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悪くはない取引です

作者: 高菜わさび


「はい、みなさん集まってください」

本日の課題!

『生活環境を整えましょう』

派閥に負けた魔法使いアイラの前には、小さな国の勇者ユキ、寡黙すぎるビーストマスターのビーク、異世界からの来訪者テルの三人が座ってる。

「授業みたい」

「ダンジョン内でこんなことする冒険者ってあんまりいないだろう」

「コクン」

「お言葉ですが、今の我々には早急に解決しなければならないことがあると思いますが」

そういわれると、ビークでなくても黙る。

「それにはまずは健康を保つことだと思います、あらいいんですよ、意見があるならおっしゃっていただいても」

シーン

「ないんですか?ないなら進めますが」

「意見というか、質問ならばあるが、わからんことが多すぎる」

「あっ、それもそうだね」

「まずダンジョンってなんだ?」

「あ~そこから聞いちゃいますか」

「聞いちゃいますよ、命かかってるなら聞かないわけにはいかないでしょう」

「それもそうですね」

「アイラ、どう教えようか」

「どっから見るかでダンジョンの立ち位置って変わりますけど、昔はここを領土としてとれると、他国に攻めこむのがとても楽だということがありました」

「それだったら狙われるわな」

「あら、理解が早いですね、テルさんの、生まれたところは戦争がないと聞いてましたが」

「でも海外、ええっと他の国は戦争とかしてるぜ」

「なるほど、本当にそちらの世界は興味深いですね」

「こっちに来て、一番ビックリしたのは水だな、気軽に飲めないんだもんな」

「どれだけおえらい立場にいたんだよ」

「なんていうの、水を庶民にも飲めるように国ががんばった結果っていうのかな」

「なるほど、いい国だね」

いつもの調子で水をのむと、透明な水でも口の中に泥の味が広がるのである。

そのためにわざわざ火を通して、湯冷めしたものを飲むが、それは腐りやすいときてる。

「それに比べたらこのダンジョンの中ってすげぇな、水が普通に飲めるもんな」

「そうなんだよ、水量はそんなに多いわけではないけど、水は物凄いいいよね」

「いまはダンジョンといえば、各国の扱いは、左遷とおなじですからね、ダンジョンを攻略するまで帰ってくるなよってことです」

「えっ、そうなの」

テルはショックを受けた。

「ここを攻略するのは異世界の勇者の使命じゃなくて?」

「魔王もいないわけではないけども、驚異の魔王が出た場合は、各国で代表者を出すもんだよ、私の場合はしばらくそういうのがないから、故郷の祭りのために任命された感じかな」

「そんなんでいいの?」

「よくないけど、間引かれるよりはいいかなと」

「やめてよ、世知辛い」

「勇者が間引かれるってどうなんだよ」

「世の中なんてそんなもんだよ」

にゃーん

ビークの魔獣(見た目でかい猫)がユキに甘えた。

「俺は正直、俺カッケー的な展開を期待しました」

そしてアッハンウッフンもほしかった。

「一番大きなダンジョンが理由になった戦争は、元々このダンジョン、遺跡は聖地だったんですよ、それでどこの国にも属してなかった、それが後継者問題でもめました」

「そこに天災が来ちゃって、何人死んだかわからないぐらい死んで、さすがに戦争が終わったって感じ」

「その時に色々な魔法や技術が失われて、今のような不便な生活になったわけですよ」

「昔はよかった話とかすごい聞くよ」

「なんかこっちはこっちで面倒くさいもんだな、まあ、俺らは必ず生きて戻るさ」

そう信じよう。

「でさ話は変わるが、さっき作った餃子はちょっと多く作りすぎたんだが、どうする?」

「そうですね、私の魔法で冷凍させてもいいんですけど、いまは余裕があるんで物々交換に出したいところですね」

「何かほしいものがあるのか?」

「ダンジョンについて詳しく調べたいので紙とペン、できるならば手帳とインクのもちがいいペンがほしいです」

「そんなんでいいのか?」

「気軽にいってくれますね」

「これが持ってたりするんだな」

「えっ?なんです?賜ったのものでもあるのですか?」

「違う、違うそうじゃない、こっちに来る前、兄貴から金を渡されてな、これを買って帰る途中だったんだよ」

包装された袋は少しボロボロになっていたる。

「中身はa6サイズの手帳にペンかな、インクのスペアもあるから、結構長く使えるんじゃないか」

父の日に買い物した帰りに、異世界にきてしまった。

「とりあえず元の世界にでも戻ったときな買い直すことはできるから、いまはアイラが持っていた方がいいと思う」

「大切に使います」

「今すぐにほしいものがないなら、とりあえず餃子を売りに出して、いいものと取り替えようぜ、ビーク、餃子焼くぞ、祭りじゃ!」

その日ダンジョンの浅い層のとある区画には焼きたて餃子の匂いが広がったという。

「えっ、何か売ってるの?」

「へい、らっしゃい、焼きたてだよ」

ダンジョン内だと貨幣価値がないようなもんなんで、物と交換できるならその方がいい。

「じゃあ、少しもらえるかな、ラナの粉なら多目に持ってるし」

「ラナの粉!」

ユキは飛び付いた。

「ラナの粉でいいの?」

ラナの粉、殺菌作用がある薬草ラナを刻んで乾燥させたもの、胃腸薬。

「にゃーん」

ビークの猫魔獣がクンクン匂いをかいでいた、本物のようだ。

「悪くはない取引です」

むしろ餃子で手にはいるなら申し分ない。

餃子はハイペースで売れていき、無事完売になった。

「またなんか作ってよ」

そういった言葉でテルは照れていた。

「次も美味しいもの作るぜ」

そんなにやけた時だった。



「誰か手を貸してくれ!」

叫び声が聞こえた。

今日も誰かがダンジョンの奥にいくことにしたらしい。

「助かりますか?」

「無理だ」

冒険者は徐々に息も小さくなりそのまま亡くなった。

「あせる気持ちはわかるけど、そういうのが一番死に近い考え方なんだよ」

葬送の手伝いから帰ってきた後にユキはそうつぶやいた。

するとアイリはそんな空気に立ち向かうように。

「必ず生き残りましょうね」といった。

でも誰もその言葉には返事をしなかった。


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