第三話 股間の芋虫
心もとない下半身を都築は抑えながら進んでいく。
アデルが辺りを照らしているため、壁面の文様や、古代文字が視える。
ただ、都築には興味がない。
「あいつなら喜んだのに」
少し、口元を緩めた都築に、
「何、笑ってんのーマサルー~~??」
下から、ミウが顔の覗き込む。
「!? うっせェーよ! ポンコツ!」
都築は、口元をへの字にさせ、ミウの額を叩いた。
はず、だったのに。
勢いよく背中から落ち。
ド、ッドォオオオオオッッ‼‼
「「へ??」」
ミウの身体が、地面にめり込んでしまう。
都築もだが、ミウも驚きの表情をする。
なんの事情も知らないアデルは、
「置いて行くわよ?」
冷淡に吐き捨て、つき進んでいく。
「おれも、急がないと隊長さんに怒られちゃうわ」
「あ! おい、ちょっと手を貸せよ!」
少し慌てる都築に、ミウも泣く。
「ぅ、ううう~~ヒドイよ~~マサル~~」
そんな二人に、アデルは怪訝な顔をし。
「めり込ませたなら」
腕を組み、地面を足で鳴らす。
「抜くことだった造作もないでしょ」
早くしろと、言わんばかりに。
それに、都築も。
「分ぁ~~たよ! ったく!」
「マサル~~」
腕を伸ばすミウに都築は腕を伸ばし、力を籠めて抜く。
すると。
すっぽん!
「ぅ、おう!?」
軽い衝撃に、都築はミウもろとも、地面に腰をつく。
「っだ!」
股間が、アデルから丸見えになってしまう。
カカカカカ!
硬直してしまったアデルに、
「っと! そんなに見んじゃねェよ! ったく!」
都築も、ようやく自身の格好に気がついた。
はだけたタオルを直す都築の顔は、真っ赤になっていた。
依然として、アデルは硬直したままだ。
「おい!」
強い足取りで都築は、アデルの方に歩き、肩を揺さぶった。
「っふ、ぎゃああ‼」
思いもしないほどにアデルが叫んだ。
「騒ぐんじゃねェよ。たかが、チンコだろうが」
「こここ、股間に!」
その言葉に、
「いいい、芋虫ぃ~~!」
「芋虫じゃねェよ! 男のチンコだよ!」
都築もキレて言い返す。
ミウも苦笑しながら、都築の後ろから抱き着く。
「ああ゛?? 何してやがんだ! お前はっ!」
「女の子にはないものなんだからー~~仕方ないよー」
女の子。
「っふん!」
頭を掻き、都築はそっぽを向いた。
「ほら! さっさと、案内しろよ! ぇ、っと、アデル? アデル!」
名前を呼ばれたアデルの表情に色が戻る。
「呼び捨てにしないでよ! おれ、お前の名前を聞いてないぞ!」
「知りたいの?」
都築は眉間にしわをよせながら、アデルに聞いた。
「聞かなきゃ始まらないじゃないか!」
「都築マサルだ」
アデルは小さく頷く。
「ツヅキね? 後ろのはーーぁ! お前は、いいや」
ミウを見たアデルは、そう吐き捨てた。
「さ。行くわよ」
「おう」
長い通路の先には。
想像を遥かに超えた、何かが。
二人を待ち受けている。