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ツヅキくんはかえりたい  作者: ちさここはる
                             第二章 
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第七十話 都築マサル退場前、後。

「マサル、大丈夫かしら」


 荒い息を吐きながら、彼を心配するのはアデル。

「大丈夫に決まってんじゃあねェかよ」

 そんな彼女に、牙をむけるのはめごだ。

「ああ! あの役立たずなら、きっと!」


 バシュ!


「大丈夫だっつ~~のォおお‼」


 バ


 シ


 ュ


 ッ


 ッ


 ‼


 戦えるのは愛と出口の、入江姉弟だけになっている。

 アデルにガーナ。

 彼女たちは罠にかかり閉じ込められてしまっていた。

 矢を放った出口の顔にも、疲労の色を滲ませている。

 マサルを《ジョンズ》から出したのは、そう案を出したの愛。


『どうせさーこいつ邪魔じゃん? wwwwなら、出しておいた方が後々、運が良けりゃあ助けを呼んでくるんじゃねェか?? wwwwなんてな。死なれるよか、よっぽどいいよ』


 愛も、苦笑交じりにギャグを交えつつ。

 今、このグループでのマサルの立ち位置は曖昧だ。

 

 剣⇒× 元々、持ってない。


 盾⇒× 元々、持ってない。


 魔法⇒× 元々、使えない。


 治癒⇒× 元々、使えない。


 人脈⇒◎ なんか、ある。


 この人脈に、愛は期待した。

 ただ。彼を出せるのは。

 あくまでもーーここからである。

 そっからの行動も、運も。


 マサル自身のもので、愛は、それにもかけていた。

 ただ。

 その案には。


『いや! そりゃあダメだ! ダメだ! ダメったら! ダメだ! 姉さん!』


 出口は声を荒げて、愛に反対した。

 頑固にも、愛の豊満な胸に手を上げ、後ろに下げていった。

 

 ドンッ。


 ドドンッッ!


『はァ!? あんだよ! ざけんじゃねェよォ‼』

 

 ただ。

 この姉弟の喧嘩会場には。


『……--あの。俺、いるんだけど?』


 邪魔だの、と言われてしまったマサルがまだいたわけで。

 少し。

 涙目だった。


 この時点では。

 ガーナは罠にかかっていて、アデルと出口の攻防戦。

 愛はマサルの前に構えていた。

 マサルは、その後ろから見守っていたに過ぎず。


『邪魔』という言葉に、ぐぅの音も出すことは出来なかった。


『その邪魔で出したマサルが出された瞬間ッ! 喰われたらどうすんだよ! あ゛ァ゛‼』

『それぐれェは! それぐれェでッッ! 自分でなんとかしろってんだよォ゛! 馬鹿野郎‼』


 喧嘩は胸ぐらを掴みかかる展開に、発展してしまった。


『姉弟喧嘩をやる暇はあるなら! 手を貸しなさい!』

 あまりに酷いことに、アデルも声を荒げてしまう。

 

『『もう少し待てってんだよッッッッ‼‼』』


 声を合わせて吠える二人に。


 ブチ!


『待てないのよッッッッ‼』


 さすがのアデルもキレた。

 その剣幕に、萎縮した二人。


 そこに、ショックをうけていたマサルが、復活するのだった。


『お、俺。助けを……呼んで来るよ!』

『っば! 馬鹿か? お前は馬鹿なのか?? いや、元々、馬鹿だが、ちょっと待ーー』

『俺ね。出口サン、決めたんですよ』


 真っ直ぐにマサルは出口の顔を見上げて、見据えた。

 そして。


 ビ!


 親指を立てて、にこやかに。


『だから。笑って送り出してよ』


『っつ! ったく、よォおお‼』

 弓を肩に担ぎ、愛の身体を弾くと。

 出口はマサルを抱きかかえた。

いっちょ前にいいやがって! 戻って来なかったら承知しねェぞ! マサル‼』

『っく、る゛じぃ゛~~』

『あ、っと。わりィな』


 自己解決したような出口に、

『とっとっと。出し捨てようぜ!』

 愛が口端をつり上げた。


 そして。

 《遺跡》から出口を出したのは、魔力も干からびていたアデルであり。

 転送魔術が不完全となってしまう。

 そのことは。

 本人含めて、気づいていない。


「あいつは馬鹿なんだ。誰も放っておけなくなるんだぜ! 俺含めてな。それがあいつにとって、ここにいるメンバーにゃないwwww 才能ってやつだよ!」


 彼が頭を打って。

 緊迫した状況を、まるっきり忘れていることも。

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