第一話 魔法と召喚
心が折れないように頑張りますので、よろしくお願いします!
ゴロン。
ゴロロロォオオオオッッ!
「お前! 馬鹿なんじゃねェのかァ!?」
ほぼ裸の、下半身に布タオルをつけているだけの大男。
都築マサルが罵った。
罵った相手は。
この惨状を起こした、魔術師ミウ。
「えー~~だって~~」
「だっても! クソもあっかョ! こんのポンコツ魔法使いッッ‼」
赤く長い髪を後ろで束ねた髪が上下する。
「違うよ! マサル!」
「何がだよ! 勝手に呼び捨てすんじゃねェよ!」
都築がそう言い返すも、ミウは気にする様子もなく。
「僕は魔術師なのさ!」
自信満々に、どこか誇らしげに言うミウ。
都築も怒りで、立ち止まりそうになるものの。
後ろから迫るそれに。
「くっそ、ったれがァァァァアアアッッ‼」
タオルを抑えながら、ミュと肩を並べて奔った。
ここはーー《ホロスカ遺跡》なる、都築が初めて経験することとなる《迷宮》だ。
「だから! こんな狭い場所でなんだって!」
息を切らしながら、都築はそう罵る。
「あんな真似をしてやがったんだよ! お前はッ‼」
彼が怒るのも無理はない。
ここは地上ではない。
岩の中がくり抜かれただけの場所。
太陽の光も、風もない世界。
地中だ。
そんな場所で。
あろうことかミウは召喚魔法の練習をしていた。
こそこそと隠れてだ。
召喚魔法の衝撃までは、考えて居なかったミウ。
いや。
ミウ自身でも。
召喚魔法が上手くいくとは思わなかった。
ミウは、劣等生の烙印を押された落ちこぼれ。
父親で、偉大な魔術師ダンブアの召喚紙を持ち出し。
夜な夜なここで練習をしていた。
周りを見返すために。
◆
「《歯車ダイヤル式ゼロチェーン! 現れよ! 現れよ‼》」
健気で努力家のミウに。
ドッゴーーーーン‼
ガラガララーー……。
「あ゛?」
銭湯のサウナにが入った都築が、召喚紙の上に立って居た。
上半身裸の、腰に布タオル姿の青年が。
眼光鋭く、声も低い。
「き、ききき!」
「き?? 何だョ」
身体を小刻みに震えさせるミュに、都築が近づく。
不機嫌なのは言うまでもない。
「キターーッッ‼ やった!」
泣き出しながら
「僕も召喚魔法出来たんだーー~~‼」
大きく叫ぶミウだった。
都築は容赦せず。
ぶに。
「おい。クソ子供、お前。何か知ってんな??」
ミウの頬を強く抓る。
「この状況を教えてもらおうじゃねェかァ~~!」
「!? いふゃい! ゆふぇじゃふぁいい~~♡」
「っち!」
都築は指を離したときだった。
ガラ。
ガラガララーー……。
洞窟の天井が崩れてしまった。
「ぅ、おおお?! ぅお‼ っく、ぅ゛!」
都築は腕で岩を防いだ。
なのに、痛みはない。
「?? な、んでだ??」
「ほら! 僕が魔術で岩を止めたんだよ? スゴイだろう?!」
ミウは、都築に微笑む。
「……っふん!」
馬鹿馬鹿しく思ったのか、都築は指を離した。
「改めて自己紹介だ! 僕は天才美少女魔術師のミウ! 君のご主人様さ!」
「ざけんじゃねェよ。お前!」
ぶに!
頬を抓ながら、都築も名乗った。
「俺ァ、都築マサルだ! とっとと、俺をサウナに戻しやがれってんだ!」
「あ。それはまだ無理!」
自信満々に言うミウ。
「魔術のゲージも一気に底ついたし、そんな高度な魔術なんか、僕は使えません!」
ぶにに。
「ぶっ殺すぞ? クソ子供~~ッッ!?」
「いふぁい! いふぁい!」
カチ。
バタついたミウの足が、何かを踏んずけてしまう。
二人は、顔を見合わせる。
「「?? カチ????」」
ドッゴーーーーン‼
ゴロゴロゴローー……。
二人の背後には巨大な岩が、追いかけて来る。
しかも、この通路は一通で。
逃げ場もない。
「走ってーー~~!」
「走ってるっつぅんだョ!」
この先を暗示するかのように。
肩を並べ、突っ走って行く。