第六十九話 契約のミウ
「会いたかったよぉ~~う~~マサルぅ~~!」
抱き着こうとするミウに、
「ふん!」
マサルは身体を横にさせ、そうさせなかった。
「ぎゃん!」
哀れにも、ミウは石畳に顔を直撃させてしまう。
顔面からのダイブだったからだ。
「っひ、ヒドイじゃないかぁ~~マサル~~ぅ」
「キモイんだよ。お前、ねっとりしてて!」
「ヒドイ‼」
腕を組むマサルから、黒く漏れていた靄も治まっていた。
それに。
マーニーが安堵のため息を漏らした。
「ん? あれ? おい、マーニー!?」
「!? っは、はい?!」
ずかずかと、マサルはマーニーに近づいた。
ドキ!
「どっか怪我でもしたのか?? え、っと??」
ぺたぺた、とマサルはマーニーの身体に触れていく。
足に腰に、手が届く箇所をしっかりと。
「っは♡ へぃきよ♡」
震える声のマーニーに、マサルは首を横にさせた。
「なら。いいけどな」
「ん♡」
「マサル! ちょっと、ちょっと! マサル~~?!」
その雰囲気にミウが、声を荒げた。
「一体。どうやってこーー」
「お前の親父に召喚? ってのをされたんだよ! ガーナやアデルたちと《迷宮》にいて、て……ぁ゛……ああ! そそそそ、そうなんだよ! 俺、俺たち!」
急に顔を蒼白にさせるマサルに、ミウが聞いた。
「え? ひょっとして……壊滅した? あいつら、死んだ??」
にま、と笑った顔をしたミウの胸元にマサルは腕を伸ばし、掴むと、顔を力強く寄せた。
そのため、ミウの膝が地面につき、座らせられてしまう。
「死んでなんか、ないッッ‼ 勝手に、勝手に……ぅ゛」
頬が一気に紅潮し、マサルの垂れた目じりから、大粒の涙が零れ落ちた。
「ぁ」
それにミウの喉が鳴った。
ごくーー……。
狼狽えてしまい、右往左往。
助けが欲しいのか、マーニーを見上げた。
彼女も、またマサル同様に頬が真っ赤に紅潮していた。
「お前が悪いよ。ミウ嬢」
(分かってるよ! どうにか収めるの手伝えよッッ!)
パクパク、と口を動かし。
マーニーの脳に直接メッセージを送る。
目を細めマーニーは、
「馬鹿」
冷淡に吐き捨てた。
ぐぬぬぬ!
「ここを抜けて。もとの《迷宮》に戻りたいの。お姉さまも、いるはずだわ」
「? メイレーがいて、このザマだったんだ~~」
食いつくようにいうミウに。
「メスが」
杖をミウの額に当てた。
「殺すぞ」
「へぇ? 出来るかなぁ~~??」
殺伐とする空気に。
マサルが声を絞りだした。
「いい加減にしろよッッ! ミウッッ!」
「っま、マサ、ル……」
「こんなところに俺はいられないんだ! また、お前の親父に召喚されてみろ! 手遅れになっちまう!」
力強く寄せていたミウの身体に、マサルが抱きかかえた。
そして。
肩に顔を埋めた。
「っま、マサル~~ぅ」
「頼むよ。ポンコツ!」
「あ゛~~ポンコツって……」
引きつった笑いをするミウ。
「いいけど。対価はあるのかい? 代償があれば高度の魔術を使えるよ」
「……お前が望むものを、なんだってやるよ!」
ミウの肩口でマサルが声高らかに叫んだ。
さすがのマーニーが、口を開いた。
「っちょ! それはあまりにーー」
「いいよ~~僕と契約しよう。ま。最初から、いままでだって。君は僕の使い魔なんだけどね~~」
満面の笑顔のミウを、マーニーは身体を激しく震わせ。
目を細め、歯を噛み締め。
睨んでいた。




