第四十八話 関係ない男と泣き男
グレダラスは有給を使い。
愛しの都築に会いに行く途中だった。
「ふふふ。私に驚くだろうな」
行ってついたときの都築の顔を想像し。
頬を紅潮させるグレダラス。
そんな彼の、目に飛び込んできたのは。
獣の少女。
「全く。躾がされてない雑種が」
そして、目を見開いた。
背中にいるのは間違えようもないほどに。
彼が会いに行こうとしていた。
愛しいーー都築マサルだったのだから。
「都築ーー……??」
そして、無意識に懐から呪符を出していた。
そして。
気が付けば、使っていた。
「《伏せ》」と。
◆
よろめくアネリを、横から都築が支えた。
その様子を、グレダラスが睨んでいた。
「少し。くっつき過ぎではないですかね」
キツイ口調に都築も言い返した。
「お前が痛めたんだろが」
正論に、グレダラスは顔を横に背けた。
「ったく! お前には、俺がどうしょうが関係ないだろうが!」
その言葉に、
「関係なくはないでしょう!?」
グレダラスが激しく、言い返した。
癪に障ったように。
「君は誰にでも、そう言うのかッッ‼」
顔を怒りに歪めるグレダラスに。
「関係ない奴らに、そう言って何が悪いってんだよ。ったく!」
悪びれる様子もなく、都築も吐き捨てた。
「君は、間違っている!」
「--……お前と、いま、んな議論したくないね。帰れば」
立ち止まってしまうグレダラス。
その気配を感じたが、都築は無視して進んで行く。
「アネリ。大丈夫か??」
「ん、少し、お腹痛い……だわ」
「悪かったな。あいつも、そんなにわるーー……」
ゴホゴホ! と咳き込むアネリ。
血を吹きこぼした。
「--~~ッッ!?」
都築の顔から、血の気も引いてしまう。
そして、狼狽えてしまう。
「ね。あたしは大丈夫だわ」
「っど、どこだよ! そうは見えない!」
「--あたしの、血は持病なの」
泣き顔になっている都築。
涙は零れかけている。
気丈にアネリは、涙を舐め褒めた。
「だから。ぼうや、泣かないで? ね?」
「う゛ん゛」
都築は、死んだ愛犬のコロを思い出して。
震えていた。
「う゛ん゛」
大きく頷く都築。
「全く。ぼうやは」
「彼はぼうやじゃない」
振り向くと。
顔を真っ赤にさせているグレダラスが、仁王立ちしている。
「26歳の、立派な大人の男ですよ!」
きょとんとするアネリは、都築とグレダラスを見た。
「またまた~~♡」
バツの悪そうな顔をせず。
グレダラスをにらむ。
「なんで来たんだ。お前」
「君に、私の力が必要とならないわけがない」
口端をつり上げ。
自信満々に言う彼。
「そう思わないかい? 都築」
そう聞かれた都築は、涙を拭き。
「とくに」
短くぶっきらばうに、そう答えた。




