第2の戦い 「ハゲオのペット 不死鳥」
翌日のことだ。
俺はズノウの研究所に住むことにした。同じ張手の街にあるので出社にも影響がなく、何より金がかからないからだ。
そして俺は、コッペパンを食ったらいつも通りに出版社に向かった。
しかし行く途中、会社も崩壊したとのメールが来て、一週間の間休みにするらしい。
というわけで行き先を変えて自分の壊れた家に向かった。
俺にはペットがいるからだ。あいつなら死なないと思って俺はそのまま昨日は帰ってしまったが、やっぱり不安だったので家に向かった。
その俺のペットとは、不死鳥のフェニックスである。
三人ぐらい乗れそうなその大きな体を持つ、伝説の生き物フェニックス。
フェニックスは俺が幼いころに、というか赤んぼのころに親父がくれたものだ。
俺の記憶ではそうだ。もちろんそれが正しい記憶かどうかわからないが。
家に着いた。
「フェニックスー 生きてるだろ?」
「当たり前だ。 ハゲオ、俺を無視するとはひどいじゃないか」
本当にその通りだ。フェニックスからすれば、置き去りってことだもんな。
「すまん。昨日はお前のことを考える余裕はなかったんだ」
俺は謝った。ここ数年で一番反省した。
「そうかい、まあいいや。ところでハゲオ、強くなったな」
「ああ。グリーンからもらった力だ」
俺はそう言いながら手から炎を出してみせた。
「ハゲオ、戻るぞ」
俺たちが、ズノウ研究所に戻ろうとしたその時だった。
「ギャーーーーーーーーー!」
隣町からだ。
骨が砕け、皮膚が飛ばされ死んでいく住民たちの悲鳴。
しかし、それよりも大きな音が聞こえる。それも不愉快で汚い音だ。
「行くぞ、ハゲオ」
「兄さん、隣町がやばいってニュースでやってたと思ったら、怪人騒ぎみたいだね」
俺の後ろからズノウがやってきた。坊主頭の弟だ。
「ズノウも来るか?」
「もちろん」
ズノウは俺にサムズアップしたら、フェニックスに乗って隣町に急行した。
俺もズノウの前に乗る。
「あれかハゲオ、ズノウ。怪人とやらは」
今度は大声を出す人型の怪人。
「今度はヒト型か。行け!フェニックス」
俺は怪人の前に現れた。周りはさっきの怪人の殺人音波にやられた人々で倒れている。
ひどい。あまりにもその町は残酷だ。あたり一面が血の海だ。
「俺の名はルーロー。お前らか、グライデスを倒した兄弟というのは。」
「ああ、そうさ。ここでなにをしてる?」
「お前らに邪魔されたからな、ここを拠点にするんだ」
怪人ルーローは、張手を指さした。
「ハゲオというのは貴様だな?」
「だったらなんだ」
「殺す!」
殺意のこもった眼を俺に向けたら大声を出すために口を開けて俺に攻撃しようとした。
があああああああ!と大きな轟音が俺の周りの死体を吹き飛ばす。
「兄さん、俺もうやばい!」
ズノウは正直立つのが精一杯って感じだ。
俺はグリーンの力のおかげか、何とかこらえられる。まああと4分が限界といったところか。
「ズノウ、早く逃げろ!」
ズノウは一目散に張り手の街に逃げていった。
「怪人! お前は許さない」
「なんとでも言え!」
ハゲソードを精一杯振り上げる。殺意は俺のほうが上になったともいえるほど、俺は怒り、怪人を切りつける。
「おらぁ! お前の奪った命が、苦しめた命が、どれ程のものか教えてやるう!」
ハゲソードが怪人の体を切り付け火花を飛ばす。
「ぐはあ! ここで死ぬわけにいかない、威力最大だ!」
もうそろそろ俺も限界だ。ここでやられたらやばいと思って怪人の顔を切り付けたと思った。
「無駄だ、ハゲオとやら。俺の顔は強いのだ!」
もうだめだ!と思ったその時、後ろからピンポン玉程度の大きさの氷の粒が怪人の口の中に入った。
『アイスショット!』
ズノウだ。フェニックスに乗って戻ってきた。
「お前、なぜ戻ってきた?」
「兄さんの限界が4分程度は計算していた。もう俺が戻ったって同じだ。ともに死ぬか、倒すかだ」
「一か八か。かけたのか。ズノウらしいや」
「行くぞ、ハゲオ、ズノウ」
フェニックスに再び乗った俺たちは、怪人に一直線。
『アイスショット!』
ズノウのアイスショットは怪人の口の中に氷を詰め込み、音を出せなくした。
そして炎を出した瞬間、俺の炎とフェニックスが共鳴した。フェニックスの心が俺の炎を強くする。
「お前、グリーンと関係あるのか?」
フェニックスに俺は聞いた。
「知らん。グリーンとやらにもあったことはない。とりあえずあいつを倒すぞ」
「ああ」
俺はうなずいて、ハゲソードに炎をためる。
真っ赤で、熱く、正義の心を加えた俺の誇りの炎だ。
『炎の一撃!』
怪人ルーローは俺の炎にやられた。ルーローは最後も気持ちの悪い声を出して燃え尽きた。
「ふう」
俺はため息をついて帰った。ズノウ研究所に。我が家に。
一方そのとき…。
「ルーローもやられたか」
怪人団の王は、怪人を作る幹部をにらんだ。
「申し訳ございません!」
そう幹部が言うとそこでサイレンが鳴り響いた。そして戦闘員の一人が現れた。
「キラーという小怪人が逃げました!」
「なんだって?つかまえろ!」
「奴は空を飛んでもう逃げました!」
怪人団幹部と、一人の戦闘員は、怪人団の王に叱られた。
「絶対に捕獲しろ。わが怪人団の力を別のことに使ってはならない。いいな」
「はい、王様。承知しております」
怪人を作る幹部は、アリの怪人にキラーの捕獲を任せて仕事に戻ったのだった。
次回 第3の戦い「正義の怪人 キラー」