第六十八話 再会の迷宮
「はァ?! はァー~~ッッ?!」
突然の部屋の訪問客に、ミウが大きく声を上げた。
それに慌ててマーニーが、
「口閉じなさい!」
ミウの口を杖で閉じさせた。
「んう゛!」
(手前! 口に魔術を使ってんじゃねェし!)
指の人差し指を突き立てるミウ。
それに、マーニーが続ける。
「いいたいことは分かってるし。聞きたいだろうってことも分かっているわ」
胸元には気絶しているマサルがいた。
「んぅ゛!」
(ままま、マサルー~~♡)
腕を伸ばし奪おうとするミウから、ひらりと身体を交わし。
「いいから。安全な場所に案内して頂戴!」
「んぅ゛!」
(この女ぁ~~大っっっっ嫌い‼)
目を細めながら、口先を指でさす。
魔術を解けとばかりに。
「安全な場所についたら解くよ。ぎゃんぎゃん、いい合うのは好きじゃないから」
つれ、っというマーニーに、ミウは強い足取りで近寄り、手のひらを広げ《魔術書》を出した。
ページが勢いよくめくれ上がり。
破れ、三人の周りを飛び出した。
徐々に、速度も上がり。
高速となると。
魔法陣が、二重、三重と、四重に浮き上がり。
視界の光景が移り変わるのだった。
着いた先は。
《ホロスカ遺跡》なる、マサルが初めて体験し、未攻略となった《迷宮》だ。
「どうして。よりにもよって、こんな場所に?」
「ここはさ。偉大な魔術師ダンブアは来辛い場所なんだよ。あ! 喋れる!」
「……そう」と呟くと腰が抜けたかのように、その石畳みの上に腰を下ろしてしまう。
慌てて、ミウは杖でマサルを腕から抜き取り浮かせた。
「倒れるなら、一人で倒れなよね」
ミウはそう吐き捨て、マサルを抱き締めた。
「ねー♡ 会いたかったよー~~♡ マサル~~♡♡」
されるがままのマサルの異変に。
ここでようやくミウも気づいた。
「?? ……マサル、この靄はーー」
マサルの身体から溢れる靄に、ミウも驚きを隠せない。
「ああ。そうなんだ、なにかお前は知っているかしら?」
「いや。でも、少なからず……マサルは」
「みなまでいう必要はないわ」
マサルを見守る、二人の女性。
声に言わなくても。
確認をしなくても。
いいたい言葉は、いわなくてもいい。
飲み込めば済む話しだ。
「ん。ぅん……?? っこ、ここはーー」
「「マサル‼」」
目を覚ましたマサルの目には、広がる石畳み。
見覚えがある。
そして。
ミウの顔を確認すると。
「‼ こーんーのー~~ポーンーコーツー~~ッッ‼」
マーニーの腕から這い出た。
「あ」
ずかずかと、ミウのもとに向かうマサルの後ろ姿に。
「--……ッッ!」
唇を噛み締めた。
ここでようやく、マーニーが自身の気持ちに気づいた。
カ。
カカカカカカカカカーーッッ‼
「っはう! ぅうう~~‼」
両手で顔を覆い隠すマーニーを、マサルは見返すことはなかった。




