第六十話 手繰るメモリー
「まぢ。ここは、どこなんだよ」
マサルは木に身体を預けながら、深くため息を漏らした。
「なんだって。俺がこんな目にあってんだよ……」
眉間にしわを寄せ、忌々しい口調でブツブツと呟く。
「ぇっと。どっかになんかないもんかな?」
辺りを見渡すマサル。
何もない。
都合よく上手くいかないことに。
(だよな)
舌打ちをし、
(……--出口サン、愛も。一体、どこに行った??)
崖を見上げた。
◆
「ここはね、遥か昔に巨人族が巣くっていたとされる《喰空腹の迷宮》だよー~~♥」
喜々として鼻息の荒いガーナ。
出口と愛は煙草をふかし、アデルは地図を見ていた。
そして。
マサルはといえば。
「昔、巣くっていたのはいつ頃の話しなんだ? どこに行ったんだよ?」
ガーナに情報を求めた。
それに。
「んなのどうだっていー~~じゃないかぁ♥ 目の前の《遺跡》=お宝=食費♥」
目を爛々と身体をくねらせる。
「勘弁しろよ」
ガリガリ! と頭を掻くと指先の締めつけに気がついた。
あのゲー・チー・ウーから貰った指輪ーー《蒼き英雄の咆哮》の宝石が鈍く光っている。
嵌められたあの日から、決して抜けない指輪。
--単なる呪いだ。お父さん。
次いで娘のロバの言葉が、頭に遮った。
(呪い、か)
口をへの字にさせるマサルに。
「行っくよぉ~~う♥」
ガーナが洞窟の中から腕を振った。
「!? あ、おい!」
いつの間にか、全員が行ってしまっていたことに。
マサルも、慌てて走った。
--ヨウコソ。贄ヨ。
「? え?? 誰だよ」
振り返ると、洞窟の入り口が壁になっていた。
「!? おい‼ 冗談‼」
ドン!
ドドン!
壁を叩くマサルに、
「いいから! こいってばぁ~~‼」
平然としたガーナが声をかけた。
どこか半笑いに。
「おい! どうゆうことだよ‼ ガーナッッ!」
「どうもこうもないよ。ここは喰人種である巨人の遺跡よ。入ってくる食料を逃がさないようにするための知恵なんだよ。あれは」
「っしょ、食料?! 分かってて来たってのか?! お前は‼」
「いい加減に五月蠅ェぞ。マサル。口閉じとけ」
「酸素も少なくなるわ。窒息まではいなくても、意識が飛んじまうぞォ」
入江姉弟がマサルに言い聞かせるように告げた。
納得のいかないマサルは、
「柔軟に、従うんですね。出口サンは」
「ま。こういうのも初めてじゃないんでね」
「あれも、大変だったなァ~~出口ィ~~??」
よく分からない身の上話しに。
「もういいです」
ついには考えるのを諦めたマサル。
「で。アデルちゃん。どう? 地図の様子は」
「大丈夫。順調よ」
地図の中の絵が動いていた。
絵巻物や、漫画のように。
映画のように自動的に流れるように。
「すげ。何それ」
「《暴探者》の必須 道具よ」
「アデルは、そんなことまで出来るんだな」
「《呪術者》の初期的道具なのよ」
「そっか」
◆
「違う! そこじゃない! 知りたいのはその先だッ!」
思い出しながらマサルは、そう頭を抱えた。
ジタバタ、と暴れることは構わない。
「その先に。なんだっけか??」
指先の指輪を見据え、小さくそう漏らすマサル。
一刻も早く、この状況から抜け出したかった。




