第三十話 使い魔
ポンコツの屋敷は広い。
よくテレビで流される大富豪のまんまだ。
(成金ってのは、みんな、こんな趣味なのか?)
しかし。
至る所に、美術品があんのな。
壊したら、何を言われるやらだ。
「ねー~~本当に、マサルだよね~~??」
横で、俺の腕に腕を絡ませてるポンコツが、そう言う。
寝言は寝て言えってんだよ。
「ああ。お前に股間を見せられたな」
ここで俺も、あのポンコツが忘れかけているだろうことを言ってやった。
その方が、俺だって分かるだろう。
カカカカ!
「みみみ、ミウお嬢様?! いいい、一体、なんの話しなんですか?!」
おいおい、お前が食いつくのかよ執事。
え、っと?
グレダラスだとか言ったか?
見た目は……女みたいなきれいな面。
曲線も、華奢で。
玉ついてんのか??
女でしたって、オチでもいいさ。
俺は、こいつの人生をどうこうと、絡む趣味はない。
「やっぱり、君はマサルだ。間違いようがない」
「だから、そう言ってるだろう」
「うん♪」
ぎゅ!
「マサル♪」
「ポンコツ、お前。ボンタコタレスって奴を、知ってるか?」
俺はポンコツに聞く。
すると、どうだ。
「--……君、あの方たちと面識が?」
執事のダグラスが反応した。
お前がかよ。
「ああ」
「このボロゾイ家と対立する財閥の一つです」
俺たちが歩くと、廊下の灯りが点く。
さすが、金持ちは違うな。
「ああ」
それも、その陰険な口調で。
毛嫌いしているのが分かるな。
そんなのと、俺はーー絡んじまったのか。
参ったな。
「マサル? 君、どっちと会ったんだい?」
ずい、と。
ポンコツが俺に詰め寄る。
身長が、ほぼ同じであるため。
視線がかち合う。
「ぇ、っと。両方、だな」
目を横に逸らしてそう言う。
「ふぅ、ん」
ポンコツが、鋭い眼光で、俺を見やがる。
なんなんだよ。
ったく!
「……ミウよか、女らしかったぜ」
だもんで、つい、俺も。
業とらしく言ってしまう。
子供じゃないってのに。
(っち!)
俺も、恐る恐ると、ポンコツを見た。
ブルブルブルーー……。
顔を真っ赤にしたポンコツがいる。
何を、怒ってんだよ。
「マーニーって女の、裸も見たな。そういや」
「僕以外の、女の裸を?! 見たって言うのかい?!」
「ああ」
「何か、厭らしいことをしたのかな? その女と」
ポンコツの言葉が強張っている。
何、本当にこいつ。
「関係がないだろ。ポンコツには」
そうこうしている間に、大きな扉の前に着いた。
グレダラスが、扉を開けた。
さすが、執事だな。
「なんだよ。この部屋」
俺の前には埃まみれの、書斎があった。
腕が、身体が震え出してしまう。
「なんだ。どうかしたのか」
グレダラスが、そう俺に声をかける。
それだけ、俺の態度がーーあれなんだろう。
「箒、掃除道具をくれ」
「無駄だ。すぐに溢れるからな。さ、こっちだ」
獣道のようなものがあった。
そこを進んで行くと。
わりときれいな場所があった。
円状に。
「《服従せよ》」
ポンコツが、何を言ったと思えば。
俺の身体が、いきなり地面に砕け落ちた。
「????」
わけが分からない。
視界に、ポンコツの靴が映った。
目だけが動き、俺はポンコツを見上げた。
「君は、僕の《使い魔》だ」
ぶっとい本を閉じるポンコツに。
俺は、キレてもいいよな?
「て、っめぇ~~ッッ!」