第四十二話 誰か為の声
『あああ、危ないよぉう~~大ちゃん~~』
『都築は心配しいなんだよ。全く』
都築の耳ににぎやかな声が聞こえて来た。
にぎやかと言うより、耳障りに。
ぎゃーぎゃー~~と騒がしい。
(ったく! また、あのポンコツは~~‼)
苛立ちながら都築が起き上がろうとするも。
身体が、何もかもに感覚がない。
(?? っへ?? なん、なんだよ?)
--少シ、聞イテイナサイ。
(?? っだ、誰なんだよ!?)
都築は声を出すことしか出来なかった。
しかし、その声の主は見えない。
(だから! 誰なんだよ!)
--煩イワヨ。
頑なに、何も言わない声に。
都築も、少しーー諦めた。
いや。
この異世界に来てから、諦めることが多くなっていた。
都築は改めて、辺りを見渡した。
(……--あれ。ここは…--)
一面の花畑。
そして、大きな岩。
明らかに日本でもない場所。
地球上にあるかも知れない場所。
なのに。
(どこだっけ。見覚えが……あるような、ないような??)
そして、声の主。
『心配しぃいい?! 違うでしょう! 違うでしょう~~?! 大ちゃん!?』
大きな目に量の在る髪を後ろに束ねている。
ミウのように。
胸も何もない、ミウのように。
『それでいっつも、いっつも! 危ないことすんじゃないかァ!』
『研究には危険はつきものよ。都築』
『でもだよ?! でもだよ?!』
ついには泣きじゃぐってしまう《都築》に、
『大丈夫。都築がボクを守ってくれるんだろう?』
《大》が、そう言った。
細い目が、さらに細められた。
(--……ぅ、そ……だろう??)
絞り出るような言葉が、都築から出た。
大と呼ばれた彼女を見て。
腕を伸ばしたくなる心境だった。
その彼女はーー……。
「おーー……ッッ‼」
ごっちん!
「ぁ、っだ、ぁああ!? っづつ、きぃ~~??」
誰かの頭に当たった瞬間。
都築も、ベッドの枕に頭が戻った。
「--……ぃってぇ」
額を抑える都築に、
「馬ッッッッ鹿! 痛てェのはなァ! 俺だっつ~~のォ‼」
入江が口を大きくして、都築の腹を叩いた。
思いっきり拳でだ。
「っぐあ! お前~~」
睨みつける都築に、入江がほくそくんだ。
「たでー~~ま♪」
その言葉に、都築の目が丸くなってしまう。
口も、戦慄く。
目の中の入江が、都築の顔に迫って来る。
「!?」
思わず、目を瞑ってしまう都築の額に柔らかいものが触れた。
片目を開ける、と。
「あたしだ! 何?? 出口だと思った?! 思ったの?!」
愛が笑い声を上げていた。
「--~~このッ!」
「止せよ。愛! 病人なんだぜ」
「はいはいっと!」
入江出口と、入江愛が居た。
「っな、んで?? いんの」
もう都築には、それしか言えなかった。
衝撃的な、ことの連続で。
もう、言いたいことが追いつかないのだ。




