第六十五話 マサルとマーニーの逃亡
「都築!? 都築っっ?!」
それは一瞬のことだった。
トイレに行きたいというマサルを案内し、目を離した隙をついて。
マサルは、マーニーと一緒に逃亡を図った。
「ああ! 都築! 都築ッッ‼」
慌てるグレダラスの悲鳴に、
「悪ィな。グレダラス!」
「マサルー~~!」
「走れ! マーニー‼」
「もうー~~‼」
マサルは振り返ることをせずに、マーニーの手を掴んで突き進んだ。
しかし。
案の定のこと。
「っこ、ここは……一体、どこ、でしょうかね?」
「もうー~~僕が知るわけないじゃないかー~~!」
迷子になってしまう。
ボゾロイ家の屋敷は鉄壁の要塞でもある。
魔術師ダンブアには敵が多い。
そのための【護り】だ。
「普通は! 普通はだよ?! もっと計画性があってからの脱走なんだよ!?」
「う゛」
「マサルみたいな無計画だと、みんな、死んじゃうよ‼」
「ぅ、うう゛ぅ゛……」
マサルは左右を確認するも、どうにもならない。
そして、助けてくれる仲間もいない。
--いない?
ここで、マサルは屋敷の中の唯一の仲間を思い出した。
「ポンコツ……ポンコツ! ポンコツ!?」
「--ああ」
「ポンコツ!」
「しつこい。いいたいことは分かるよ。君のね」
「ポンコツ!」
「しつこい!」
ミウだ。
この屋敷の令嬢でもあるミウの存在を思い出した。
ただ。
どこにいるのかが分からない。
「なぁ。マーニー~~」
「……はァ。分かったよ、やってみるよ」
「! マーニー‼」
ぎゅうう!
「ひぇ?!」
むぎゅゆぅ~~!
「ふぁわわわ! っへ」
「さ。いっちょーー」
「変態ぃいい‼」
「え゛?」
顔の前にマーニーの拳が振りかざされていた。
そして。
「----ッッ‼??」
マサルはノックダウンしてしまう。
「! あぁああ、ままま、マサル?!」
落着きを取り戻したときには、すでに、遅かった。
◆
--厄介ナコトニナッタナ。オ前ノセイデダ。ミュウ。
--魔術師ダンブア、デスカ。
ミュウとダカタが、状況を見守っていた。
いや。
見守るというよりも監視に近い。
二人は、この屋敷に入ることが出来なかった。
それだけ、ダンブアの魔力が強いことが確かで。
無理に解くことも、ままならない。
だから、ダカタが【厄介】だと息巻いたわけだ。
一方のミュウはといえば。
(--コレデ少シハ、時間ニ余裕ガ出来マスネ)
一歩、冷静に状況を伺っていた。
そんな彼女の様子に。
--ミュウ。オ前モツマラナイダロウ?
ダカタが聞いた。
それに、ミュウも合わせるように。
--ソウデスネ。ダカタ。
感情を押し殺しながら告げた。
内心は。
二人の逃亡劇に、喜々として息巻いていたりした。
そこに。
--はい。ミュウお嬢さん?
(--!? コノ声ハ??)
出口が語り掛けてきた。
ミュウは驚きを隠せなかった。
慌ててダカタを伺う。
--ナニカ、声ガ聞コエマセンカ。ダカタ。
--イヤ。ドウカシタノカイ? ミュウ。
--イエ。気ノセイノヨウデス。
安堵の息を吐きミュウは、
(--ナニガ望ミデスカ? 貴方ハ)
キツイ口調で、出口に聞いた。
それに、出口もいい返した。
--俺? 俺の望みはさ……。




