第五十二話 ゲー・チー・ウー
カラン、カララン♪
「居るかぁ?! ゲー・チー・ウー‼」
細い路地を通り。
さらに、細い路地を通り。
辿り着いたーー大きな建物。
「はぁ?!」
信じられないものを見た、都築は驚きの声を漏らした。
「どうやったら、こんなとこに。こんな……こんな」
「ふむ。魔術か、魔法か何かで空間を歪めているんだろう」
「その通りさ! お兄さん、勘が鋭いじゃないか!」
ぴょこ!
グレダラスの背後に立ち、都築の背中に手を添えた。
「っひ、ぃ‼」
「止めろ! 変態ですか?!」
「酷いなぁ」
そこには、褐色の肌に、長い黒耳。
三角巾を頭に巻いた青年が出て来た。
彼が、ここ《陽の館》の店主のゲー・チー・ウーだ。
「テンション下がっちゃう~~」
ひょい、と都築をグレダラスから奪い。
「っな、何??」
「君、珍しいな」
顔を近づけ、虫眼鏡で覗いていた。
「何、が??」
「え? 何ってーー」
「いいから! ゲー・チー・ウー! なんか情報ないの?!」
何かを言いかけたゲー・チー・ウーの言葉を、ガーナは遮った。
武器を売る片手で、情報屋も営んでいるゲー・チー・ウー。
「今、さっき《銀の教団》に接触したとかかな??」
薄く微笑む彼に、都築は息を飲む。
ただならぬ気配を感じたからだ。
「何? なんの話しだよ??」
「いやいや。なんでもないよ♥」
両手はなんカラットあるかもしれない指輪が、両手に嵌められていた。
キラキラ、と輝く指輪に、都築は目がいってしまう。
(きれ~~)
都築が気に入ったのは、左手中指に嵌められたシンプルな指輪だった。
宝石はーー《蒼き英雄の咆哮》
ゲー・チー・ウーは、それを抜くと。
「さて、どうなるかな??」
「っへ?」
都築の薬指に嵌めた。
「指輪は人を選ぶからね♥」
すると。
閃光が奔った。
「ぅ、お、ぉいいい?!」
都築の身体も、浮かぶ上がり。
くるくる、と回り始めた。
ぽん!
ぽぽん!
花火も、どこからともなく上がる。
「っつ、都築!? 大丈夫か?!」
「ぁ、ああ。大丈夫だ、けどよ」
「いいなぁ。あたしにも頂戴よ。指輪」
「ダメダメ。君には使う力量がないもん」
「あんたなんか嫌いだ」
「なんとでも♪」
そして、見上げる宙に浮く都築。
「本当に、毛色の変わった子だね。ミュウ」
ほくそくみながら、ゲー・チー・ウーが手を伸ばすと。
都築の周りに浮いていた、花火が吸い込まれた。
「お、おぉうう??」
都築は、自身のお腹に手をやり触る。
痛みも、火傷もない。
指に嵌めたはずのーー指輪もだった。
「《祝福》完了っと♪」
訳の分からないゲー・チー・ウーに。
「いいから! とっとと、下ろせよ‼」
大きく牙を剥いた。
「了~~解っと♪」
手を引くと都築の身体が落下した。
「っぎゃ!」
それをグレダラスがキャッチする。
「ふぅ。危ない」
「ありがと」
グレダラスの胸に顔を置く都築に。
茹蛸のようになってしまう。
腕を組みガーナは横目で見ていた。
「いちゃいちゃしないでよね」
口元を緩めながら。




