二日目「あるべき場所」
ちなみに。この題名の、二日目。とかは、小説の中の日にちで表していませんので。一日の話でも二日目とか三日目とかしますよ。
「…チルノは?」
「寝たわ。かなりショックだったでしょうね」
霊夢が神社から出てくると、魔理沙は聞いた。しかし、二人の顔は暗い。
「くそっ……。なんでなんだぜ……」
魔理沙が調べた結果、妖精は死んだら復活するらしいが。なぜか最近になって復活しないようになってしまったらしい。すると、霊夢は溜息を一つつき、
「……。いるのはわかってるわ。出てきなさい。そして、隠さず教えて欲しいわ」
霊夢が言う。すると、二人の前に見慣れたスキマが出てき、中から紫が出てきた。
「隠さず……ね。難しい話だわ」
いつも持っている傘を地面に立て、何気ない顔で話す。
「何言ってんだぜ。いいから、話してほしいぜ。異変は解決するまでだろ? 大妖精も戻さないと、チルノに怒られちまう」
どうやら魔理沙はまたやる気が出たらしい。霊夢も、同じようなことを言おうとした、が。
「いいえ。これは異変じゃないわ。戻ってこない」
そう紫は言う。二人は、その事実を受け止められなかった。
「な。何言ってんだぜ? そんな馬鹿げた話……信じるとでも?」
「そうよ紫。冗談はよして」
きっと冗談なんだ。そう信じて、二人は問う。が、紫の答えは変わらず、
「嘘じゃない。これは……しょうがないことなの……」
「紫! あなた正気でそんな……ぇ」
霊夢が紫に掴みかかると、傘と一緒に別のものを持っていることに気づいた。
「霊夢……私だって、信じたくっ……ないのよっ……」
「嘘……まさか」
扇子だった。でも、ただの扇子ではなく。幽々子の扇子だった。
「消えた……のか? で! でも、幽々子は亡霊だぜ!? なんで……」
紫は、泣くのを堪え、しゃべりだす。
「幻想郷に……来てしまったの……。寿命が」
「寿命? は?」
魔理沙だって霊夢だって寿命という言葉はもちろん知っていた。でも、妖怪や妖精、幽霊には関係ないもの。自分たちだってまだ先の話だと思っていた。
「……っさっきからバカなことばっか言って……だ、だいたい。寿命なんてないに等しいやつらばっかじゃないの……」
そんなことは信じられない。そう。きっと悪い夢なんだ。そう思う――いや、思い込ませようとしていた。
「そうよ。非常識の私達は長生きよ。でも、あなたも若干気づいていたはずよ」
「え! 霊夢、何か知っていたのか……?」
霊夢は唇を噛み、拳を強く握っていた。そして、
「結界が弱まって……外の常識は流れ込んできている……っ」
霊夢は少しづつ気づいていた。結界が歪んでいるわけではない。結界が弱まったのだ。
結界が弱まり、外の常識が流れてきた。最初は、外のものがよく来るぐらいの現象だったが、とうとうこうなってしまった。
寿命という常識。その生物にあった寿命が、この幻想郷にも発生した。
「うふふっ……皮肉よね……。まさか、親友に二度も死なれるなんて……しかも、二回目が亡霊ときたものよ……」
「そんな。亡霊に寿命なんて聞いたことないぜ?」
「ええ。彼女は寿命というより、あるべき場所に戻ったといえるわね」
「?? どういうことだぜ?」
二人の説明はこういうもの。 西行妖の封印の力によって亡霊になっている。封印を解くことによって、幽霊になれる。幽霊になったものは、閻魔の所へ行き、地獄・天界・冥界などへ移動される。
「つまり。幽々子は、冥界にいないから。天界に行ったと……」
「ええ。この寿命の常識。おそらく、本来あるべき場所へ返す効果があるのね。だから、もうすでに長い間生きている奴は、消える。これからの奴は、消えはしないで死ぬんでしょうけど」
今紫が言った言葉。何気ない言葉かと思ったが、霊夢は少し考えて直ぐに気づいた。
「つまり……。紫、あなた」
「ええ。私も消えかけているわ。幽々子に、先に行くわ。って言われちゃったけど、天界に逝ける自身がないわ」
紫は笑っていた。これから自分が消えるというのに。
「おい! 紫。これをどうすることもできないのか!?」
魔理沙が大声で聞く。それに紫は答えようとするが、声が段々と小さくなっている。
「あら……ごめん…ね…私も……わから…ないわ。ただ、少なくとも……消えたやつ・死んだやつは……もう生き返られない……わ」
気づけば、大妖精と同じように体が薄くなっている。それを見て、二人は何もできなかった辛さを思い出す。
「霊夢……私……っ」
紫が倒れこむ。どうやら足が完全になくなったらしい。霊夢も魔理沙も目をつむってしまう。
「紫……私、どうすれば……」
「霊夢……私が死ねば……更に結界が弱まるわ……」
「だから……なによ……」
「これから……あなたに別れが多く訪れる……。でも、崩れちゃ……だめよ……」
手も消え、持っていた扇子と傘が地面に落ちる。それを霊夢は拾う。
「崩れないわよ……だから……あんたも……」
「いい霊夢? ……ずっと見てるからね……もし…。辛くなって……諦めたら……怒るわよ……」
「あら……紫に怒られる……? それは…怖いわね。頑張らないとね」
もう消える。
「ええ。はぁ……美しく…残酷に…この大地から……住ぬわ………」
最後にそう残し、紫の体は消え、傘と扇子だけが地面にあった。
「紫……」
「くっ……おい! 霊夢。こうしちゃいれねえぜ! 調べてくるぜ!」
そう言って魔理沙は飛んで行ってしまった。霊夢は、その場からしばらく動くことができなかった。