第八話 不機嫌な都築
「はぁああ?! 出口をぶっ壊しただぁ?!」
ガーナはアデルから聞いたことを、繰り返した。
《遺跡》の入り口前で。
会ってから、少し遺跡から遠いこともあって。
アデルが、歩きながら説明していた。
出口の破壊。
その言葉に、ガーナが顔を青ざめた。
「どうすんのさ! あそこしかないのに!」
「それは、おれも言ったよ」
「アデル~~ぅ♡」
抱き着こうとするガーナを、ひらりと交わすアデル。
「遺跡に出入り口とはあんじゃないのか??」
都築も言う。
「じゃないと、ほかの部族や、侵略者から守れないだろうが」
常識的に考えても、あるはずだと。
ガーナも、都築に詰め寄る。
ズカズカ!
「男! あんた、名前は?!」
「何回、俺は名前言わなきゃなんねェんだよ」
都築は面倒くさいといった表情で、眉間にしわを寄せた。
「アデルに聞けよ」
そう言われたアデルは。
「自分で言いなさい。いい大人のくせに。礼儀がないのね」
「‼ あ゛? っち。都築マサルだよ! 都築マサル‼」
吐き捨てるように、都築はガーナに言う。
「ツヅキーー……ツヅキね。うん、うんうん!」
ガーナは満面の笑みで、頷く。
それに都築も、嫌な予感がした。
ミウは、定かではないが。
顔の笑顔が引きつっている。
彼女も、嫌な予感をしているようだった。
「あたしたちの冒険隊の隊員になりなさい!」
そこは「嫌なこった!」と返したいのも山々だが。
遺跡に行かないことには、何もならない。
単身で、行ったとしても、確実に死ぬ。
「分ぁ~~たよ。っち」
舌打ちをする都築に、
「で。あんたは、どんな能力者なの?? 治癒? 攻撃?? あ! 魔術師とか?? それなら、攻略も楽出来そうだな~~♡」
ガーナは両手を抱きしめ、身体をくねらせた。
「何も、出来ないかんな?? 俺ぁ、ここの住民じゃないんでね」
「え? アデルちゃん、どういうこと??」
「あいつが言うには、異星人なんだよ。そこのポンコツの魔術師に召還されたとか、なんとか言っていたわ」
アデルがミウに指さし、そこでガーナも、ミウを見た。
「あ。あたし、あんたのこと知ってる!」
「っげ!」
露骨にミウも嫌そうな顔をした。
そして、都築の背中に隠れた。
こそこそ、と。
「ま、いいや! あんたはポンコツでも魔術師の貴族。役に立って貰うわ!」
貴族。
その言葉に、都築もミウを見下ろした。
「貴族なのにポンコツなの? お前wwwww」
都築の顔が笑顔になった。
憮然とした無表情面が。
そのギャップに。
ガーナにアデル。
ミウも。
顔を紅潮させた。
そんな三人に、
「あんだよ。ごら」
また都築の顔が、仏頂面に戻ってしまう。
「「「っち」」」
舌打ちされたことに、都築も口をへの字にさせた。
「これだから、女は分かんないだよ!」
ぶつぶつ、もごもごとする都築が、遺跡に触れた瞬間。
カカカカカ!
「?! なんだ、こりゃあぁっっ‼」
--指紋照合完了シマシタ。
--音声照合完了シマシタ。
--マサル・ツヅキ本人デス。
「はァ?!」