白雪、大嫌いな、憎らしい子
今回、他と比べて短いです
朝遅くに目覚めて、昨日の事を思い出した白雪は、ぶすっと頬を膨らませました。
どうして自分が怒られなければならなかったのか、いまだに理解出来ません。
「何で、父さままであんな女を庇って」
突然掌を反した様に願い事を断った国王に、不満を漏らします。
「わたしに意地悪ばかり言う性悪で、鏡に話し掛ける様な気味の悪い女じゃない」
鏡しか話し相手のいない、可哀想な女。幾ら魔法の鏡でも、鏡は鏡でしか無いのに。
え?魔法の鏡?
「そうよ!きっとあの女が魔法の鏡を使って父さまを騙してるんだわ!」
あの性悪女が、白雪に嫉妬して邪魔しているに違い無い。
でなければ、国王が白雪を邪険にする理由が無い。
自分に都合の良い想像を、白雪は事実と決め付けました。
「そうと決まれば早く、父さまの目を覚まさせてあげなくちゃ」
今頃は執務室で仕事を始めているはず。
白雪は早速、国王に会いに行く事にしました。
昨日白雪に逆らって部屋に押し込んだ侍女たちは、全員置き去りです。
「陛下なら、いらっしゃいませんよ。今頃まだ、部屋にいらっしゃるでしょう」
執務室の扉を開けた白雪に、宰相が言いました。
「それと、入室の際はきちんと訪いをして下さいね。加えて、ここは執務室です。無闇に訪れて良い場所ではありません」
何と言う事でしょう。宰相まで白雪にお小言を言い始めました。
ますます早く、あの女をどうにかしなくてはなりません。
踵を反して執務室を後にしようとした白雪に、近衛騎士団長が声を掛けました。
「白雪さま。今国王を訪ねて邪魔をしては駄目ですよ」
「どうして?お仕事中じゃないんでしょ?」
「いえいえ、ある意味最も重要なおしご、痛ぇ!?」
何やら言い掛けた近衛騎士団長に、宰相が文鎮を投げ付けました。
頭を抱えて跪る近衛騎士団長を後目に、宰相は爽やかな笑顔を浮かべました。
「陛下は今王妃さまと重要なお話の最中でして、誰も部屋には入れない様にとのお達しが出ております。ですので、白雪さまも行って邪魔をしてはいけません」
「…」
爽やか過ぎて胡散臭い宰相の笑顔を、白雪は眉を寄せて見ました。
このままじゃ、国中あの女に支配されてしまうかも知れない。
白雪は宰相の言葉を無視して、国王の私室に向かう事にしました。
「申し訳ございませんが、誰も通すなとのお達しでございます」
国王の部屋に行こうとした白雪は、手前の廊下で取り付く島も無く言われました。
「どうして」
「それが、陛下のご命令ですので」
国の頂点は国王。白雪の我が儘が今まで通って来たのは、国王が許していたからに過ぎません。
国王が一言命じれば簡単に失われる自由。その事を知っていた王妃さまと、知らない白雪では、掌を反された時の印象が変わります。
どうして、みんな突然白雪に冷たくするのか。
あの女が、鏡の力を使ったからに違い無い。
国王の部屋にあの女がいるなら丁度良いじゃないか。
あの女から、鏡を奪ってしまえ。
黒い覚悟を決めて、白雪はお城の最上階へ向かいました。
王妃の部屋は鍵も掛けられず開いていて、中には誰もいませんでした。
直ぐ様鏡台に向かいますが、鏡は見当たりません。
「一体、どこに隠したの?」
手当たり次第に引き出しの中身をぶちまけますが、鏡は一向に見つかりません。
戸棚と言う戸棚、引き出しと言う引き出しを荒らし、ベッドのシーツを引き剥がした所で、漸く長椅子に転がる布包みに気付きました。
「あれだわ!」
長椅子に駆け寄り、布を剥がすと、繊細な意匠の小さな銀の手鏡が現れました。
あまりの美しさに息を飲んでから、目を輝かせて白雪は鏡を裏返して鏡面を覗き込み、
「きゃあああああっ!!」
鏡に映る恐ろしい化け物を見留めて鏡を投げ出しました。
雄獅子の鬣の様にぼさぼさの黒髪を振り乱した、鷲鼻の醜く凶悪な顔をした女が、鏡を覗く白雪目掛けて戦斧を振り翳していたのです。
力一杯投げ飛ばされた鏡は、床に叩き付けられて無惨に割れました。
「ああ、何て醜い子供だろう」
鏡から、ひび割れた声が響きます。
恐怖で震える白雪の耳に、その声は呪いの如くへばり付きました。
「こんな醜い人間のくせに、俺に映ろうとするなんて、何て愚かな娘だろう。ああ、気分が悪い。呪ってやろう、白雪、大嫌いな、憎らしい子」
恐ろしい声に肝を潰して、白雪は一目散に逃げ出します。
「醜悪な娘だ。優しく美しい俺の姫さまとは、似ても似付かない。白雪、醜い子、汚らわしい子、こんな子を産まされて、何て可哀想な姫さま…」
逃げる白雪を追う様に、怨嗟の声は何時までも、白雪を呪い続けていました。
拙いお話をお読み頂きありがとうございます
当初の予定では三話で白雪ちゃんが鏡を割り
五話程度で完結するはずでした
どうしてこんなに遅れた
続きも読んで頂けると嬉しいです




