第三十二話 招かれた客の到着
ギシーー……。
「じゃあな!」
解かれた都築は、大股歩きで部屋から出ようとした。
その行動に、ミウは慌てる様子はない。
背後から、なんの声もないことに、違和感を覚えながら。
都築は、足早に進んで行く。
しかし。
「おい! ポンコツ!」
都築の足が止まった。
振り返らずに都築は、ミウに聞いた。
「何? マサル」
「仕事っては、嘘だったのか?」
「……僕は、嘘なんか言わないよ。マサルを騙すようなことなんかさ」
そこにグレダラスが。
「ミウお嬢様は、そのような幼稚なことを言う方ではない」
ミウのフォローをする。
都築は、その場に立ち止まった。
何かを考えて居る。
そして、しゃがみ込む。
その隙間から、パンツも見える。
「あは♪」
ミウは、スキップしながら、都築の元に行く。
「! ミウお嬢様」
驚いたグレダラスが腕を伸ばす。
しかし、その腕はミウには引っかからなかった。
「僕が君を騙す? 君を傷つける? 君を殺す?」
「……顎も、首も痛いんだがな」
「それはね、グレダラスもやりすぎたよね~~」
「ったく!」
そして、ここで都築は振り返った。
「でーー」
むちゅ。
「!?」
都築の顔が、ミウに固定された。
視界が真っ暗で、口に何か、柔らかいものが当たっている。
「む゛?!」
「マサル……」
「む゛、ぅ゛‼」
ようやく視界が明るくなる。
ミウの顔が離れたからだ。
紅潮するミウの顔に、都築も魅入ってしまう。
舌なめずりをするミウに、
「--~~ッッ!?」
都築が口を覆い、勢いよく身体を後ろに動かそうとするも。
動かない。
「おおお、お前!? ままま、また‼」
「拘束術したよ~~♪ 逃げられたくないもん」
ミウはグレダラスに、顔を振る。
少し、うんざりとした表情で、グレダラスは都築へと向かい。
また持ち上げて、お姫様だっこをした。
「お前も、少しはポンコツに、何かを言えよ!」
(……その汚らわしい口に、ミウお嬢様は口づけをしたのか)
グレダラスは、都築の口元を見て、歯ぎしりをする。
「おい!? 聞いてんのかよ?! お前は~~‼」
動かない身体の代わりに、口を動かす都築。
そして、また。
バッフン!
乱暴にソファーに下ろした。
「だから! お前は、なんだってそう! 乱暴なんだよ‼」
ミウは、そんな都築の顔を見下ろす。
「これから。僕は君の権利を奪い返すためにゲームをするんだ」
「げー……ム??」
「そうだよ。だから、君に帰られたら出来なくなるんだよ」
「……--メイレーが、来るのか??」
「うん。そうだよ♪」
ぞわ。
ぞわわ!
「あいつが、か?!」
浴槽で会ったメイレーを、都築は鮮明み思い出す。
一言で言うと、ミウよりもお嬢様といった感じだった。
若く美しく、近づき難い。
まさにバラの棘。
ミウは、さながら近くのタンポポだ。
「っふ、ざけんな! 俺は帰る! 仕事の話しじゃないじゃねぇかよ!」
力の入らない身体を、ゆっくりと動かし、ソファーから転げ落ちた。
ずっどーーん!
「ぁ゛だッッ‼」
グレダラスはため息を漏らし、手を貸そうとした時だった。
「?!」
細い腕が、都築の影から伸びた。
突然のことに、グレダラスも身体を一歩、下げてしまう。
ミウは眉間にしわを寄せ、
「来たね。クソ女!」
低い声を漏らした。
「ん、ふふ♥」




