10話
「…………ん」
どこからか聴こえる喧騒と良い匂いで目を覚ます。
「ここは……ギルドか?」
俺はギルドの質素なベッドの上で目を覚ました。
近くの窓から外を見ると、見慣れた町並みが見える。今は夜のようだ。
どうやらここはギルド一階にある治療室のようだ。
個室とは中々気を利かせてくれる。
「起きたか」
ガチャ、と扉が開き、リルが入ってくる。
「私はどのくらい寝てたんだ?」
「4、5時間だな。魔力切れもあるが、無茶な身体強化で体に負担が掛かっていたぞ」
……まあ、そうだろうなぁ……。
「全く……オールポーションとは、厄介な物を見つけたな」
「厄介な物ってどう言う事だ? って言うか、何で私がオールポーションを使ったって分かるんだ?」
「戦闘に夢中で気づいていなかったんだな。オールポーションを飲むと、体から青白いオーラが滲み出るんだ。
それに翼広げた時、髪が白くなっていたぞ?」
マジか……。つまり俺はあの時、半壊の仮面を付けながらボロボロのローブを纒い青白いオーラを出しながら純白の翼と白く染まった髪というなりで戦ってたのか。
「……超目立ちそう」
「安心しろ、ちゃんと目立っていたぞ。冒険者たちはお前の話題で一杯だ。
『片翼の天使』だとか『白炎』だとか、近日中に二つ名が付くだろうな。期待しておけ」
うへぇ……。
「それと、リルから貰った仮面とローブ、壊しちゃったよ。ごめん」
「別に良い。装備品の破損は戦闘では付き物だ。それに新しい物は既に作らせてある」
「え?」
「お前が倒した上級竜が居ただろう。殆ど吹き飛んでしまったが、なんとかローブと仮面、それに少しの防具が作れる程度の翼膜と鱗が採取出来た。
今ギルドの鍛冶師に作らせている」
「おお! ありがとう!」
「完成するまではその壊れかけで我慢してくれ。それと、受け付けで今回の報酬を受け取ると良い。じゃあな」
そう言うと、リルは出ていってしまった。
「見事に半壊してるな……」
俺は壊れかけの増長の仮面を手に取る。
焦げ付き、ひび割れている仮面には以前の姿はもう無い。
左目の周辺とその上部分が抉れたように欠けていて、左側は殆ど露出している。
「行くか」
俺は半壊した仮面を付け、ギルドの受け付けへ向かった。
◇ ◇ ◇ ◇
個体名:ルシア
性別:女
年齢:0
種族:半天使
Lv:70
HP :3,000/3,000
MP :20,000/20,000
筋力 :500
魔力 :9,500
体力 :800
速力 :1,000
知力 :5,000
ユニークスキル:天の翼Lv2(↑1) 真眼(左) 重力魔法Lv6(↑1) 言語マスター 神器召喚
スキル:MP回復Lv7(↑2) 火魔法Lv4(↑1) 危機察知Lv1(new) 魔法制御Lv3(new) 鎌術Lv1(new)
加護:輪廻神の加護 狡知神の加護
称号:異界からの転生者 苦難の道 災厄の契約者 竜殺し 格上殺し
契約:レーヴァテイン
うーむ、やはりこのステータスの偏りはどうにかならないものか……。
俺はステータスを見ながら、ガスフォードの街を歩いていた。
と言うか、ロキにお願いされた奴隷を探している最中なのだ。
「だからどんな女の子なんだよ」
《見たら分かるっつうの》
このような具合に、ロキはその子の特徴を教えてこない。
取り敢えず俺は街の奴隷商を回っている。
「3軒目……面倒くさいからこれで見つかってくれよ?」
着いたのは、これまでと比べると小さな店だった。
「いらっしゃいませ〜!」
店に入ると、中年の男が腰を低くして手を揉みながらニコニコと挨拶をしてきた。
「女の奴隷が欲しいんだが、中を見せてくれるか?」
「──はい! どうぞこちらへ」
男は一瞬怪訝な表情を浮かべたが、すぐに営業スマイルを浮かべた。
まあ、今の俺は女だからな。変だと思われるのも仕方ない。
男が扉の鍵を開ける。
すると、俺の視界に檻に入った様々な種族の男女が目に入る。
……ああ、やっぱりあの時を思い出して、何だか嫌な気分になる。
(おいロキ。居たら言えよ)
《もし居たら、お前が一番分かるぜ?》
俺は男女別けられた檻の、女の檻を見回す。
ヒューマン、エルフ、獣人 ドワーフ……様々な種族がそこに居た。
「これで全部か?」
「いえ、裏に処分が決まった奴隷がおります。見ますか?」
……この中に、その少女は居ないのなら。
「ああ、見せてくれ」
◇ ◇ ◇ ◇
そこは、ある程度掃除されていた先程の部屋とは打って変わって、まるで廃墟のような部屋だった。
檻は一つ。その中に、足枷を付けられた奴隷たちが居る。
「けひっ、ひ、ひひひっ」
「女ァ、女ァ!」
「ねぇ貴女、私を買ってくれないかしら? そうすれば天国にイかせてあげるわ」
奴隷たちが鉄格子にしがみつき、こちらに手を伸ばしてくる。
(嫌な光景だ)
もしかしたら、俺もこうなっていたかもしれない。
「お客様。こちらにおります奴隷は皆自分を買った主に暴行を企てた者共です。あまりおすすめは出来ませんが……」
「そうか」
もう一度、こちらに手を伸ばしてくる奴隷たちを見る。
……まあ、俺の目的はロキに頼まれた女の子の保護だけだ。個人的に奴隷を持とうなんて気は一切無い。
この店もハズレかと、元の部屋へ戻ろうとした時──
「…………」
こちらをじっと見つめる。銀色の瞳と目が合った。
「あの奴隷をくれ」




