第十三話 都築の激情
立った入江は厄介だった。
「おい」
眉間にしわを寄せ都築が言う。
しかし、入江は聞こえる様子もない。
いや、聞く気がない。
「ちゃっちゃと、行こうぜ! 都築!」
都築やミウ。
しかも、あろうこうとかガーナや、アデルより先に。
先頭に立って居るのだ。
なんの装備もないーー男、入江出口が。
「おい。ぽ……ミウ」
「! はぅ! な、なんだい?! ままま、マサル♡」
頬を朱に染めながら、ミウが都築に聞き返した。
「あの馬鹿を黙らす魔術はねぇかぁ!」
強張った顔をする都築に。
ミウも苦笑しながら、
「そんな生易しい魔術はないんだ。ごめんよ、マサル」
ミウは、都築の足に頭をつけた。
「重い」
都築は、ミウの頭を払いのけた。
軽くしたつもりだったが。
--っど、ごぉおおおオオ゛ッッ‼
「あうち!」
真横に勢いよく、ミウの身体が吹っ飛んでしまう。
壁にめり込むミウに。
「あ。はぁー~~」
都築も、手を見て握り締めた。
「おい、ポンコツ。悪いな」
ズボ! と都築がミウを引き抜く。
「う゛ー~~暴力夫~~」
「……誰が、暴力夫だ。もっかい、沈め」
ぼう。
「あうち!」
そんなやりとりをする二人に。
厄介な彼が。
「おい! 手前ら、冒険甞めたら死ぬぞォ‼」
入江が言う。
「?! あ゛?」
都築が入江を睨みつけた。
「俺が言うのもアレだろうけどよ~~都築! 手前、冒険甞めてんだろう!」
先頭に居たはずの入江が、小走りに都築に向かって来た。
口元を、への字にさせながら。
「お前、やっぱ、頭がおかしいんじゃないのか!?」
「はァ?! 手前、俺に喧嘩売ってんのかァ?!」
入江は都築の咽喉元を、手で絞めた。
力強く。
片手で。
「喧嘩、っぐ、売ってるように……視えます?」
都築が入江を見下ろす。
抵抗しようとすれば、出来るのだが。
締めつけている腕を、軽く掴む程度だった。
「クソ餓鬼が。っふん!」
入江が咽喉元から、手を離した。
手首を振りながら。
「俺ァ」
《遺跡》の先を見据えた。
「こういう冒険が、初めてじゃねェ気がすんだ」
ぞわ。
ぞわわ。
「初めてじゃないのなら。状況判断は出来るでしょう?」
ガーナが、入江を睨んだ。
「はァ?」
入江も、ガーナを見る。
「あんたの身勝手な行動で、あたしたちは死ぬかもしれないんだよ?」
「……男は、いっつも身勝手だ」
アデルも、そうぼやいた。
そんな女性陣の言葉に、
「いや、手前らは死なねェさ!」
入江がにこやかに言い放った。
「お前、やっぱり。頭、おかしいんじゃねぇのか?」
冷徹に都築も、吐き捨てた。
入江は、また先頭に戻って行く。
何、一つとして。
言い返すことなく。
「おい。何か、言えよ。入江!」
都築が、入江の腕を掴んだ。
入江が振り返ることなく、腕を振り払おうとするも。
それは、相手はーー馬鹿力の都築。
叶わない。
「--……俺がお前らを」
入江と都築の視線がかち合う。
その眼光に。
掴んでいた腕を、都築も離した。
「俺がお前らの盾になる!」
足取り強く、先頭に向う入江。
「俺の屍を超えて、出口に向かえ!」
「おま、あんたは、なんにもしなくたっていい!」
入江の言葉に、都築が声を重ねる。
「どうして、他と歩幅を合わせようとしないんだよ! 本当に馬鹿なんじゃないのか!?」
涙目で、入江を睨みつける都築。
都築の胸中は、ただ一つ。
「一緒にいてくれよ!」




