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自動ドアを抜けると、そこは森の中でした

 今、ベルトの力が君たちの手に・・・・・・


 装着!

 

 「チェンジ!」「ゴー!」


 カバーを開いてチェンジ!

 コンビネーションボタンでパワーリンクだ!


 「行くぞ!」「おう!」


 レバーを押して、決めろ!トドメの大技!


 「「おりゃああああ!」


 『チェンジ&アタック!ドライバックラー!』


 そして・・・・・・

 銃から剣に、変形!

 さらにドライバックラーとパワーリンク!


 『ダブルモード変形!ツインブレイザー!』


 今、関連商品を買うと、限定プロトタイププレートをプレゼント!


 お店へ急げ!


-----------------------------------------------------------


 「よっ!ケンさん。やっぱりプロトプレート目当て?」

 「おう、まあな。そういうタクちゃんもだろ?そんなに大荷物抱えて」

 「いやあ、ケンさんだって同じじゃないですか」


 五月のゴールデンウィーク明け、火曜日の午後。駅前の大型電気店の一角、この辺りでは最大規模のおもちゃコーナー内で二人の男子高校生が出会った。


 「タクちゃん」と呼ばれた、ブレザーを着崩した方、ノリの軽そうな男子高校生が後輩、高校一年の森島拓郎。


 「ケンさん」と呼ばれた、学ランをしっかりと着こなしている方、真面目そうな男子高校生が先輩、高校二年の遠野健一。


 二人は同じ中学校の出身だった。性格も好みも、所属する部活も違ったが、共通の『趣味』の仲間を通じて知り合い、すぐに意気投合。「ケンさん」「タクちゃん」とあだ名で呼び合う仲になった。

 その後二人は同一市内の別々の高校に進学したが、今もこうやって駅の近くで会ったりしているのだ。


 「あれ?でもケンさん今回のベルトはごちゃごちゃしていてあんまり好きじゃないって言ってなかった?」

 「うん、好きじゃない。いや嫌いでもないんだけど」

 「じゃあなんでまた買っちゃったの?しかもフルセットで?」

 

 二人の手には、学生鞄と補助バッグ、そして電気店の店名が書かれた大きな白いビニール袋。中身は大きな箱のようだ。はっきりとは見えないが、うっすらと『ドライバックラー&ツインブレイザーセット』の文字が見える。


 「いや、そりゃあこの前のプロトの過去編見たらねえ。買わざるえないでしょう」

 「プロトのためにここまでするかね、この人は」

 「あの流れるようなレバー操作、スイッチ操作に惚れた」

 「それ、半年前は邪道だって言ってませんでした?」

 「ごちゃごちゃを、ごちゃごちゃ使っているからいかんのだ。スマートに使わないと」

 「何言ってんのこの人?」

 「あれ、タクちゃんわからない?」

 「わかんねーよ!」 


 ・・・・・・知らない人には、二人の会話の意味がさっぱり分からないかもしれない。

 二人が話しているのは、毎週日曜日の朝に放送されている特撮変身ヒーロー番組についてだった。

 タクとケンの共通の趣味――それは『特撮変身ヒーロー番組の視聴』。

 わかりやすく言うと、タクとケンは特撮ヒーロー番組のマニア。『特撮オタク』に分類される人物である。


 タクとケンの二人がわざわざ学校帰りにおもちゃコーナーで買ったのは、日曜の朝に放送されている、子供向け特撮変身ヒーロー番組の変身ベルト『ドライバックラー』とその武器『ツインブレイザー』のおもちゃだった。


 前々からインターネット上で情報は流れていたらしいが、この前の日曜日の放送時のCMで、関連商品購入時におもちゃのギミックと連動する限定アイテム『プロトタイププレート』が店頭でもらえるキャンペーンが告知されていた。二人はそのプロトタイププレート欲しさに、学校帰りにキャンペーン対象商品――『トライバックラー&ツインブレイザーセット』を購入。ついでにお目当てのプロトタイププレートも入手したのである。


 「そういえばタクちゃん、なんで今更同じもの買っているんだい?そろそろパープルのパワーアップが出るからそのためにお金貯めてるって言ってたじゃないか?」

 「あー、実は幼稚園のいとこに、親がベルトとブレイザー勝手にあげちゃってて」

 「ひどいな。今時そんなことあるんだ」


 お目当ての物を買ったタクとケンの二人は店を出る。


 「うちにもいろいろあるんですよー。まあ、今日のための資金は親から出してもらったんで大丈夫です」


 自動ドアを抜けて、駅前の広場に続く歩道に出ようとする。

 その時、二人は前を見ていたはずだった。

 だが、二人が外に出ようとしたほんの一瞬、二人は正面から目をそらした。

 だから二人は、目の前の景色が夕方の駅前の街並みが一瞬で変わる瞬間を見逃してしまった。


 真夜中の森の中に変わる、その瞬間を。


 そして二人は、自動ドアを通り抜けてしまった。


 「なあ、タクちゃん」

 「なんだい、ケンさん」

 「ここ、どこだ?」

 「さあ?俺が知るわけないじゃないですか」


 駅前から、真夜中の森の中に迷い込んでしまった二人の特撮オタクの男子高校生。

 ここから、彼らの二人旅が始まる。

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