第二十七話 都築と風呂
「……本当に、ドジふんじゃって♪」
ガーナが口を手で塞ぎ、身体を震わせた。
びしょ濡れのまま、都築は入江と一緒に、ガーナの家に帰った。
あのミウの屋敷から出て、行くの当てのない都築に、アデルが声をかけたからだ。
アデルにも、都築に下心があるのだ。
みすみす、見逃す手はない。
そんな展開だったわけだ。
「うっせ~~よ。っち!」
都築は眉間にしわを寄せながら、エプロンを着た。
このガーナの家には、女子が二人いる。
いるのだがーー……家庭的ではなかった。
家に来た都築の目に映ったのは。
ごみ矯めで、洗いものや、小蠅が飛ぶ空間だった。
家は、ミウの屋敷から遠く。
都市の中心地区ーーの外れ。
そこは家賃が安く、その分、無法地区に近いーー《星屑の野菜》
貧困層と、暴力組織が住む。
ガーナの生まれた街でもある。
「洗濯すっから、洗いもーー……っしゅ! へっくちゅ!」
都築がくしゃみを、連発させた。
濡れたまま帰って来たのだ、当然だろう。
「お風呂に入って来なさいよ」
風呂はあるが、このアパートの共用で。
広いには広い。
「ん゛。そう、すっかなぁ」
都築は入江を見た。
その視線に、入江の身体が揺れた。
都築だけが、この家の主夫ではない。
入江も、料理や洗濯が出来る。
都築は無言でエプロンを解き、入江の頭の上に置き、出て行った。
◆
ちゃぷん。
「は、ぁ……」
風呂は貸し切り状態だった。
大きな浴槽に、手足を伸ばす。
短い手に、短い足。
「俺が、何をしたってんだよ! どいつも! こいつも‼」
バシャ!
バシャ、バシャ!
都築が、お湯に激情をぶつける。
拳で、お湯を叩いていた。
「落ち着いた? ツヅキ」
そこへ、アデルが入って来た
ピシャ!
「いつになく、泣きそうな顔をしているわ」
「--……どんな顔だよ。ったく」
前をバスタオルで押さえて、都築の浴槽へと向かい。
湯船に浸かった。
都築の横に。
「てか。何、お前は普通に入って、俺の横にいんだよ」
少し、空間を都築は開けた。
しかし、それをアデルは許さない。
また、すぐに。
「心配したのよ? イリエは帰って来たのに、ツヅキはいないから」
「そうかよ」
「約束も守らないで、帰ったのかと思ったわよ」
「そうかよ」
ばっしゃーー……っっ‼
アデルが一糸まとわない姿で、立ち上がった。
「お前は、姿が変わったね。ツヅキ」
「ああ」
都築は目を瞑り、湯船に潜って行く。
「おれよりも小さいんじゃないの?」
ぴちゃん。
息苦しくなった都築が顔を出した瞬間。
アデルに顔を抱きかかえられた。
「帰って来てくれてありがとう」
そう言い、アデルは都築の頭にキスをした。
そして、アデルは風呂場から出て行く。
「--……ぁあ~~羞恥心くらいもてよ~~‼」
都築は、顔を抑えた。
『何? 恥ずかしかったのかい? マサルは?』
「?! ポンコツ??」
お湯が盛り上がっていくと、それは人の形になっていく。
都築を召喚した張本人のミウに。
『むつっりそうなのに。嬉しくないんだね』
「うっせ~~よ! ポンコツ! 何しに来やがった!」
ミウに、都築も言い返す。
全く、来なかったミウの、いきなりの訪問。
驚きは隠せない。
そんな都築に、ミウは微笑みながら。
『仕事の話しをしようじゃないか』
都築に言った。




