眠りについた──



  ◇  ◇  ◇  ◇



「久しぶり」


 気がつくと、椅子に座っていた。

 眼前の、裁判官が座っていそうな机に座っているのは、いつか見た輪廻神──


「うおおおお!!!!」


「きやああああ! なんでいきなり飛びかかってくるのよ!!」


「良くも何も言わずに転生させてくれたな! おかげでこっちはせっかくメイキングした顔を隠しながら生活してるんだぞ!」


 ──の顔が見えた瞬間、私は飛びかかっていた。


「だって面白そうだったし! ちゃんと絶妙に違くしてあげたでしょ!」


「面白そうだっただと!? 人の人生を何だと思ってる!!」


 まさか神と掴み合いのキャットファイトをするとはな!

 って言うか、よく見ると周りにも誰か座って──


「静粛に」


 ──瞬間、私は椅子に座っていた。

 一秒前まで輪廻神と掴み合っていたのに、まるで時間が巻き戻ったみたいに始めの体制に戻っていた。


「な……に……?」


 よく、周りを見渡してみる。


 何故気づかなかったのか。椅子に座る俺を囲むように、沢山のナニカが輪廻神のように座っている。


「始めまして、若き天使よ。我々は神だ」


 ノイズ混じりの、男か女か分からない声が響く。


 ……まぁ、そうだろうな。

 しかし、この何十人もの人影が神、か。


「君を今日ここに呼んだのは、ある頼み事をしたいからだ」


 そう言うのは、輪廻神の隣に座っている神だ。

 顔や輪郭は靄が掛かっていて見えないが、地面まで伸びているとてつもなく長い髪が特徴的な神。


 ……神からの頼み事、か。断れる類のものじゃなさそうだぞ。


「先日、君が居る世界に勇者が召喚された。魔王の復活が早まってしまった為、焦ったとある国が古い魔法を使ってな」


 なんかとんでもない事を言ってる。

 魔王とかあの世界に居たんだな。


「その魔王を倒せと?」


 よくある定番展開だ。 

 しかし、それは召喚された勇者がやる事じゃないのか?


「いや、取り敢えず今は魔王と戦って貰おうとは思ってない。だがこの事は頭の隅に置いておいてほしい」


 ……取り敢えず、今は、か。私は嫌だぞ、魔王と戦うなんて。


「じゃあ、私は何をすればいいんだ?」


「君は少し前に竜の襲撃に遭っただろう。その原因である火竜王に覇竜の卵を盗まれてな。殺していいから取り戻してくれ」


 ──それは、とてつもなく面倒くさそうな依頼だった。



  ◇  ◇  ◇  ◇



「あ、主……?」


 目を擦り、未だ眠気が覚めない目で私を見たヴィナの顔が、驚愕に染まった。


「ああ、なんか進化してしまってな」


 私は、背から生えた純白の翼を撫で、苦笑した。


「『ステータス』」




 個体名:ルシア

 性別:女

 年齢:17

 種族:天使

 Lv:1



 HP   :7,000/7,000

 MP   :50,000/50,000

 筋力  :1,000

 魔力  :50,000

 体力  :4,000

 速力  :5,000

 知力  :20,000



 ユニークスキル:天の翼Lv5(↑2) 真眼(左) 重力魔法Lv7(↑1) 言語マスター 神器召喚 


 スキル:MP回復Lv8(↑1) 原始魔法Lv5(New) 危機察知Lv5(↑4) 魔法制御Lv6(↑1) 鎌術Lv5(↑2) 鍛冶Lv5(↑4) 痛覚耐性Lv5(↑4) 体術Lv5(↑4)


 加護:輪廻神の加護 狡知神の加護 魔導神の加護


 称号:異界からの転生者 苦難の道 災厄の契約者 竜殺し 格上殺し 神の使徒(New) 叡智の取得者(New)


 契約:レーヴァテイン




 私、超強化。何故かスキルが全てLv5以上になっている。

 今になってくると初期の頃のステータスがゴミのようだ。


 ──さて、この超強化の要因は三つある。



  ◇  ◇  ◇  ◇



「まあ、要件はこれだけだ。覇竜の卵さえ回収してくれれば竜王の生死は問わない」


 竜“王”なのにこんなモブのような扱いを受ける火竜王に少し同情──は、無いか。あの襲撃で私は死にそうになったしな。


「まあ、こんな軽く言っているが、今の君じゃあ天変地異が起きても奴には勝てないだろう」


 そんな相手と戦わせようとするなっ! とは、こんな沢山の神の前では言えない。


「私に死ねと?」


「私がそんな事をさせるように見えるかい?」


 そもそも顔が見えないんだよ。


「君、ステータス上の年齢はどうなっている?」


 年齢?


「0だが」


 この世界に降り立ってからまだ数ヶ月くらいだからな。


「前世の年齢は?」


「17だが」


「なら、17歳じゃないとおかしいんだよ」


「は?」


「確かに君は転生した。

 でもそれは、魂をリセットしている訳ではないんだ。だから年齢は前世までのを引き継がなくてはいけない。

 竜王と戦うためにも、ここで年齢を引き上げるね。0歳の赤ん坊が戦える訳ないだろう?」


 確かに納得でき……るか?


「なんでこんなに弱いんだろうと疑問に思っていたけど、0歳なら仕方ない。まあそれもこれも、君の転生を慌てて処理した輪廻神に責任があるのだよ」


「またお前かああああ!!!!」 







「竜王と戦うにあたって、今の君では天変地異が起きても絶対に勝てない。なのでこれを用意した」


 長髪の神がそう言うと、片翼の天使が二人現れた。


 白金色の髪をした少年と少女だ。

 同じ天使、同じ片翼。でも、“格”が違うと、本能で理解した。


 彼らが持っているのは、黄金に輝く林檎のような果物だった。


「それを食べてご覧なさい」


 拒否権はないのだろう。俺は天使からその林檎を受け取り、一口齧った。


 その後、何故かめちゃくちゃレベルが上がった。




「次に私の加護を授けよう」


 レベルが上がって困惑している私に、長髪の神がそう言った。


 ──魔導神の加護を入手しました!


「これくらいやれば、後はレーヴァテインの力を借りて竜王を倒せるだろう。覇竜の卵の奪還、頼んだよ?」


 ここまでされて断るなんて出来るわけないだろう。どんどん外堀を埋められていく間隔……ロキを思い出すな。



  ◇  ◇  ◇  ◇



「んー……!」


 既に時は朝になっている。

 私は木の幹に預けていた体を起こすと、大きく伸びをした。


 進化して常時翼が出てくるようになったのは流石に驚いた。しかもこの翼、元々来ていた服を何故か破らないで生えている。


「主……私も、進化した」


「おお、ヴィナも進化したのか。凄いな」


 そう言って撫でると、気持ち良さそうに目を細めた。

 そうか、ヴィナも進化したのか。


 目立った変化無いが、きっと強くなってるんだろう。


「取り敢えず、一旦街へ戻ろうか」


 ヴィナのステータスも気になるが、取り敢えずはこんな森の近くではなくもっと安全な場所に行こう。


 俺はヴィナを持ち上げ、街へ飛行していった。



  ◇  ◇  ◇  ◇



「始めまして。私はビント・ギルフォー。

 今回の件でルシア殿には多大な迷惑を掛けた。すまない」


 ──そう言って頭を下げてくる男性は、この街の領主であり、あの豚野郎の父親だ。


「別にいい。もう“終わった”事だ」


 あれから次の日、辺境への移動の準備をしていた俺たちの元に兵士たちが現れ、領主宅へ来てほしいと言われた。


「……そうか。して、ルシア殿」


「なんだ?」


「昨日から馬鹿息子の姿が見えなくてね、私は目撃情報を元に街の外へ捜索隊を出したんだ」


「ほう、見つかったのか?」


「──ああ、見つかったよ。死体でね」


「そうか、魔物にでも襲われたんじゃないか?」


 私は、わざとらしく肩を竦めた。


「あんなのでも、私の一人息子でね。



 ──貴族殺しの罪は重いぞ?」


「証拠でもあるのか?」


「…………」


「それでは、失礼する。


 ……手を出す相手は、選んだ方がいいぞ?」


 部屋を出る瞬間、私は魔力を放出してそう言った。

 ──“私”の中には、容赦と言う文字は無いからな。



一ヶ月前……勢いで10話くらい書き上げると、途轍もない矛盾とありえないくらいつまらない話が出来上がりました。

それを直そうとして、しかし筆が動かず一ヶ月余り……何とか直して投稿再開です。

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