5日目「未来を守って」
霊夢は博麗神社の上に来ると、ゆっくりと降下し、着地。
「さて……戻ってきちゃったわね」
そよ風が霊夢の髪を撫でる。そして、風に流されるようにフラフラと歩き、賽銭箱の上に寝る。
「飛ぶってこんなに疲れたかしらね……。…。さっさと出てきなさい。見てても何も始まらないわ」
するとどこからともなく声が聞こえた。頭に直接入ってくるような重くエコーがかかるような声だった。
「流石だな。博麗巫女よ」
「ありがと。で? あんた誰? 少なくとも私の知り合いじゃないわね」
霊夢は起き上がり、やっぱり賽銭箱の上に座る。
「そうだな。簡単に言うと、この世界を創った……いや、見守る存在だな」
「何を言うかと思ったら。いい? この幻想郷を創ったのは私達の結界よ? それに見守るって……今更? もうとっくに被害は広がってるわ。来るならもっと前に着なさい」
霊夢はどこにいるかもわからない声の主に向かって怒鳴る。すると声の主は、
「それは。この結界の緩みは、博麗の巫女。お前しか解決できないからだ」
「はぁ? 言い訳のつもり? 結局。あんたは何者? 妖怪? 仙人? 人間?」
今度は呆れた顔で言う。
「話が進まぬな。まあいい。私は、龍だ」
霊夢はその瞬間「ポカーン」とした顔をする。
「龍? そんなのいるなんて聞いたことないわ。冗談だかバスケの神様だか知らないけど、変なこと言うのはよしなさい」
「む? 知らないのか。私の存在を。一度姿を現したはずだが」
「ああ。じゃぁ、あれね。あれ龍だったのね。巨大蛇かと思った」
「で? 龍が私なんのよう?」
「ああ。この緩み。直す方法が一つしかない。だからここへ来た」
霊夢は一度神社に入り、自分のお茶を用意して聞いた。
「ええ。緩んできた理由も考えれば、だいたい予想はついていたわ」
「ほう。理由を知っていたのか」
「ええ。外と内の常識と非常識が、混合し始めたんでしょ?」
「よく気づいたな。ああそうだ。本来、外の常識が内の非常識。内の常識が外の非常識になっているのが普通だ」
「でも、それが崩れ始めた」
「外の常識と内の常識が同じになっていたり、外と内の非常識が同じにになったりした。おかげで、結界が緩んでしまって更に外常識の侵入を許してしまった」
「もっと早く気づいていれば……こんなことには」
「だから。これ以上被害を増やさないためにも。巫女よ。力をかせ」
「それが成功したら、消えた人々は戻ってくる?」
「……無理だ。死んだ者は復活せん。しかし、今残っている者たち未来は保証できる」
「そう。それが方法……」
少しだけ、霊夢の顔に悲しそうな表情が出る。
「永遠に結界を固定するには、それしかない」
そこで霊夢は「ふぅ〜」をため息を一つつくと、
「寂しくなるわね」
「そうだな。まあ、話し相手もいないわけでもない」
「そう…。ならいいわ。さっさと始めましょう。未来を、守るために」