表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツヅキくんはかえりたい  作者: ちさここはる
                            プロローグ
6/85

第六話 デコピン

 堀から上がったびしょ濡れの都築を。

 魔術で乾燥させたミウに、彼は息を吐く。


「ふう。ポンコツも役に立つんだな」


 一応、感謝の言葉のようだったが。

「あのさ~~もう、ちょっとさ~~何か、言い方、間違ってないかな~~」

 遠回しにミウも、言い返すも。


「あ゛? 元はと言やぁ~~ポンコツが、ポンコツのせいで、俺はここに居んだろうが!」


 圧倒的な都築に、押されてしまい。

 ぐぅの音も出ず、唇を噛み締めた。

「俺はサウナに入ろうとしてたんだよ!」

「何を内輪もめしているの? あんまり、騒がないでちょうだい」

 アデルが、二人を制止する。


 ここはーー《ホロスカジョンズ》なる、都築が初めて経験することとなる《ディ》だ。


(こんなの、映画や小説の世界まんまじゃないか)

 都築は辺りを見渡し、警戒するかのように目を細める。

 それに、アデルは。

「そんなに警戒しても、お前に何が出来ると言うの? ツヅキ」

 冷淡に聞く。

 確かに、都築は何も出来ない異星人でしかない。

 日本から、出たこともない。

 いや、修学旅行にオーストラリアには行った。

 かれこれ、九年前の話し。


 だからどうした、と言う話しでもあるが。


「そうだな! 何もな!」

 面白くない都築も、幼さのあるアデルに、大人気もなく言い返した。

「とっとと、案内しろョ」

「口が悪いなー~~ツヅキってばー」

 背中でで、ミウが苦笑交じりの、小さく漏らしたつもりだったが、

「あ゛?」

 都築に聞こえてしまう。

 眼光鋭い、都築がミウへと振り返る。

 ミウの身体が大きく震える。

「--……ッヒ!」

 大きな目も、涙が溜まってしまう。

 そして、背中から下ろされてしまう。

「ぁ、あの……」

 そんなミウの額に、加減しつつ。


 ピン!


「あぅち! っだ、だだだだ!」


 デコピンをした。

「ポンコツは黙ってろ」

「ぅ、ううう~~」

 額を抑えるミウを、アデルは見ていて、何かを言いかけようとしたが。

 きゅ、っと口を閉じた。

「少しは黙って。仲がいいのは分かったから」

「あ゛! 仲がいいだぁ~~?!」

 都築の表情が、怒りの顔に変わる。

 それに、ミウも。

(そんなに嫌そうに、怒らなくたっていいじゃないかよー)

 頬を膨らませた。


「さ。着いたよ」


 俯いていたミウが、顔を上げると。

 そこには。


「《ホロスカ遺跡》!」


 地中にある遺跡にしては、以外と真新しい。

 発見されたのは、最近さったからだ。

 冒険考古学者のホロスカ・B・ラスタルjrが発掘をした。


 ただ、その百年後の、今現在の話し。

 彼の日記が、見つかり。

 この遺跡が、再び、人間の目に姿を現したのだ。


 そこに、アデル一向は発掘と称して。

 盗掘しようとしているわけだ。


 --恐らく。


 都築は、そう思って居たし。

 少なからず、良いことをしようとしていないだろうな、ぐらいに見ていた。

 だから。

 一刻も、早く。

 ここから、出たかったし。

 日本に帰りたかった。


「わ、わわわ! 僕も、あるのは知ってたけど! 洞窟の中に入ったことはなかったんだよねー~~ほわわー~~♥」


 ミウの台詞に。

「知ってた、の? この遺跡を??」

 ようやく、ここにきてアデルがミウに声をかけた。

 ミウが、きょとんとした顔をする。

「え? この一帯の原住民と話すからー知ってるよー~~??」

「他の人は??」

「えー~~?? ほら、最近見つかったって大々的に報じてたし、知ってるでしょー~~」

 ミウが真顔で、

「……だから、きっとーー原住民が赦さないよ」

 アデルに釘を打つ。

 見合う二人に、都築が間に入った。

「早く、お前んとこの隊長って奴んとこに、連れていけよ!」

 不機嫌な顔で。

 長い前髪が、一束垂れ、それを掻き上げた。

「俺は、関係がないんだよ! ったく!」

「関係なかろうと、あろうとも」

「あ゛? ポンコツ、なんだよ!」


「居ることで、マサルも原住民の的になる」


 強い口調でミウが断る。

 しかし、それは。

 逆に言ってしまえば。


「そう。僕もーー裏切り者と罵られる」


 眉間にしわがよるミウに。

 都築も唇を突き出し、ミウを見下ろし言いたいことをまんま、吐き捨てる、。

「ま。仕方ないんじゃねェの? お前も、馬鹿なんじゃねェの?!」

「わ、かってるよ。馬鹿な真似したなってのは、正直……反省だってしているし」

 涙声になっていくミウ。

「マサル。君を呼んでしまうことも想定していながっだじ」

「想定しとけよ、馬鹿じゃねェの?? 本当によォ~~」

「だっで、だっで。ぼぐだっで、うまぐいぐなんで、おも゛っでもいながっだじ!」

「だーかーらーよォ~~! 召喚練習だが、なんだがーー」

「れんじゅう゛!」

「練習で来るって想定もしておけよ! こんのポンコツ!」

 都築は腰を屈め、ミウと視線を合わせた。

「ま。しゃねェから、お前は俺が護ってやるよ。横で、泣かれんのも、死なれんのも嫌だし、な」

 はにかむ顔で、都築がミウの頭を撫ぜる。

「ほぁー~~♥ マサル~~君って奴は~~♥」

 頬を紅潮させるミウ。


 パシ!


「あぅち! っだ、だだだだ! ぅ、ううう~~」


 都築は、二度目のデコピンをした。

 そして、立ち上がる


「じゃ、てなわけで。連れてってもらおうか。アデル」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ