第二話 助けた少女
「おい! ポンコツ! 岩をぶっ壊すことぐーー
ミウに都築が言うも、
「だからー~~魔術でゲージがゼロなんだってば!」
ミウも言い返す。
荒く息もついている。
「普段走らないから! も! 無理‼」
立ち止まりそうになったミウを。
「お前は! 本当に、馬鹿でポンコツだな!」
都築が抱き寄せ、背中に乗せた。
「真っ直ぐ行けばいいんだな! 本当だな??」
「行ける場所、そこしかないしね!」
ダダダダダ!
ゴロン。
ゴロゴロゴローー……ッッ‼
「坂道でもないのに! なんで転がって来んだョ!」
都築は大股で走って行く。
口を突き出し、唸る都築が立ち止まった。
それに、ミウも驚く。
「?? どうしたの?? マサル? マサル??」
背負われたままで、岩に当たれば。
都築も死ぬが。
ミウも死ぬのは当然だ。
「逃げても来んなら! 受け止めるしかねェ!」
その言葉に、ミウが目を見開かせる。
都築の肩を強く掴んだ。
「それも、そうかもね」
「どうせ、二人ともお陀仏なら! 足掻こうぜ!」
巨大な岩が、立ち止まった二人に向かって来る。
それは勢いがよく、速度もある。
(こんなところで死ねるかよ!)
都築は腰を落とし、身体を低くし、足を大きく広げた。
拳を握り、右手を引く。
間合いを見て、岩の中心に集中する都築。
「ここだァああああ‼」
腕を引き、突き出した瞬間。
拳に、岩が触れた瞬間。
「騒がしいったらないわね」
トーンの高いソプラノの声がした。
長い髪が都築の前に立ち塞がり、
「素人だね」
飛び上がると、一回転し岩に手を触れた。
パッキン……。
ドォオオオオオンんンん‼‼
「すげ」
岩が木端微塵になった。
長い髪を指で梳かし、はらう。
頭にはピンクの花が飾られている。
「あなたたちは同業者? それとも《保捕官》?」
目が赤い。
都築はそれに魅入っていた。
「違う。俺は、このポンコツにーー……」
都築の言葉を遮るように、ミウが言う。
「ここに他の出口ってある? 入口が塞がれちゃったんだ」
「あるわけないじゃない。出入り口は一か所だよ」
少女は身体を翻し戻って行く、元来た道を。
都築は、慌てて少女の後をついて行く。
「おい! 置いてくんじゃねェし!」
ったったった!
「本当に、これだから初心者は嫌なんだよ」
道には緑色の蛍光色の何かがあった。
「荒らすわ、壊すわで」
その上を通ると、消え去ってしまう。
都築は興味津々に見ていた。
「ところで。あなた、よくそんな、ほぼ裸で来たわね」
「こっちにも事情があんだョ」
サウナに行くはずだったのだから、仕方がない。
ちらりと、少女が都築を見た。
「死にに来たのなら、邪魔して悪かったわね」
「ここは何処なんだ?」
都築が聞くと、少女は、信じられないといった表情をした。
ドン引きとしいった少女に、
「俺は、ここの人間じゃねェんだョ!」
都築は強い口調で言った。
「でしょうね」
ここまでの会話にミウは入って来ない。
借りて来た猫のようになってしまっていた。
「どういうことか聞きたいんだョ、ぇっと? 名前聞いていいか?」
ミウのことを忘れ、都築が聞く。
「おれはアデルよ。職業は《呪術者》で、副業に《暴探者》をしているの」