第二十八話 ミウの屋敷
のしのし。
「ったく。何が仕事だよ」
バスタオルを持ってくることを忘れた都築は、また、びしょ濡れで戻って行く。
少し、顔を緩めながら。
小走りに。
「ポンコツのくせに」
「手前は、なんで行ったと思ってんだよ!」
戻って来た都築に、入江がエプロン姿で出迎え、その姿に、大きくため息を漏らした。
「ああ! バスタオル、バスタオル! ガーナ! バスタオル!」
入江が、ガーナにそう叫ぶと。
「はぁ? バスタオル? ……ぅわ! バスタオル! バスタオル!」
呼ばれたガーナが、入江を見て、都築を見た瞬間。
血相を変えた。
ったったった。
「はい。やっぱり、持ってってなかったのね。ツヅキ」
アデルがバスタオルを、都築に持って行く。
それを都築も受け取る。
「おう。サンキュ」
背が縮んでしまっても、幾分か、都築の方が身長はある。
滴る水を、ガシガシとふき取っていく。
「ったく! あんたって男は、本当に後先をかんがえないんだなァ」
ガーナが腕を組み、都築に大きくため息を吐いた。
そう言われた都築は、バスタオルを肩に置き。
「忘れただけだろう」
眉間にしわを寄せ、自身の部屋に向う。
一応、ボロいアパート。
ガーナとアデルの相部屋。
ただ。
入江と、都築は別部屋だった。
理由は、都築にあった。
『一緒に誰かと寝たことないから、無理』
と、いうことで。
散らかったリビングの椅子の上に寝ていた。
毛布に包まって。
そして、みんなが寝静まったのを確認して。
ギシーー……。
(さて、と)
静かに起き上がり、そのまま、玄関に向かう。
途中にある階段まで、ゆっくりと歩き。
ゆっくりと、ゆくっりと。
玄関に手をかけ、出て行った。
外には、地球でいう月に似たものがあり。
それが、紫色に光っていた。
「見慣れれば、きれいだよな……さて、とっとと行くかな」
静まり返っていない街を、足早に進んで行く。
その理由は。
◆
「お嬢様が、なんの用だよ」
素っ気なくミウに、都築が言う。
言われたミウも、
『君に仕事の依頼があるんだ。受けてくれるだろう? 報酬も出すよ?』
そう、都築に言う。
(報酬、ね)
報酬は、都築も欲しかった。
この異世界で生活するには、お金はどうしてもかかる。
衣服をきなくても、腹は減るからだ。
しかも、同居させてもらっている方の収入も安定せず。
食えない日が、多々あるらしいとの話しも聞き。
これは、頑張らないと、と。
都築自身が、思った。
「で。何をさせたいの? 俺に」
『今日の夜。僕の屋敷に来れるかな?』
嫌な顔をしていたらしく、
『そんな顔しなくたって、何も、しないよ♪』
苦笑交じりに、ミウが言った。
◆
そんなわけで、都築は。
「着いた。んで、どうすりゃあいいんだよ」
深夜、屋敷の灯りは消えていた。
佇んでいた都築の目の前で、柵が音を立てて開いた。
お出迎えられたのだ。
「! おいおい。お嬢様は、何を考えているのやら」
都築は呆れ声を漏らし。
開かれた門の中に、入って行った。
ギィイイイーー……。
ガッシャン!




