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13話


「お、おいあれ……」

「ああ、『宣告者』だ」

「『宣告者』の素顔ってあの全剣と瓜二つなんでしょ? しかも幻の天使族とか……」

「ああそうだぜ。この目でバッチリ見た」


 ギルドへ入ると、冒険者たちのそんな話し声が聞こえてくる。


(はっず……)


 昨日勢いで言ったあの言葉。

 どうやら冒険者たちはマジで二つ名を考えていたらしく、街中を歩いていても宣告者宣告者とヒソヒソ話している。


 それは置いておいて、俺は昨日素顔がバレてしまった訳だ。

 昨日の今日でまだ面倒毎は起きていないが、それも時間の問題だろう。

 今日は隣街へ出発する前に、新しい装備を受け取りに来た。昨日はあのままギルドからの取り調べを受けてそのまま帰ってしまったからな……。

 結果、あの三人は他人の奴隷に暴行を加えたとしてギルドから除名。その後然るべき所へ連行された。

 俺は騒ぎを起こしすぎたとして多少のペナルティを受けた。この依頼もペナルティの一つとしてカウントされるらしい。


「装備を受け取りに来た」


「おう、出来上がってるぜ」


 受け受けエリア等が並ぶ所を表とするならば、ここは裏。

 その裏エリアに、ギルド専属鍛冶職人たちの加工場がある。


「ありがとう。要望通りだ」


「ったりめえよ」


 ガツ、と台に乗せられたのは、白い仮面と白いローブだ。


 まず仮面。

 上級竜の鱗で作られたそれは、増長の仮面と同じく視界確保の為の穴が無い。透過の魔法が込められているのだ。

 基本的なフォルムは増長の仮面と変わりない。違うのは、手触りが少しザラザラしているのと、右頬に当たる部分に赤い線が三本引いてある事。左目尻の少し上辺りに小さめの鱗をそのまま使っており、シルエットにするとそこが少し出っ張るようになっている事だ。


 次にローブだ。

 膝下辺りまでの裾に、前を紐で結ぶタイプの白いローブだ。

 大き目のフード付きで、深く被れば顔を隠せるようになっている。

 それ以外に特筆する所はないが、とても手触りが良い。


 何故赤い火の上級竜の素材から作った物が白くなっているかと言うと、どうやらレーヴァテインの『白炎』が原因らしい。


 あの時打った『明けの明星』。

 それの元となった白炎に掛けた魔力量はそこまで多くはなかった。実は裏でレーヴァテインが魔力を込めていてくれたらしく、そのレーヴァテインの魔力に影響され、倒した竜の素材が白く変色してしまったそうだ。


「この二つはかなりやべえぜルシア。

 まずこの仮面だがな、強度は鉄製の物なんか比べ物にならねえ程頑丈だ。ミスリルくれえあんじゃねえかなってくれえだ。

 そんで、神器の魔力に当てられた事と元が火の上級竜の鱗ってんで、火への耐性がとてつもなく高い。そんでもって魔力を込めると硬質化する。


 ローブの方だが、火の耐性と硬質化は同じだが熱を遮断する効果もあった。

 そして面白えのが、このローブ、なんと火魔法を吸収するんだよ」


「吸収?」


「ああ、魔法で作られた火なら、大体のもんは吸収して魔力に変換して装備者に渡すって感じだ。これはもう国宝級だぜ?」


「おお!」


 凄いな、これがあれば炎を使ってくる敵に対してはもう無敵なんじゃないか?

 放ってきた魔法をローブで吸収──「今、何かしたか?」的な事も出来るんだろう。夢が広がるな。


「想像以上の物だ。ありがとう」


「いや、おめえが売ってくれた素材でこっちも今面白え事になっててな。満足してくれたら良かったよ」


 今更だが、この江戸の親父のような喋り方をしているのはギルド専属鍛冶職人のヘイス。ドワーフだ。

 仮面のデザインとかの要望でここへ訪れで、結構仲良くなった。


「本当にありがとう。今日で私はここを出るよ」


「そうか……まあ、冒険者ってのはそんなモンだ。他ん所でも活躍して、俺の名前を広めてこい」


 俺は「ああ、分かったよ」と返すと、ギルドを後にした。リルへの挨拶はもう済ませてある。と言うか、朝イチで何故かリルがやって来て色々話していった。


 よし、装備はこれで十分だ。



  ◇  ◇  ◇  ◇



 俺が目指す街の名を、『ギルフォーの街』と言う。

 基本的に街の名前はその街を収める貴族の名前になるので、ギルフォーの街を収める貴族はギルフォー家となゆ。

 ちなみにこの街の名は『ガスフォード』。ガスフォード家が収めている。


 さて、俺とヴィナは旅支度を整え、ガスフォードの馬車乗り場へとやって来た。

 俺たちの他に相乗りが四名、内三名が冒険者で、護衛と依頼を受けている。ちなみに俺は受けていない。面倒くさそうだからだ。


 御者に「その仮面、あ、あんたは宣告者!」などと驚かれるイベントをこなし、馬車はギルフォーの街へ出発した。

 

「私、馬車に乗ったのは初めてなんだ」


「……私は、何回かある……」


「へえ。どんな感じだったんだ?」


「奴隷の時に、移動する時に乗った……」


「へぇ……」


 地雷を踏んだ。


「ほ、ほら! 外の景色を見てみよう!」


 話題を変えたくてそう言ったのだが──


「……森」


「森、だな……」


 現在、俺の狩場だったヴォーブ大森林を通っているため、視界には木々が映るだけ。

 乗っているのが殆ど冒険者だと言うこと。その内の一人は上級竜を倒したと言われる『宣告者』だと言うことがあり、少し危険なルートを通っているそうだ。


(どうするかなぁ……)


 と悩んでいると、森を見るヴィナの目が輝いている事に気づいた。


「……面白いか?」


「うん……」


「そっか、ならいい」


 頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細める。


(大分デレてくれたなぁ)


 買った当時の警戒心が嘘みたいだ。

 でも、少しそれは残っていて、俺とヴィナにはまだ壁がある。


 いつかはそれを取り払いたいと思いながら、俺はステータスを開いた。




 個体名:ルシア

 性別:女

 年齢:0

 種族:半天使

 Lv:75



 HP   :3,200/3,200

 MP   :20,300/20,300

 筋力  :520

 魔力  :10,000

 体力  :840

 速力  :1,200

 知力  :5,500



 ユニークスキル:天の翼Lv2 真眼(左) 重力魔法Lv6 言語マスター 神器召喚


 スキル:MP回復Lv7 火魔法Lv5(↑1) 危機察知Lv1 魔法制御Lv4(↑1) 鎌術Lv3(↑2) 鍛冶Lv1(new)


 加護:輪廻神の加護 狡知神の加護


 称号:異界からの転生者 苦難の道 災厄の契約者 竜殺し 格上殺し


 契約:レーヴァテイン



 ちょくちょく大鎌の練習をしていたのでレベルが2つ上がっているのと、ヘイスに少し鍛冶を教えて貰った事で鍛冶のスキルが増えている。

 加護、称号の詳細は──




 加護:狡知神の加護

 狡知の神ロキから与えられた加護。

 レベルアップ時知力と速力の上昇に補正。

 スキルを覚えやすくなる。スキルのレベルが上がりやすくなる。


 

 称号:災厄の契約者

 かつて天界を滅ぼしかけた災厄の神器レーヴァテインと契約した者に送られる称号。

 火と親しくなる。

 火魔法Lv3を獲得。



 称号:竜殺し

 上級以上の竜を単騎で殺した者に送られる称号。

 中級以下の竜に対するダメージが1.5倍。



 称号:格上殺し

 圧倒的に格上な存在を殺した者に送られる称号。

 取得経験値1.5倍。

 格上の存在と戦う時ステータスが1.2倍。




 と、こんな感じ。

 ロキの加護のおかげでスキルの習得やレベルアップが容易になった事と、格上殺しの称号でまたレベルが上がりやすくなった。

 レーヴァテインの称号にある“火と親しくなる”の意味はよく分からないが、まあ悪い方向には向かわないだろう。


 それにしても、筋力と体力の無さがヤバい。


 ちなみに隠蔽を取ったヴィナのステータスがこれ。




 個体名 ヴィナ

 年齢 14

 種族 銀狼族 

 Lv50 


 HP  2,000/2,000

 MP  100/100

 筋力 5,000

 魔力 100

 体力 3,000

 速力 9,000

 知力 500


 ユニークスキル:神狼化 風神 反逆


 スキル:体術Lv8 獣化Lv5  


 加護:獣神の加護


 称号:神童 神狼の生まれ変わり 苦難の道 反逆者


 契約:グレイプニル




 うん、俺と真逆のようなステータスだ。

 ちなみに、奴隷であるヴィナは主人の許可無く自分のステータスが見れない。

 俺は前にヴィナを落ち着かせ、自分のステータス回覧の許可を出した。

 しかし、ヴィナの目に写ったのは、500に統一された隠蔽されたステータスだったそうだ。


 何故、ヴィナが自分のステータスを正しく見れないのかは分からない。

 でも、それでいいと俺は思った。


 何せ、ヴィナは神童で神狼──フェンリルの生まれ変わりだ。そして高いステータスを持っている。

 それを知ったら、もしかしたら冒険者になると言い出しかねない。


 そんな事は許さない。ヴィナは、俺の帰りを安全な所で待って、疲れて帰ってきた俺に「……お帰りなさい」と、いつものように言ってくれるだけでいい。


 そんな事を考えていたら──


「そこの馬車、止まりな!!」


 統一性の無い装備を着た十数名の人間が、進行方向に現れた。

 奴らは既に武器を構えている。


 ──盗賊。

 そんな単語が、頭に浮かんだ。


「女は殺すな! 男は殺せ!」


 そう叫ぶ、(推定)盗賊の親玉に、ヴィナは不安そうな表情を浮かべた。


「大丈夫、私が守るからな」


 3人の冒険者が馬車から飛び出すのを尻目に、俺はヴィナの頭を撫でた。



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