第五十三話 彼女が笑う
「いい加減。浪漫だけじゃ、ご飯は食べられないんじゃないの? ガーナ」
ここはーー《陽の館》
あらゆる情報、あらゆる武器。
あらゆる分野のエキスパートが経営者だ。
「うっさい! うっさい! うっさ~~い‼」
都築一行は、奥に通された。
奥は殺風景の、言葉を思い浮かばせた。
真っ白な壁に、中央に置かれている机に、4席の椅子とソファー。
ごと。
「な、なんだ。この……赤い飲み物は??」
そして、エキスパートで、主人のゲー・チー・ウーがお茶を出した。
赤い液体に、氷の塊。
上から覗く都築の顔だ、水面に映っていた。
「不味くはないはずだよ~~ねぇ? ガーナ」
「うん。ま。美味しくもないけど、飲めなくもないよね。これ」
「一言多い奴だなぁ! もう!」
ガーナと、ゲー・チー・ウーの掛け合いに。
幾分、乗り遅れている都築たち。
グレダラスが、出されたコップを持ち。
一気に、飲み干した。
「っかは。上物の《兎参茶》ですね。これは」
「! ほらほら! ここに味覚のいい上流階級のーー」
「執事をしています」
グレダラスが、ゲー・チー・ウーにコップを差し出した。
お代わり、とばかりに。
ゲー・チー・ウーも、踊り足で汲みに行くのだった。
戻って来たときには、ボトルの入ったお茶を手に持っていた。
満面の笑みを浮かべ、ボトルを上にする。
「さ。お話しをし合いましょうか♥?」
この《兎参茶》はお酒であることを、ゲー・チー・ウーもグレダラスも、ガーナも、都築に教えることはなかった。
「さっきの、あの光り。《祝福》ってのは何?」
ぶっきら棒に都築が、ゲー・チー・ウーに聞く。
彼も、コップに口をつけながら、都築を見据えた。
「言葉のまんまだよ~《祝福》のね」
指をくるくる、と回しながら、愉しそうに言い返す。
「《祝福》? っは! 単なる呪いだ。お父さん」
ぶっふー~~ッッ‼
女の子の声に、ゲー・チー・ウーが口の中に含んだ酒を、勢いよく吹き出してしまう。
びちゃ、びちゃちゃ!
それは、正面に座っていた都築の顔面に命中した。
「--~~ッッ‼」
拭き当てられた都築は、驚きの顔のまま、硬直してしまっていた。
「?? お父さん?? ぇ、ええ?? あああ、あんた!? 子供いた訳??」
ここでようやく、ガーナが声を荒げた。
目を瞑り、指を横に振った。
「情弱~~♥」
「お父さん。店番した方がいいのか?」
大きな紫の瞳と、太い眉毛がひそめられながら。
都築を見た。
「--……呪われたんだよ。お前は」
不敵に、不気味に彼女は微笑んだ。
ゲー・チー・ウーはカップを煽りながら。
「娘のロバ、だよー♥」




