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ツヅキくんはかえりたい  作者: ちさここはる
                             第二章 
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第七十三話 愛が愛した世界の断片

「それにしても」


 出口が息を、小さく漏らした。

「ああ! おせェんじゃねェのかァ~~」

 めごも同様に。

「やっぱり、あの野郎を送り出すんじゃなくて。出口、お前が行きゃあよっかたんじゃねェのかァ??」

 少しばかし。

 ご立腹な様子で、

「そうすりゃあ! よかったんだよ!」

 吐き捨てた。


「姉さん。いまさら、その話しはなしだろう?」


「いまさらも、何も」


 入江姉弟の言い合いに。

「煩いわ。あべこべ!」

 アデルがキツイ口調で制止する。

「おれの旦那は、必ずーー戻ってくるわ」

 少しほくそくむアデル。


 はい!


「何? ガーナ」


 挙手したガーナに、アデルが声をかけた。

 ガーナの表情は酷く揺れている。

 それは。

 アデルが撒いたーー《光苔》により照らされた。

 その苔の成長は著しく。


 ここーー《》内部。


 四人は敵に囲まれている状況だ。

 その中。

 入江姉弟が騒ぎ喚いているわけ。

 

「あのさ? あのね?? なんで、あの人たち言い合ってんだ?」


「さぁ」

「ここから。逃げないといけないじゃない?」

「ええ。そうね」

「! でしょう?!」


 ガーナは目を輝かせた。


「おい。ガーナちゃん、こっから出るのはよさないと」

 出口の顔を手で押しのけて、愛がガーナに言う。

 少し、はにかみながら。

「生きるか死ぬかの瀬戸際なんだよ」

「……♥ メゴぉ♥」

「ね?」

 愛は顔を傾げながら、ガーナを見下ろした。

 手はガーナの肩にやりながら。

「だから。あのオタンコナスを。ここで、待たないと」


 愛の額に、汗が滲んでいた。


 ここで悠長に話せるのは。

 愛の魔法陣のおかげだった。

 非戦闘員の愛。


 体力はーーない。


 気力も、持ち合わせていない。


(だるい。面倒くさい)


 胸中。

 恨みつらみだけが、木霊していた。


『愛!』


 瞑った瞼の裏に浮かぶ。

 彼の笑顔を思い出した。

 たったそれだけで。


 胸が熱く、恋い焦がれる。


「アタシは! こんな! 分かんない場所でェ!」


 さらに力を、解放していく。


「死ねないんだァ!」

 

「おい。燃料パンクするぞ。姉さん」

 さすがに出口が声をかけた。

「うっさい! 愚弟が!」

「まったく。聞き分けの姉だね」

「そう言うお前も! どっこいどっこいなんじゃねェのォ?!」


 ガーナと、アデルの罠は解いていた。

 それから。

 壁の隙間に、四人は籠城している状態だ。

 しかし、あくまでも。

 そこは壁であって。

 身を隠せる場所ではない。


 目の前には。


 強靭でいて、筋肉美しい巨人たちが、集まっている。


「おい! ガーナ!」


「♥ はい♥」


 愛がガーナに声をかけた。

 それに、ガーナも上擦った声を漏らす。


「宝の在り処ってのはどこだ‼」


 

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