第十話 0(ループ)物語
ゲームセンターで。
放置されていた子供だった都築に。
『おい! 親どこだよ! クソ餓鬼が‼』
『俺は客だぞ』
『あん?! それがなんだって言うんだよ! ボケが!』
声をかけた新米スタッフはーー入江出口と名乗った。
そして、都築も彼を慕い。
銀河高校に入学し、銀河エンターティンメントに就職をした。
新店舗に異動になった入江が。
「なんだって! お前が遺跡の上から来んだョ!」
思いがけない再会に。
(まぢ、なんなんだョ!)
一番、テンパっているのは、都築自身だ。
「『なんだっていいじゃんか! ぎゃんぎゃんとうっせェ~~なァ~~んなもん、あとでいいだろが』」
入江も、苛々した口調で言い返す。
だから、都築も苛立ってしまう。
「一番先に、そこだろうがョ! お前は馬鹿なのか!?」
「『俺ァ、手前の知る《入江出口》だが。今、目の前に居る《入江出口》は手前を知らない《入江出口》なんだ。ほら、パラレルワールドってやつな。で、だ』」
徐々に、都築は混乱していってしまう。
都築が、こんな状態であれば、他の二人も理解は出来ないのは言うまでもなく。
目が点に、なってしまっていた。
「『俺《入江出口》が消滅した世界が手前のとこなんだ。つまりは、俺は居るはずのねェ、亡霊って感じだ! ……いや、居ないんだから……なんつったらいいのか分かねェんだけどよォ。居ないとこで、俺を覚えていたんは、《都築マサル》だけだったわけだ。ぅんだから、俺は手前の前に居るわけだ』」
入江が、思ったことを言うもんだから。
都築の目が細められていく。
でも、話しの途中を折らないように、ぐっと堪えている。
「『で、だ。俺が手前のために手助けをしてやりてェなァ~~とか思ってたら、この異世界に来たわけだ! よかったな~~俺が、手前の先輩でよォ~~』」
腕を組み、すごむ都築。
入江は宙を浮きながら。
続けた。
「『で、だ。この《入江出口》の記憶のパーツを集めろや。ちょいちょい、俺も頑張って《サイン》送っしよ、サウナに戻りたきゃあ従うんだなァ』」
(なんで、サウナのこと知ってんだョ)
太々しい態度の入江に、我慢も限界の都築。
「『それか《真実のキス》で、直に《門》を開けるかだな。しかし、だ。少なからず、この《入江出口》は鍵だ。一から百の教育をしろや。ふふふ、この俺を飼育して、罵れて嬉しいだろォ? おい』」
不敵な笑みで言う入江に。
「ああ! そうだな!」
強い口調で吐き捨てた。
都築と、入江が睨み合う。
そして、
「……会えて嬉しいョ。出口サン」
都築がはにかんだ。
入江は苦笑交じりに、顔を歪ませる。
「『こんな形で悪ィな……でも、これが俺の精一杯』」
入江が掌を合わせ、額に当てた。
「『どうしてこうなったか、なんだってこんな羽目になっちまったのかなんざ、考えるんじゃねェ。後ろなんか見んなよ、クソ餓鬼』」
優しい口調で言う入江。
徐々に、声が弱まってくる。
「『前だけを見ろよ? 疲れたら、俺が居る。聞いてやるよーーこの《入江出口》でだけど……な……』」
都築は目を見開かせる。
「お前が! 出口サンがいい! こんな《入江出口》は嫌だ‼」
少し、涙目で。
少し、涙声で。
入江出口にすがるように言う。
「『本当に、甘ったれな、クソ餓鬼……だ、な……』」
浮いていた入江の身体が、勢いよく落下した。
「‼ ぅ、おう!?」
都築は慌てて、腕を伸ばすも。
虚しくも、受け止められずに終わる。
「ぁあ゛~~……痛そうだな」