第七十一話 父親たちの停留所
「私の。……私の息子は、馬鹿な選択肢はしない」
《御霊特急》の中。
烈は、そう言い切った。
すぅーー……。
「そりゃあ。親なら、子供を信じたい」
っぷ、はァ~~……。
「そいつは。俺にも、分かるさ」
保が煙草を咥え直し、
「でも。そいつぁ、お前のーー父親の理想ってやつだろォお? なァ。烈坊や?」
灰色の煙を吐き、烈に吹きかけた。
眉をひそめ、小さく席をする烈。
ごほ。
ごほほ。
「ーーその言い方。止めて下さい」
ごほほ。
ごほ。
「呼んでいいのは。奥さんだけだ」
「純愛だねェ。胸糞が悪ィったらねェなァ」
そう言う保に。
「江頭さんだってー純愛じゃないですかー平子さんとー」
「……はい、次! この話しなし! なしったら、なし!」
居所が悪くなったのか、保が手を叩いた。
「っふ。ぅわー~~きも」
そんな彼を横目に、凛がほくそくんだ。
「あァ゛んン゛ん?!」
「なに? やんの?? あァ゛‼」
再熱しそうになる諍いに、
「もう。本当に! いい加減にしてよ!」
苛立ったように烈が立ち上がった。
「私の息子を! 私の息子はどこに居るんだァああッッ‼」
っき、ィいい!
「!? ぅおあァあ??」
キィッッ‼‼
「っちょ! ぅおあああ‼」
突然。
急ブレーキがかかってしまい。
立ち上がっていた烈の身体のバランスも崩れて、
「ったく。手間のかかる坊やだ」
倒れそうになった彼に、保が腕を伸ばした。
支えられた格好の烈。
「--……すいませんーありがとう、ございます。江頭、さん」
安堵に息を吐き、そのまま、座席に腰を降ろされた。
「いいさ。お前も俺の可愛い後輩の一人だかんな」
「ノンケに言い寄るとかwwww お袋にチクったろwwww」
「!? おい! ちょっと待って? ね? 凛ちゃん?? ちょっと、一回、お父さんと話し合おうか? まず。そこで、一々、反応すんな? で。言い寄るってのはちとお角違いだよな? てか。平子に言うな?? ……頼むからァ~~ぅうう゛」
神妙な表情で保が顔を抑え、目を泳がせた。
少し汗も浮かばせる様子に。
「本当にあんたってば、弄りやすいったらねェわwwww」
喜々として凛が兎の被り物を被った。
彼が恐怖する江頭平子は。
《嫉妬の平子》
最も厄介なーー女性であり。
最も、どんな人間よりも。
半身でもある彼、江頭保を愛してやまない、女性である。
「っこ、子供が大人を引っ掻き回すんじゃない! 悪い子だぜ!」
ギシ!
そう言い保は、烈の横に腰を据えた。
「でも。子供を引っ掻き回すのは」
ぐい!
「ぅわ!?」
烈の肩に腕を回し、耳を口元につけさせた。
「いつも。大人なんだよねwwww」
「! --……はい。そう、大人が、……子供を引っ掻き回すんですよねー」
「そうそうwwww だから。大人がよ?」
がっきん。
がっきん!
保が肩を鳴らし、立ち上がった。
「収拾すんのよ。物語をさwwww」
すぅ。
っふ、ぅうう~~。
「江頭さん」
「ん? 何??」
「私にも煙草下さい」
「いいよ。ミントだけどいい?」
「はい」
トントン!
「あいよ」
カチ!
「優等生キャラ、終わりってか? 烈?」
「私は優等生じゃないですよー劣等生だ」
「烈。手前の息子はーー自身の産まれ故郷に戻らせられたんだ」
凛の言葉に、烈の眉間にしわを寄せた。
「--……一体。どこのどいつに??」
低い烈の言葉に、
「手前との接点が全くない。偉大な魔導士の娘のポンコツにだよ」
凛が説明すると。
もっと眉間にしわを寄せ。
「何? その異世界、転生のラノベみたいな展開」
苦笑交じり聞き返した。




