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ツヅキくんはかえりたい  作者: ちさここはる
                             第一章   
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第四十一話 メモリーズ

 ブクブクーー……。


「っぜ、っはァ~~ッッ!」

 入江が、大きく息を吐いた。

 肩には、都築が担がれている。

「なんなんだよ! 一体、全体‼」


 辺りは、濃い水の匂いが立ち込め、水飛沫が舞っている。

 キラキラ、とーー虹を生み出している。


「ここ、はーー……見覚えが」


 すると入江の前に、黄金に輝く紙が現れた。

「これも、見覚えが……--ある??」

 入江の顔が、怪訝な色になってしまう。

「なんなんだよ! 誰か居るってんなら、姿を現したらどうなんだァ!」

 大きく入江は吠えた。


 そして、声が響いていく。


「ったく! こっちゃあ、病人が居るってによォ!」

 入江は、肩に担いでいる都築見た。

「っま、まま、マサル??」

 いるはずの都築の姿がなくなっていた。

 入江も狼狽えてしまう。

 必死に、辺りを見渡す。


 しかし。


「マサル?!」

 

 入江が走り出した。

 すると、黄金の紙も一緒に、ついてくるのだった。

「マサル‼」

 入江の顔が歪み、涙で視界も歪む。

「--……マサル……??」

 しゃがみ込んでしまった入江の顔の前に、黄金の紙が回転する。

 入江は紙に腕を伸ばし。


 指先が触れたーー瞬間。


 ◆


「! っこ、ここは?」


『やぁやぁ。出口サン!』

 映画館の中央席に座っていた。

 入江の横には、ウサギの被り物を被った少年が座っている。

「おい……--手前は誰だ?!」

 勢いよく入江が立ち上がった。

 ウサギの被り物に手をやり、

「ふざけた格好しやがってよォ‼」

 激情のまま剥いだ。

 

「全く、君は短気ですね」


 その顔にも、見覚えがある。

「手前は……誰だ?!」

「おやおや。お忘れですかァ? この《僕》を?? ふは!」

「だから! お忘れも何も!」

 腕を上げ、スクリーンに被り物を放り投げた。

「知らねェんだ! っつう~~の‼」

「何も、投げることないんじゃないのかなァ」

 

 彼の名前はーー江頭凛。


「マサルを! どこにやったァあああ!?」


 入江の手の中に、ピンク色の粒子が集まった。

 そして、それは弓に形成される。

「答えろ! 子供でも、容赦はしねェぞォ‼」

 凛の額に矢を当てる。


「君には選択肢がある」


 そして、凛は弓を掴んだ。

 

「どう選ぶかは、君次第だ」


 入江の身体が怯んでしまう。

 凛の威勢に、口を突き出す。

「これは君だけじゃなく、大事な仲間を救うことにもなる」


 入江は、目をスクリーンに向けた。

 そこにはーー映像が流れていた。

「ーー……救えんなら、俺は」

 入江は口端しをつり上げた。


「なァんだってやってやんよ♡」


 

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