第1の戦い 「禿げた少年 影雄」
この物語は、禿げた少年が戦士になるお話である。
小学生の頃に禿げてしまった男が、大人になった時、戦士になる。
数々の仲間とともに、怪人団をやっつけろ!
超王道バトルアドベンチャー開幕!
あれは2002年の春だった。
「1985年くらいにさあ怪人団の都市伝説が流行りだしたんだ」
「怪人団っていう裏の組織がいる話?」
「もちろん裏の組織なので詳細は分からない」
「へえ。なんか面白い話をしているね」
俺、毛川影雄は3人が都市伝説について話しているところに混ざろうとした。
が、今は理科の実験中。つい手が滑ってしまった。
滑った手で机に落としたものは、試験管。
その中には水酸化ナトリウム水溶液。
「うわっ!」
がたがた揺れる机から試験管の破片が飛ぶ。
そして液体は、俺の頭の上にかかる!
「ぎゃーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!」
クラス全体が大騒ぎだ!
先生がすぐに対応するが、先生も割れた試験管の破片でけがをしてしまう。
その時、俺の頭を一筋の光が切り裂いた。
『諸月流奥義、連星切り!』
俺は、頭をちょっぴり光に切られた。
「一命はとりとめたか」
「ヤイバ、ありがとう」
今、俺の頭を切った光の正体は、俺のクラスメイトで武士の末裔、諸星ヤイバ。
ヤイバは剣の練習を毎日やっている、現代の武士。
「しかし禿げさせてしまった。済まない、影雄」
「は、禿げええええええ!?」
髪の毛が生える部分はすべて切ってしまった為影雄は俺になっていた。
クラスはパニックから笑いに変わった。
「まじめにやばいけど、ぎゃっはっははは」
「おい、これじゃあ影雄じゃなくて ハゲオ!」
俺自身友達も多く、寛容な心の持ち主だったので一緒になって笑っていた。
その授業は、笑いで幕を閉じた。
理科担当の先生は、上に叱られたらしいが、俺は母親に言われたこと以外は気にする事がなかった。
あの世の親父はなんていうかとか、そんなことしか考えてなかった。
それから13年、ハゲオは中学、高校、大学の入試も禿げ頭に負けず合格し、今は出版社で働くただの社会人。
そんな彼の住む平和な張手市の郊外、5人の男たちが1体の怪人と会話していた。
「グライデス、お前の力は炎の力、すべてを焼き尽くせ」
「王様、わかりました。今すぐあの街を火の海に変えて差し上げます」
「やれ!」
火をまとった浮遊するお化けみたいなのが俺の方に来る。
街が、燃え始めていた。
死ぬ。死ぬんだ。俺。
部屋の窓から暴れる怪人の姿がそこにあった。
俺はテレビをつけた。ニュースがやっていた。
もちろん報道の内容は、怪人によって燃え尽きる街。
テレビでも、窓の外でも火の海だ。
まさに八方ふさがりといったところか。
俺は勇気で避難を始めて外に出た。
外には、気を失い倒れる人、泣きわめく赤ちゃん、瓦礫の下敷きになっている人。
色んな人が絶望していた。
しかし俺は負けなかった。絶対に死なない!死にたくない!ましてやこんな炎で!
そんな思いが、神社を通り過ぎたその時、奇跡が起きた。
「私は、神だ」
「あなたは!?」
「この街の神として君臨する、グリーンというものだ」
聞いたことがある。昔、図書館で読んだ。
グリーンは、『この世を荒らす剣士と戦った怒りの戦士』
とあった覚えがある。
「そんな神が俺に何の用ですか?」
「あの怪人と戦え、青年よ。力を授ける」
「あの怪人を倒す、力!」
「やる気に満ちた若いまなざしをしているな」
「俺、やります。沢山の命を救う。やりたいです!」
俺はなぜ、正義感を持ったのかはわからない。が、この時俺は何も考えていなかった。
その時、不思議なことが起こった。
影雄の周りに怪人とは違う炎が十字を描いている。
「その炎は、怪人を焼き払う、伝説の炎だ」
「ありがとうございます! 俺、行ってきます」
「神は、お前に戦士としての称号を与える。若き獅子よ、頼んだぞ!」
俺は一目散に怪人に向かって走った。
そしていよいよ、怪人の前に俺は立った。
「こい。怪人!」
「我はグライデス。焼き殺してやるわ!」
俺は炎をかわした。ちからがみなぎってくるぞ!
「俺の炎をかわした!?」
「やめろグライデス。何のためにこんなことを!」
「王の命令は絶対だ」
「なんだと、王だと、それはなんだ!」
「我ら怪人団は、この町を破壊して拠点とする」
怪人団ってどこかで聞き覚えのある。そうか!
「いよいよ都市伝説の団体が動いてきたというわけか」
「ビンゴ! だがもう遅い。それがなんだ!」
俺はこぶしを突き出した。
「今すぐ止めてやる、命を奪うなら、その野望を止める!」
グライデスは、攻撃態勢に入った。
「うるさい、小癪な!しねえ!」
グライデスは炎ではなく爪で攻撃した。俺の額は3本の傷を負った。
「いてーじゃねーかよ、くそがっ!」
その時、影雄の弟が、陰からひょっこりと出てきた。
「兄さん、これ使って!」
俺の弟、ズノウは天才発明家。発明した武器は自衛隊にも使われている。
そんな弟が剣を俺に贈った。
「これは、銃刀法違反だろ!」
俺は弟に怒った。怪人はそのすきに俺を狙うのでよけながら会話している。
「安心して、俺の武器は特例の許可が国家から出た!」
なるほど。流石だ。それに比べて俺は情けない。
俺の自分への怒りが、力に変わった。
「俺は、お前ら怪人団を倒して、皆を守る。だから、まずはお前だ。グライデス!」
弟からもらった剣で、グライデスを切り裂く。
「うわあっ!」
グライデスから火花が飛び散る。
「おりゃっ!」
ハゲオがグライデスをもう一度切り裂いた。
弱るグライデスは、
「貴様、何者だっ!」
と俺に聞いた。俺は影雄、だが戦士としては自分の名前を出したくなかったのでこう名乗った。
「俺はハゲオ、炎の戦士だ!」
そして俺は、剣に炎をためた。あと、この剣はハゲソードとしよう。
ハゲソードが炎を完全にまとい、俺はグライデスの体を一刀両断。
『炎の一撃!』
グライデスは、この攻撃から逃れられなかった。
炎がやがて消えると、俺はグライデスの死を確認した。
「祝、初勝利!」
ズノウと俺は喜んだ。そして俺たちは研究所で生活し始めた。
このことはマスコミ等を通じて世界中に広まった。
ハゲオは正体を隠して、国からも支援を受けて戦う事になった。
さあ!怪人団をやっつけるぞ!
次回、第2の戦い「ハゲオのペット 不死鳥」