第五話 ファースト・ジョンズ
都築はミウから半端、奪うような形で。
《鉄拳裏拳》を手に入れた。
それはグローブ状で、はめることにより。
脳と連携し、使いたい形状になるといった便利 道具だ。
都築は背骨が伸びた。
皮膚も一緒に。
そう蝙蝠のような羽根が出来たわけだ。
バサ!
バサバサーー……。
「ぉ、おおう!? っちょ、ぅおおお‼」
勢いの調整までは出来ずに、一直線にアデルを追いかけ、抜かしてしまう。
あまりのことにアデルも、口をあんぐりさせ、都築の背中を見送った。
バサバサ!
ギュイイイイイインン‼
そう風圧に、都築の顔の肉も、大きく揺らぎ、震えていた。
抑制することも出来ずに、突っ込んで行く都築。
徐々に、近づく建造物。
ぶつかると、思ったとき。
シュルルッッ。
突然、羽根が元の背骨に戻ってしまった。
突然の幕切れに、
「あ゛??」
あっけにとられた表情をする都築だったが。
身体はそのまま、建造物に顔面から行ってしまう。
「ぅ、お゛?!」
都築は手を伸ばし、建造物の距離をつくろうとしたが。
「っふぅ、ぉお゛お゛ッッ!?」
その前に、建造物の一つ手前にあった掘に落っこちてしまう。
ぼ、っちゃーーーーん‼‼
ブクブクブク。
◆
「おい。手前!」
ジャラジャラ! と辺りにけたたましい音が鳴り響く。
ここはゲームセンターのメダルゲームコーナーだ。
そこでは大人が、日頃の鬱憤や、娯楽で家族が来る。
ただ。
その間、子供はーー放置されがちだ。
「何?」
都築マサルも、そんな子供だった。
「今日、平日だぞ! 学校は?! 親はどこだ??」
気がついたらここに居て、居ることが普通で。
どのスタッフも、都築のことなど気にせずーー見もしなかった。
しかし。
一人の新米スタッフが、彼に声をかけた。
「注意すんぞ! 最悪、出禁も言うかんな!」
「何もしていないのに、そんなことは出来ないでしょ」
冷淡に都築も切り返すのに対し、
「馬鹿か!?」
そう新人スタッフが、声を荒げた。
小学高学年の都築に。
「何もしないことが、ダメなんじゃねェかよ!」
彼は眉間にしわを寄せ、
「大人は子供のためによォ、すんのか当然なんだぜ?」
都築の頭を優しく撫ぜた。
「さ。親んとこ、案内しな」
その後、親に言ったが、改善もされず。
彼が高校生になるまで、新人スタッフの、彼が相手をしていた。
新店舗に異動するまで。
それが縁で、憧れてか。
都築もゲームセンターの店員になっていた。
◆
ブクブクブクブクーー……。
「っぶぁ゛!」
都築が掘から、身体を起き上がらせた。
「づ、冷てェ~~!」
慌てて地面に上がる。
水は冷たく、都築の身体が震えた。
「《オーブン・チン》!」
ミウがそう唱えると、都築の身体が、見る見ると、温まっていく。
「! お、ポンコツにしちゃあ、気が利くんじゃねェの?」
っふ、と都築がミウに、はにかんだ。
思いがけない笑顔に、ミウの顔が赤く染まっていく。
「ん、ふふふぅ~~♪ っで、っしょ~~う♪」
「で、ここがーーここに……」
都築の視界に広がるのは地中の《遺跡》
「……帰り道あんだろうなァ?!」