皆既月食
「月を食った」
そう鬼が言った。
指を真っ直ぐと天上に伸ばし、光のかけた灯を差す。
「俺が食ったんだ」
赤々と燃えるような色と、煌々と輝く白い色のコントラストが、何とも言えない不気味さを醸し出す。
こちらを見つめる鬼の目は爛々と輝いていた。
「お前も食ってやろう」
じりじりと鬼がにじり寄ってくる。
鬼のどす黒くて巨大な影が覆いかぶさった。
首を上げれば鋭く光る二つの目。
あぁ、そうか。
鬼は瞳に月を入れたのかーーー。
煌々と光る月が二つ。
ただ静かな殺意が私を照らしている。