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15話

前話が短かったので2話更新になります。

魔法には、火、水、土、風、光、闇と、どんな人間でも才能があれば使う事が出来る『原始魔法』がある。

 原始魔法は使い手が多い為、魔法の名前や階級が定められている。


 火球を生み出す、ファイアボール。

 火属性中位の魔法だ。


 しかし、名前が定められているからと言って必ずファイアボールと唱えての発動はしなくてよい。

 これは昔の魔法使いたちが、“ファイアボールは火球を生み出すワード“だと言う事を深く浸透させ、魔法のイメージしやすくした当時の名残りだ。


 さて、ここまで読んでくれたなら原始魔法に階級や魔法名がある事は理解いただけただろう。

 だがしかし、この世には特定の種族しか使えない『種族魔法』と、特定の個人しか使えない『ユニーク魔法』がある。


 種族魔法、並びにユニーク魔法はステータスのユニークスキルの欄に記載されている。


 例えば吸血鬼族の血魔法。獣人族のスピリットなど、その種族でしか使えない魔法が種族魔法だ。

 ──余談だが、獣化と言うスキルは獣寄りに進化したヒューマンが使えるようになる事から種族魔法には当てはまらない。そもそも魔力を使っている訳でもなく、技術に近い物だ。


 さて、次はユニーク魔法だが──



 パタン。と、読んでいた本を閉じる。

 表紙には『よく分かる魔法講座──常識編』と書かれていた。

 昨日はギルドマスターである斉藤さんと軽く話をし、宿を確保したら二人で爆睡してしまった。気づかない内に旅の疲れが出ていたらしく、飯も食わずに朝を迎えた。

 今は、毎度の如く俺に引っ付いて寝ていたヴィナと一緒に街を探索して、良い感じの本屋で見つけた魔法の本をベンチで読んでいた最中だ。


「ヴィナ、それ面白いか?」


「……うん」


 ガスフォードの街で適当に見繕った服の上から俺とお揃いの白いローブを着たヴィナが読んでいる本は、『最強はどれだ!? 〜歴史上のユニーク魔法を戦わせてみた〜』と言う表紙の本だ。

 ぶっちゃけ俺もちょっと読みたい。


「どんなユニーク魔法があった?」


「……音魔法、とか」


「へえ、どういう魔法なんだ?」


「……音で攻撃したり、遠くの音を聞いたり出来る……あっ」


「どうした?」


「……空間魔法使いに殺された」


「そうか……」


 どうやら中々物騒な内容のようだ。これはヴィナの教育上良くないな。後で俺もチェックしておこう。


「いやー、しかし」


 のどかな街だなぁ。

 ガスフォード程は大きくないが、ギルフォーの街はそこそこ大きい。

 街を歩く人々の顔は穏やかで、とても静かな空気が流れている。


 ……ここも一応ヴォーブ大森林の近くなんだが。

 あっちは冒険者の数も多く、街の人はなんだか皆荒事慣れしてそうな人たちだった。


 ──でもまあ


「のどかでいいなぁ……」


 穏やかな昼下がり。暖かい日射し。本を読むヴィナ。人々の顔には引き攣ったような笑顔が溢れ、甲高いラッパような音が鳴り響く──あれ?


 プーッ! プパッ!


 プーッ! プパッ!


「頭が高あああい!!!」


 突如聞こえてきたラッパの音の後、そんな声が広場に響いた。

 見れば、女性はそそくさと逃げ出して、男性は顔を下に向けている。


 ドン! ドン! ドン! ドン!


 足で音を鳴らしながら、鎧を着た兵士たちが行進してきた。

 兵士たちは御輿を担いでおり、その上にはオークが居る。……いや、人間か?


 そして御輿の傍らには先程の声の持ち主と思われる男が立っていた。他の兵士たちとは違い御輿を担いでおらず、頭の部分の鎧を脱いで顔を露出している。


「……なんだあれ……」


 俺はその奇妙な集団を、広場の反対側から眺めていた。

 ヴィナはちらりと視線を向けると、興味無さそうに本の続きを読んでいる。


 って言うかあれ、多分貴族だよな。

 あんな態度だし、女性が逃げてたし、俺たちは頭下げてないし、嫌な予感しかしない。


「……ヴィナ、先に宿に戻っていなさ──」


「──っっっ貴っっ様あああああ!!!!」


 あー……。


 視線だけ動かしてあちらを見ると、先程の男が顔を真っ赤にしながら叫んでいた。


 そして、ドン、ドンと、亀の如き歩みで御輿が近づいてくる。


「貴様ぁぁぁ!! この御方を誰だと心得る!? この御方こそギルフォー家時期当主たる、リズント様であるぞ!!!」


 ……で?


 俺と同じ感想なのか、ヴィナは本を読んだままだ。

 て言うか、この世界に来て早々貴族の騎士団に捕らえられているので、そこまで高くなかった貴族への印象がダダ下がりだ。


「ぶひっ、そこの少女、中々美味しそうだなぁ……!」


「……あ?」


 ブッ殺すぞこの豚。

 そう言わなかった“俺”を褒めてほしい。“ルシア”なら確実に言っていた。


「おお! 感謝するのだなお前、お前は高貴なリズント様の種を授けて頂けるのだぞ?」


 ズンッ──!


「ブッ殺すぞカス共」


 あっ、言ってしまった。


「な、なんだ!?」

「い、いきなり重くっ!?」

「ぐおおぉぉ!!!」

「た、耐えられない──!」


 無意識で発動していたプレス。

 それに、御輿を担いでいた兵士たちは耐えられなかったようだ。


 ドガンッ! と、大岩でも落としたんじゃないかと言うほどの衝撃と共に豚野郎が落下した。


「り、リズント様っ!?」


 男が御輿から転げ落ちた豚野郎に駆け寄る。


 ……今の内に解除しておこう。


「い、痛いっ! 痛いよおおお!!!!!」


 生前の俺より絶対に年上の筈なのに、子供みたいにわんわんと泣き喚く豚。落ちた時に膝と手でも擦ったんだろう。


「リズント様! 屋敷に戻りましょう! 光魔法使いに至急見てもらいましょう!」


「は、早くしてくれえええ! 痛いんだよおおお!!!!」


 豚野郎共は兵士に御輿を担がせ、そそくさと元来た道を帰って行った。


「ああ、面倒くさい事になりそうだなぁ……」


 取り敢えず俺は、ヴィナを宿の外へ出さないようにする事に決めた。



  ◇  ◇  ◇  ◇



 ──ドクン、ドクン。

 バイオレットに光り、静かに脈動するソレは、地面と天井から伸びた根によって固定されていた。


「もうすぐだ……! ふふ、ははははは!!!」


 その光りに照らされながら、埃を被ったような銀髪をした男は叫んだ。 


「…………」


 暗がりから男を見るのは、青い髪を伸ばし、6つの剣を腰に携えた女。

 その容姿は、彼女かれに非常に酷似していて──


「さあ、早く産まれてくれ! 我が魔王よ──!」



  ◇  ◇  ◇  ◇



「──落ち着いて下さい! 皆様の混乱は分かります」


 地面に描かれた巨大な魔法陣を鎧を着た兵士たちが囲み、更にその周りをローブを来た魔法使いたちが囲む。

 その魔法陣の中心には約30名程の男女が、呆然とし、興奮し、泣き出し──混乱していた。


「ここはウラシオル王国──皆様の視点で言えば、異世界になります」


 2名の騎士と3名魔導士に守られながらそう言うのは、ルビーのような紅く気高い髪と、同色のドレスを纏った少女だ。


 一同の視線が集まる中、彼女は言った。


「魔王の復活が、予定より百年ほど早まってしまいました。皆様には、魔王を倒して貰いたいのです。

 嫌と言うなら、元の世界へ帰す事も出来ます。ですが、そのチャンスは今一度きりです。

 どうか、我々の願いを聞いてもらえませんか?」

 

 ──勇者、と。


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